プロローグ
「こっこれは…!?」
薄暗い闇の中で、1人、光に包まれた天使の女性が、あることに衝撃を受けていた。
「なんということをした!!」
そしてもうひとり、闇に乗じた悪魔の男性が、女性を支えながら辺りを見渡していた。
その男性の一言に、周囲は白く透明な空間へと変化していった。
「…我はただ、この世界の崩壊を望んだのみ。この子供2人に、その罪を負わせた。ただ、それだけのこと」
姿は見えない何者かがそう言うと、女性と男性は、目の前にいる2人の双子を抱き抱える。
その双子の背中を、改めて見た。
1人は、悪魔の羽が1つ。
もう1人は、天使の羽が1つだけとなっていた。
「さあ、その2人を我によこせ。罪深き双子に罰を与えなくては」
「何が罰よ!私達の子供は、そのようなものに囚われないわ!」
「ああ。きっと強く生き永らえる。そのためにも、お前には渡さん!」
2人は子供を更に強く抱き締め、何処にいるか分からない何者かに、睨み付けた。
何者かは、その姿に嘲笑うかのように大声で笑い、こう告げた。
「"我、審判す。罪深き双子、戒めの鎖で縛り付け、ここに滅す"」
その直後、子供2人は空中に浮いたと思えば、頑丈な鎖で強く縛られた。
真上には、鋭い剣が双子に向けられていた。
「!?そっそんな…」
天使の女性は、膝を地面につけて、子供の状況に愕然とした。
そんな女性に悪魔の男性は、女性を支えて立ち上がらせる。
「…落ち着け。俺達2人の力があれば、子供達を救える。さあ、立て」
「そうね…ありがとう、あなた」
2人は手を繋ぎ、子供達に視線を向ける。
「それでもなお、たてつく気か?…いいだろう。これで最後だ」
双子に向けられた剣が、ものすごい速さで落下した時、
「「させない!!」」
女性と男性から放たれた光と闇の力により、剣は朽ち果て、鎖も跡形もなくなくなった。
そして、
「……っ!?我に楯突いた罰、拭えきれぬもの…だと、思…え、」
苦しそうに消え去っていく何者かは、そう告げて、いなくなった。
2人は子供達を受け止め、抱き締めた。
だが、
「くっ…力を、使いすぎた…な」
「ええ…折角、この手に、取り戻せた…のに」
女性と男性は見つめあい、何かを察したかのように頷き、そして子供達の前に手をかざした。
手からは、光と闇の力が、少しながら放たれた。
「俺、は…お兄ちゃんの…方に」
「私は…可愛い、妹、に…」
その力は、双子それぞれに入り込み、女性と男性の身体は、徐々に消えていく。
「妹を…守って、やれ…"レイル"」
「お兄ちゃんと、幸せ…に、"フローラ"」
「「いつまでも…見守っているから」」
こうして、女性と男性もまた、この場から消え去ってしまった。