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理の使役者  作者: ひさし
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定められた道筋

「よく『スラント』を守り、ここまで届けてくれました。

これで、王国と帝国の衝突を避けることができます」


「護送中、何らかの組織が妨害してくると思います。

なので、私も同行したいと思います。

私が行くとなれば、私の護衛をしてくれているシオンも同行してくるはずです」


「それは、心強い、しかし、そのシオンとやらはいったい何者ですか?

話を聞く限り、それ程の力を持った魔導師ならば多少なりとも素性が分かるはずなのですが?」


「────ここだけの話にしてください。

シオンは、あの『終の魔女』の弟子です」


「彼が……なるほど、それならば納得のいく力です。

それでは、『スラント』を、私が責任を持って王国へと変換します」


絶対に盗まれることないように、この旅の最中、幾度もそこにあることを確認してきた、光り輝く宝珠。


「確かに、受け取りました」


これで、戦争を回避できる。


必要のない血が流れることも、大切な人を失って悲しむことになる人もなくなる。


「では、死んでください」


「───え?」


横薙ぎに振るわれた剣が私の喉を切り裂こうとしている。


あ、これは死ぬ、死ぬ直前って、走馬灯が流れるって本当だったんだ……




─────ガキィン



不可視の壁が剣を弾く、それと同時にシオンからもらった『保険』と言われたアクセサリーが砕け散る。


「っち、まさか、ただの一般兵が魔具を持っていようとは……

しかし、所詮は使い捨てですか、時間もありませんし、次は────」


「次がないのはお前だ」


「────っ!?」


「ほぅ、どうやら、雑魚ではないらしいな」


シオンが放った雷刃が私と男の間を横断する。


「シオン、これっていったい……?」


「後で、説明してやるから、今はそこで黙ってろ」


「流石は、かの有名な『終の魔女』の弟子、あれだけの人数を当てたというのに足止めにもなりませんか」


「生憎と、罠だってことは気付いてたからな。

ここに入る前に仕掛けを打たせてもらったんだ」


あれは、シオンに突っかかってた門兵!?


でも、白目向いて、様子が変ね……?


「こいつは『トロイ』って言ってな、触れた相手に拡散していく呪いだ。

そして、こいつが拡散元、俺が念じれば呪いが発動し、意識を奪う」


「成程、しかし、まだ、生きているようですが?」


「面倒な制約があってな、一応、気を失ってるだけだ。

そもそも、殺すつもりなら、入る前に倒壊させてる」


「それは怖いですね、もっとも、それが本当ならですがね」


「ふん、どうやら、馬鹿ばかりというわけではなさそうだ」


「お褒めにあずかり光栄です、それで、態々、危険を冒してまで、ここまで来たんです。

私に聞きたいことがあるんじゃないですか?」


「単刀直入に聞こう、お前らの目的はなんだ、『終の魔女』と共に何をやろうとしている?」


「『終の魔女』が絶賛していただけはありますね。

もう、そこまで、分かっているとは、やはり、彼女の言うとおり、君が私たちの一番の障害となりそうだ」


さっきから、何を言ってるの……?


『終の魔女』? どうして、シオンの師である『終の魔女』が、シオンを危険に晒すの?


それに、こいつらはいったい誰?


「私たちの目的、それは世界の秩序、理からの離脱……いや、解放と言いましょうか」


「馬鹿も休み休み言え、そんな事、世界が許すわけがないだろう」


「できるのですよ、王国の『スラント』、帝国の『ラトクス』、そして、君の『クレリフ』があればね」


「────お前らが何を企んでいるかは知らないが、お前はここで殺す。

その後、ゆっくりと計画の全貌とやらを見せて貰おう」


「残念ですが、私はまだ死ぬわけにはいかない。

それでは、また、お会いしましょう」


「俺から逃げられると思っているのか?

この部屋は既に俺が閉じた、どんな手を使おうが逃がしはしない」


「ええ、確かに私ごときの技量ではこの結界を破ることなんてできないでしょう。

ですが、私たちには『終の魔女』がいるのですよ」


「────っち、次に会った時は必ず殺す」
















「ねぇ、いったい、どういうことなの?

