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理の使役者  作者: ひさし
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半分の正解

パソコン不調の為、しばらく投稿できませんでした;x;

「ねぇ、あんたお金持ってる?」


あれから、特に何事もなく最寄りの町へ到着したまでは良いのよ。


でも、そこで宿を取ろうとしたところで気づいたけど、私お金持ってないのよね。


「心配しなくても、金なら持ってる。

最初から、お前に期待なんてしていない」


さらりと毒を吐く癖はどうにかならないのかしらね……


でも、こいつの財布にはお札がぎっしり、もしかしなくても、こいつって金持ちなの?


「そのお金どうしたの?」


正直、真っ当な手段で稼いだとは思わない。


あんな森の奥に何年も住んでるし、なんといっても『終の魔女』の弟子だ。


噂程、極悪非道というわけじゃなかったけど、昔はそうだったのかもしれないし。


「さっき、殺した奴らから拝借したのが半分、もう半分は師匠から旅立つ前に貰った分だ」


さっき、あれだけ言ったから複雑な気分だけど、死んでしまったものは仕方ない。


恨まれても仕方ないけど、私も使命がある以上そこは割り切ろう。


「それにしても、あんな森の奥に居てどうやって稼いでるわけ?」


「師匠は性格こそあれだが、世界最高の魔導師だぞ。

その師匠が作った薬は当然、そこらで売っているものと比べ物にならない。

高く売れて当然だろ?」


「それは、分かったけど、誰が売りに言ってるのよ?

あんなところに買いに行く人なんていないだろうし、あんたが売りに言ってるってわけじゃないんでしょ?」


「少しは頭を使え、ただでさえ馬鹿なんだ、少しは想像力を養え」


あ、そう、どこまでも私を馬鹿にするわけね。


上等よ、ここまで言われて引き下がれるなんて、私のプライドが許さないわ。


物を売る為には、市場に売り込まなくても個人に売り渡せばいい。


だけど、どういう方法にせよ、その場所に行く必要があることは変わらない。


うん、ここまではいい、シオンは10年余りあの森から出ていないといったんだから、シオンが売りに行っているわけじゃない。


となると、後はミトスだけど、ミトスが行くくらいならシオンに頼むはずだから、これもあり得ない。


「ミトスが使い魔に売りに行かせたんでしょ?」


「半分正解だ、だが、驚いたな、お前にも正常に機能する脳細胞があったとはな」


当たっても外れても結局貶されるわけね。


「出発は明日の早朝でいいのよね」


「ああ」


「そう、それじゃ、おやすみ」


ああ、もう、さっさと王都まで辿り着いてあんな奴とおさらばしたいわ。


まったく、どうして、ああも口が悪いのよ!


ん、そういえば、私の行き先が王都だなんて言ったっけ?


