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五話 <挿絵有り>

挿絵(By みてみん)

<<呉作様よりいただきました!ありがとうございますありがとうございます>>



「美穂子ちゃーん! いねーっすかー!?」

「美穂子ー!」


 時折声を上げながら進むものの、どこからも返事は無い。


「参ったな……まさか美穂子を見つけることができないとは……。達樹や浅見や竜神なんてどうでもいい連中ばかりが無事で合流してくるだなんて、なんて私は運が無いんだ」

「百合先輩、そんな歪んだ性格してっから運に見離されてるんじゃねーっすかね」

「達樹君、そんなありえそうな事本人に言っちゃ駄目だよ」

「浅見、剣を抜け」

「えええ!? ど、どうして!? 僕何かした!?」

 百合に剣を振られて浅見が必死に逃げる。

 そんな彼らの後ろで、未来は足を止めた。


「いて……」

「未来?」

 最後尾を守る竜神もまた足を止める。

「うう、すげー靴擦れしてる……。こんなヒール高い靴履いた事ないしなあ……」

 未来の踵の上、足首の皮がべろりと捲れ上がっていた。

 まだ三十分も歩いていないのに酷い有様だと竜神は驚くが、未来の靴は伸縮性のないガラスの靴だ。同じ場所を擦られ続けていればこれだけの傷になるのも当然か。

 広範囲が真っ赤に腫れ上がってしまっている。随分痛かっただろうに弱音を吐かずに歩いていたのに感心する。


「こい」

「うわ」

 未来の体を抱え上げる。


「どうした、怪我したのか」

 浅見を追い掛け回していた百合が未来に駆け寄ってくる。

「靴擦れしてんだ」

 竜神が答えると、浅見も様子を見に寄って来た。


「うわ、痛そう……。駄目だよ未来、こんななる前に言ってくれないと……『ヒール』」


 浅見の指先が光る。

 あっという間に未来の靴擦れが完治した。


「お、おい、魔法無駄使いするなよ」

「回復魔法も一度使っておきたかったからね」

 竜神の腕の中で小さな体が身を捩った。

「竜神、治ったから下ろしてくれ」


「いや、抱かれてろ。お前の足は遅すぎる」

 答えるのは竜神ではなく百合だ。せっかちな彼女は後続の足の遅さに辟易している様子だった。美穂子を探すのに気が急いてもいるのだろう。


「は、ハイヒールだからしょうがないだろ! 初期装備が変すぎるんだよ」

 それでも未来自身、自分が足手まといであることを自覚していた。

「疲れたら下ろしてくれ。自分で歩くから」

 大人しく抱かれて、竜神の肩に腕を回して、少しでも抱き上げる腕に負担を掛けないようにきつく抱きつく。



 美穂子が見つからないまま、森を抜けて煉瓦の道に出た。



「うわ――――!? なんだあれ!!?」


 巨大なヤツデウナギのようなモンスターが行く手を遮っていた。

 ただのウナギではない。人の腕のような巨大な足を何本も生やして、縦横無尽に動き回っている。

 さして太くはないが、体長は三階建てのビルほどもありそうだ。


 ドン、ドン! ウナギに火の玉が炸裂してダメージウインドウを表示させていた。


「――他のチームが戦闘中なのか」

「手を貸した方がいいんじゃねーすかコレ!」

 達樹がダガーをウナギに向かって投げる。

 命中はしたものの、表示されたダメージ数は「3」だ。

 そうこうしてる間にも火の攻撃は続き、「390」「530」とダメージを表示させ続ける。

「あ、だめすね。おれの攻撃なんて何の役にもたたねーや」


 一際大きな火の玉が飛んで命中すると、ウナギは虹色に発光して消えた。

 戦闘終了の音楽が鳴り響く。と、同時に、

『王鳥達樹がレベル3に上がった! 王鳥達樹がレベル4に上がった! 王鳥達樹がレベル5に上がった! 王鳥達樹がレベル6に上がった!』

「あ、しまった」

 達樹が困ったように顔を歪める。中途半端に手を出したせいで、達樹にまで経験値が入っている。ダメージは3しか与えられなかったと言うのに。


『王鳥達樹は200Gを手に入れた!』

「うお」

 袋が降ってきて達樹が咄嗟に受け止める。


「やっべ、金まで横取っちまった!」


 道の先から、二人組みの女子がこちらを睨んでいた。他チームが手を出したのに気が付いていたのだ。


「おれ、これ返してきますわ」

 足を踏み出そうとした達樹を押しとどめ、未来が竜神の腕から降り、紙を受け取った。


「相手女の子だし、俺が行ってくるよ」

「すんません。お願いします」

 レベルが低いとは言え、男が行くより同性同士がいいだろうと安易に考え、未来はガラスの靴を鳴らして、ふらつきながら走り出した。


「こ、こんにちは! 横から邪魔してすいません。これ、お返しします」

 ぺこりと頭を下げて紙を差し出すと、ひったくるみたいに奪われた。

(う……ちょっと感じ悪いな。でも邪魔したのは俺達だし)

 できたら美穂子を見なかったか訊きたかったが、あまり会話をしないほうがよさそうだ。未来は踵を返しかけたのだが、


「アハハ、何そのかっこ。馬鹿みたい」


 目の前の二人は黒のレザーパンツにブーツ、鎧の付いたパーカーだ。

 未来自身、自分の格好を馬鹿みたいだとは思っていたが、歳の近い女子に笑われると流石に傷つく。


「わ、笑うなよ! 俺だって馬鹿みたいだと思ってるけど、初期装備なんだもん、しかたねえだろ」

「は? 俺女とかちょうキメー。ふーん、男ばっかとパーティー組んでんだアンタ」

「男はべらせて姫気取りって一番うぜーんだけど」

「守られてなきゃなんもできないならゲームなんかすんなっての」


 ぽんぽん罵られて、未来は何も言えずに一歩下がってしまう。

「一緒にいるのは男だけじゃねーよ! 女の子もいるし――!」

(やべ、これ、全然駄目だ。俺じゃ無理だった)

 これなら達樹に行かせたほうがよかったと後悔する。今更遅すぎるけど。



「なんか雲行きおかしいぞ」

 近寄らず成り行きを見ていた竜神が一歩を踏み出す。

 女の手が光り始めて、明らかに魔法を発動させようとしていた。

「サーチします! 相手女レベル20と22。やべこれつんだ」


「未来!!」

 竜神が未来の前に出て魔法攻撃を体で止めた。

 バーサーカーの『庇う』発動だ。対象キャラに向けられた攻撃を全て受け止めることができる。

 炎が爆裂して、竜神の体が弾き飛ばされた。


「ぐ……!」「わぁあ!」

 飛ばされた竜神に巻き込まれ、未来も地面に叩き付けられてしまう。

 竜神のダメージウインドウが赤く点滅している。あの一撃でHPは十分の一以下まで減っていた。

 続いて、ウインドウに『昏倒』と表示される。爆発を体で止めた竜神は完全に気を失っていた。


「竜神――!!?」


 未来は悲鳴のように竜神を呼んだのだが、動揺する自分を鼓舞するため視線を尖らせた。早く、回復魔法を――――。

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