『終の魔女』がどうして出てくるの、あいつらは誰、私の仲間はどこに行ったの……?」


「あいつらは、お前を負っていた奴らと同じ組織だ。

そして、ここは、確実に、『スラント』を手に入れるために、お前をおびき寄せるための罠として利用されたんだ」


「それじゃあ、ここにいた皆は……」


「おそらく、生きてはいないだろうな」


「そんな……」


「だが、それより最悪な事はこの件に師匠が関わっているってことだ。

直接手を出さないはずだが、それでも、師匠が作った物を使えば、戦闘能力は格段に跳ね上がる」


「どうして、『終の魔女』が出てくるのよ……?」


「あの山で、暴れていた奴を覚えているな。

あいつは、あの山を越えた先にある、拠点を潰した帰りにあの山で暴れていたんだ」


「どうして!? どうして、そんなこと!」


「確実に、ここにおびき寄せるためだ。

俺たちが、こことは違う拠点に行かないように、あらかじめ、潰しておく。

そして、俺たちがエルントに着く直前に手配書をばら撒き、俺たちをここに誘導する。

あいつがあの山にいたことは計算外だったんだろうが、遅かれ早かれ師匠が関わっていることは分かっていただろう」


「なんでよ、『スラント』が欲しいなら、態々、こんな回りくどいことしないであの時私を殺せばよかったじゃない」


「それは俺を外に出すための口実だな。

俺を巻き込むためには、お前という餌が必要だった。

あいつも言っていたが、あいつらの計画には王国と帝国の秘宝、そして俺が必要だ。

だが、あの場でお前を殺したら俺が動かないからな」


「そんなの、『終の魔女』がシオンに言い聞かせればいいだけじゃない」


「お前は決定的に勘違いしている。

おそらく、師匠にとってあいつらが何を企んでいようがどうでもいいんだ。

師匠は俺を介入させることで、ゲームを面白くしたいだけなんだよ」


「ここには、少なくとも500人はいたのよ……

それを、そんな理由で殺していいと思ってるの!?」


「師匠にとっては人の命なんて面白ければ生かす、そうでなければ生きていようが死んでいようが関係ない、所詮、そんなところだ。

忘れたわけじゃないだろう? 俺の師匠は『終の魔女』だぞ。

200年前には何千、何万という命をその手で終わらせている」


───そうだ、私はいったい何を勘違いしていたんだろう。


少し、親切にされて、私を助けてくれただけで、実はいい人なんじゃないかって思ってた。


でも、あれは、そういう存在なんだ。


「さて、もう、ここには用はないな。

下の連中が起き出す前に、さっさと行くぞ」


「う、うん……」


でも、『スラント』が奪われた今、王国と帝国の衝突は時間の問題だ。


それがすぐに戦争に繋がるわけじゃないかもしれない、けど、両国間には間違いなく亀裂が入る。


せっかく、皆が命を懸けて守ってきたのに……


「おい、馬鹿女」


「なによ……」


「もう、取られるなよ」


───えっ!? これって……!?


「罠だと分かっていたんだ、今、あいつらが持っているのは偽物。

ここに来る前にすり替えさせてもらった」


いつの間に、いや、でも、そんな事どうでもいい。


重要なのは『スラント』が奪われずに済んだ!


「ありがとう、シオン!」


「引っ付くな、鬱陶しい」


うっわ……、照れ隠しとかそういうんじゃなくて、本当に鬱陶しそうな顔。


「あんたねぇ、こんな美少女が抱き着いてるんだから少しは喜びなさいよ!」


「残念ながら、俺はそんな貧相な体に抱き着かれて喜ぶ趣味はない。

暑苦しいから、さっさと離れろ」


「あ、あんた、少しはデリカシーって言葉ないの?」


「そんなことを気にしても、お前の可哀想な頭じゃ理解できそうにないからな。

俺は無駄な苦労はしないんだ」


「あんたねぇ! 感謝の気持ちくらい素直に受け取りなさいよ!」


「ぎゃあ、ぎゃあ、喚くな、発情した雌犬ですらもっと大人しいぞ」


「それが女の子に言う言葉!?

もうちょっと、せめてもうちょっとましな例えにしなさいよ!」


少しは見直したと思ったら、またこれよ?


でも、まぁ、助けてくれたのは確かだし、ここは私が引くべきだってことは分かるんだけど……


「早く行くぞと言っているんだ、こんな簡単な事すら理解できないのか?」


うん、やっぱりこいつは絶対に跪かせてやろう



「この世に偶然はない、あるのは必然だけ」


某魔女さんのセリフで、この作品のコンセプトです。


これまでばら撒きまくってる伏線も回収して完結させます!


……できたらいいよね


それではまた次回(。・ω・。)ノ~☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'バイバイ☆

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