まぁ、あんなところに居たんじゃ口を滑らせててもおかしくないかな。












───はぁ、まったく、嫌になるな。


「会う度に殺気をぶつけるのはどうにかならないのか?」


「『終の魔女』からの手紙だ」


「確かに受け取った」


手紙を渡すなり、一瞬にしてその姿を消す男。


あの時の答え、正解の半分は何かを使役しているということだ。


だが、使役しているものは使い魔なんてものではなく、呪術で縛り付けられた人だ。


扱いなんて奴隷と同じ、与えられた仕事をただ、言われるがままに行うだけ。


失敗すればもちろん殺されるし、性質の悪いことに、洗脳や拷問の類を一切していないところだな。


それでも、体は言われた通りに動いてしまう、だから、あいつらは師匠や俺を殺したいほど憎んでいるというわけだ。


「───はぁ、それにしても手紙か……」


遠距離の連絡手段としては手紙が普遍的だ。


だが、軍の一部では遠距離の通信機器が開発されている。


そんなものがある中で、『終の魔女』が遠距離の連絡に手紙を使うこと自体がおかしい。


伝えるべきことがあるなら、念話でも空間を跳んでくるでもした方が効率的だ。


つまり、この手紙には碌でもない仕掛けが施されている。


だが、このまま捨てたら、後でどんな仕打ちが待っているか分からないしな。


とりあえず、解析を掛けるか


────仕掛けそのものは、別空間を開くだけの物。


なにが出てくるかは、分からないか。


「開け」


鬼が出るか蛇が出るか、むしろその程度ならどれだけ楽か……


「ガァアアァアア」


下位の竜種、下位とは言っても竜種は竜種、小さな町一つくらいなら簡単に壊滅させられるくらいの力を持っている。


普通なら、魔導師が2,3人集まって倒すものだが


「今更だな」


風の刃で首を跳ね飛ばす、あの程度の魔法障壁ごときで止められるほど柔なものじゃない。


『あはははは、シオンも強くなったね。

覚えてるかな? 私が最初にシオンと戦わせた魔物があれだったんだよ。

あの時のシオンは全力で掛かって奥の手まで使ってやっと勝てたのに、いまはあっさりだもん。

それでこそ、私の弟子だね、褒めてあげる。

本題だけど、エルナを送り届けた後の事だけど、好きにしていいよ。

私のところに戻ってくるもよし、外の世界で生きるもよし、シオンの好きなように生きていいよ。

あ、でも、外で生きていくことになってもたまには遊びに来てほしいな。

それじゃあ、頑張ってね、シオン。

楽しみにしてるよ。』


燃えていく手紙、読み終えた後、自動的に燃えるようにしておいたんだろう。


好きに生きろか、そんな気がないくせに、よく言う。


『楽しみにしてる』か……















「なんか、騒がしいわね?」


翌日、さっさと王都に辿り着きたい一心で出発した早朝、こんな早いというのに、町の人が集まって、何か騒いでいるようだが


「関係ないことに首を突っ込むな。

さっさと、王都に向かうんだろう?」


「分かってる、ちょっと気になっただけよ」


何か嫌な気配がするな……


以前感じたような気配だが、もしそうだとしたら、なぜこんなところに?


「なぁ、あんたら、外の者だろ?

よかったら、ちょっと手を貸してくれないかい?」


「急いでいるんだ、他を当たれ」


「ちょっと、そんないい方しなくていいでしょ!

すみません、こいつ根っから性格が最悪なんで気にしないでください。

ところで、なにかあったんですか?」


「あ、ああ、いつも大人しい山の魔物が突然暴れ出してね。

腕に覚えがあるなら、少し様子を見てきてほしいのさ」


この気配と、魔物の暴走か……


「いいだろう、その山はどれだ?」


「あの山だ、ユグ山って言ってね、昔から1度も魔物が暴れ出したなんて話は聞いたことなかったんだけどねぇ」











「いったい、どういう風の吹き回しよ?」


「───ここらの魔物は知性があるはずだ。

その魔物が暴れ出すことが、どれだけ異常な事か理解してるか?

まさか、そんなことも分からず、手におえるかもわからずに、引き受けようなんて思ったわけじゃないだろうな?」


「わ、分かってるわよ!」


それにしても、どういうつもりかしら?


いきなり、手のひらを返したような態度を取るなんて。


確かに、この件は私じゃ手におえるようなことじゃない。


魔物は知性がある分、力も強いってのが定説。


それこそ、魔獣なんかの比じゃないくらいには。


そんな、面倒事しかないのに、こんな性根が曲がりに曲がった奴が二つ返事で引き受けるなんて……


「止まれ」


「ん、てめぇ、シオンか?」


「やっぱり、お前か」


黒衣を纏った長身の男と、傷だらけの女の人。


それに、シオンの知己ということは『終の魔女』の関係者。


「はっ、あの魔女の下で引き篭もってばかりだと思ってたが、まさか、外に出てるとはなぁ?」


「くだらない話なら付き合う気はない。

答えろ、お前は何をやっている?」


「見てわからねぇのか?

腹癒せに、ここらの魔物を狩っているだけだ」


「そいつが、魔物じゃないことも分からない程耄碌したわけじゃないだろう。

今すぐ、手を引け」


「はっ、俺がお前の言うことなんて聞くわけねぇだろうが!

ちょうどいい機会だ、あの魔女の森じゃ手を出せなかったが、ここなら話は別だ。

てめぇを殺せば、あの魔女も少しは堪えるだろう」


え、どういうことなの?


こいつとシオンはいったいどういう関係なの?


「おい、あいつは殺す。

あれは生かしておけば、各地で今回のような被害が出る」


「はぁ!? あんた達仲間じゃないの!?」


「なんだ、その女、何も知らないのか?

教えてやるよ、俺たちは呪われてるんだよ。

あの憎たらしい『終の魔女』にな!」


「あれが、昨日の答えだ。

もっとも、あれほど性質の悪い奴はそうそういないがな」


これが、残り半分の答え!?


やっぱり、噂通り『終の魔女』は……


「いろいろ、思うことはあるだろうが今は巻き込まれないように下がってろ」


「う、うん」


「はっ、てめぇ如きが俺に勝てるとでも思ってんのか?」


「御託はいい、さっさとかかってこい」


「てめぇを人質にしてこの呪いを解いたら、あの魔女もろとも地獄に送ってやる」


直径10mはある、炎弾がいくつも黒衣の男の背に現れる。


詠唱も補助の魔法陣もなしに、これだけの魔法が使えるなんて!?


いくら、シオンでもこれはやばいんじゃ!?


「精々、無様に生きながらえてくれよ!」


轟音と共に山の形を変えていく、炎弾、周りにあった木々は燃えるなんて過程をすっ飛ばして塵となる。


「シオン!」


「これくらいで叫ぶな、鬱陶しい」


クレータだらけの大地に傷一つなく立っているシオン。


これが、超一流魔導師の戦い───────


「『終の魔女』の唯一の弟子ってだけはあるな。

まぁ、あんな、子供のふりをして騙し討ちをするような卑怯者なんざ、本来なら俺の敵じゃないんだがな」


「お前が何処の誰かは知らないが、お前程度がどれほど足掻いたところで師匠には勝てない。

力の差も分からない雑魚が強がるな、見苦しいぞ」


「てめぇ、よほど死にてぇみたいだな!」


「そんな、豆鉄砲で誰を殺すつもりだ?

身の程を知れ、三下」


あれだけ撃っているにも拘らず、シオンには一発当たるどころか、爆発の余波ですらシオンには届いてない。


これが、『終の魔女』の弟子の実力……


「っち、そういうことか。

てめぇ、俺の魔法に干渉してやがったな」


「火力馬鹿らしい単純な魔法だ、簡単すぎてあくびが出る」


「そうかよ! これならどうだ『イグニッションプレス』」


な、な、なにあれ……


あんなの落ちてきたらこの山なんて凹凸が反対になるわよ!


「これなら、いくら軌道をずらそうが結果は同じだ。

生かしやろうと思ったが、やっぱり死ね」


「シオン!」


「いちいちわめくな、鬱陶しい。

あれだけの規模の魔法を、それだけ早く発動できる腕は感心するが────単純だといったんだ」


「なにぃ!?」


「俺の干渉が軌道をずらすだけのちんけなものだと思ったか?

その程度の魔法、何百あったとしても分解するくらい容易い」


「ふざけるな! そんなことができるわけ…が……」


「『イグニッションプレス』、お前一人殺すのにこんなにでかくする必要なんてないか。

分裂・圧縮、これが格の違いという奴だ。

死ね『フレアダスト』」


圧倒的過ぎる……


あいつだって、超一流の魔導師、この山にいた魔物すらものともしない実力者を、赤子の手を捻るように倒した。


『終の魔女』の弟子であるシオンでさえも国を相手取ることができる力を持っているなら、『終の魔女』は、本当に世界を滅ぼすことなんていとも簡単にやってのけるのかも。


「おい、生きているか?」


「誰だか知らぬが、窮地を救ってくれたことに感謝する」


「そんな事より、早くこの山を治めろ。

お前がこのあたりを治めている精霊だろ?」


「その通り……だが、彼奴との戦闘で今の妾にはそれほどの力は残っておらぬのじゃ」


精霊なんて、初めて見たわ。


普通、人前になんて絶対に出てこないのに。


「これを飲め」


「人の薬を飲んだところで精霊は回復せぬ」


「いいから飲め」


「むぐっ!? ……ごくっ……ごほっ、ごほっ、何をするのじゃ!」


精霊に対してもまったく態度が変わらないのね。


私だけじゃないことにちょっと安心したわ。


「こ、これは……」


「俺が調合した薬だ。

そこまで回復したら問題ないだろう」


「う、うむ」


あれだけ騒がしかった山が落ち着いて行く。


これほどの力を持った精霊を倒した奴を、簡単に倒すシオンって本当に強いのね。


「おい、帰るぞ」


「あ、うん」


まぁ、なんにしても一件落着ね。


報告したら今度こそ王都に向かいましょう。

毒舌キャラは書いてて楽しい。


ミトスとシオンの絡みを書きたいけど内容的にまだまだ先なんですよね…


最悪番外編で……


そんなわけで、これからはもっと細目に投稿できますのでよろしくお願いします。


ではまた次回☆⌒(*^-゜)ノ~♪see you again♪~ヾ(゜-^*)⌒☆

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