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理の使役者  作者: ひさし
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死闘

「―――っ、キュロ大丈夫!?」


返事がない、最悪の事態が頭をよぎる。


それでも、私がパニックに陥らなかったのは『トマラクス』を持っていて、尚且つ、その使い方を知っていたから。


火傷や裂傷は多いけど、致命傷と呼べるものは少ないし、気を失っているだけ。


ほっと、一息つくと、私を見下ろしている仇敵へと目を向ける。


「ふむ、流石はあの研究の生き残り、あの爆弾で死なないとは驚嘆に値しますね」


「温いわね、やる気はあるのかしら?」


「これは手厳しい、流石に国を捨てるお方は違いますね」


どうして、あいつが生きて――――――いや、そんな事より、あれは!


「しかし、本当に素晴らしい力ですよ。

これさえ通用しない、『理の使役者』は本当の化物ですね」


どうして、人が爆弾と化したのか、確かにあれがあれば納得できる。


そして、あれに対抗できるのは私しかいない。


「確か、エルナと言いましたね、世界の命運を賭け、『スラント』と『トマラクス』を賭け、最後の戦いと行きましょうか」


テラスから身を乗り出し、吹き抜けのホールへと飛び降りてくる。


その手に持っているのは、嫌になる程見てきた、電波が作り上げた持っているだけで、達人の域に昇華させる魔剣、そして、サンスクリットの国宝『スラント』。


『トマラクス』と『スラント』、この眼で見ると、お互いの効力が及ぼす際に、薄くだけど線が見える。


その線が対象に達すると効力が発揮される、そして、2つの神器はそれらを打ち消しあう。


故に、あの魔剣を持っているあいつに私が勝てる術はない。


だけど、この場に魔剣はもう一本存在する!


テラスからホールへと降りてくる数秒、力の限り走り、死体から魔剣を取り、上から振り下ろされる斬撃を受け止めた。


「まったく、役に立たない女たちです。

そうは思いませんか?」


「裏でこそこそやってるあんたにだけは言われたくないわよ!」


防御不可の魔剣は互いを融解しようと、打ち合い、切り結ぶ。


その間にも、互いに神器を発動させ、打ち消しあう。


天井から差し込む光が、まるで踊っているかのように切り結び、鍔迫り合いになる私たちの顔を照らし、睨みあう。


「―――――っ、あんたたちが何をやろうと人は生き返らない!

あんたたちがやってることは、ただの虐殺よ!」


シオンから教えられたこいつらの目的。


人が持つ魂は莫大なエネルギーを持っていて、『トマラクス』は、魂を内包している肉体の身を分解できる。


そして、魂という無色のエネルギーに色を付ける為の『スラント』。


戦争という多くの人が集まる舞台で、それを使い、莫大なエネルギーを利用し、その場で神という名の殺戮の権化を堕とす。


最後に、シオンの持つ反転の力『クレリフ』で蘇生の力を持った神を誕生させる。


万能の霊薬『エリクシル』、それがこいつらの最終目的。


「ほぅ、流石はシオン君、私たちの目的に気付いていましたか。

だが、もう遅い、ダラスは既にサンスクリットに向かい進軍を始めました。

ここで、『トマラクス』、そしてシオン君を手に入れ、この世界に神を降臨させるのです!」


お互いの技量は同じ、必然的に勝負を決めるのはお互いの素の能力。


そして、ここにきて男女の筋力の差が決定的になり、鍔迫り合いは徐々に押され、いったん体制を立て直すために後方へと跳ぶ。


「そんなことしても無駄だってどうして気付かないのよ!

死を否定し先には無しか待っていない! あんたは世界を滅ぼそうとしてるのよ!」


「それがどうしたというのです! 私は彼女がいれば、他のことなどどうでもいい!」


狂ってる、こいつに説得なんて無駄、だけど、このままじゃジリ貧で私が負ける……!


なにか、なにかこいつを倒す方法はないの!


精霊の力じゃ、あの魔剣を突破できない、これが『トマラクス』じゃなくて『スラント』だったら、精霊の力を無理矢理、自分の力にできるのに!


「戦闘中に考え事とは余裕ですね」


「――――っあ!?」


その隙が決定的になり、魔剣が私の手から弾き飛ばされた。


「これで終わりです!」


――――終わった、今度こそ死ぬ


「―――んっ!」


そう思った瞬間、キュロの大剣が敵を粉砕せんと、振り下ろされた。


「―――くっ、まだ、動けましたか!?」


そんなはずない! あんな体で動けるはずが……!?


そして目に入ってきたのは、以前、精霊が示したキュロを救う方法。


でも、それは、『スラント』あってのもの。


文字通り、命を削り、体中の血管から血を吹きだしながら剣を振るう。


「死になさい!」


「させないわよ!」


寸ででキュロに届くはずだった『スラント』を打ち消し、最後の力を振り絞って、魔剣をキュロに向かって投げる。


「キュロ!」


一歩間違えれば、キュロの体を融解する魔剣の柄を、キュロは後ろを向いたまま掴む。


「――――んっ!」


同じ技量では素の能力が勝敗を決める。


そして、大剣を振り回すキュロの斬撃は魔剣を叩き斬り、そのまま持ち主もろとも焼切った。


だけど、まだ終わってない!


既に動けないキュロを助けるために、死体から『スラント』を拾い上げ、精霊の魔力をキュロの魔力に変換する。


「ま、間にあったぁ……」


精霊がキュロの体から抜けると、次は、残った魔力で体を癒し、一命を取り留めた。


ほっとしたのもつかの間、ゆっくりとホールへと降りてきたサンスクリットの姫君が拍手をしながらこちらへと向かってくる。


「素晴らしい見世物だったわ、一度死んだ甲斐はあったわね」


「それ以上近づいたら殺すわよ」


世界を狂わせた1人、『スラント』を持ち出したのもこいつね。


姫という立場があれば、堂々とサンスクリットの王城へと侵入できる。


こいつが、この世界の最大の敵といっても過言ではないわ。


「私はこれ以上何もするつもりはないわ。

これ以上ない最高の物語をこの目で見ることができた、私は満足よ」


「ふざけないで、あんたは世界を脅かした大罪人よ。

死刑すら生ぬるいわ」


「あら、私が一体何をしたというのかしら?

私は、この組織に潜り込み、崩壊させる機会を窺っていた。

『スラント』を持ち出したのも、相手を油断させるため、その私が2つの秘宝を持って帰還し、両国の仲を取り持てば、今より平和な世界ができると思わないかしら?」


―――悔しいけどその通り、世界の危機を救った英雄が一国の姫で、その英雄が仲裁すれば戦争なんて起こせるはずもない。


「あんたって、最低ね」


「褒め言葉として受け取っておくわ」


こっちは勝ったわよ、後はあんた次第、絶対に勝ちなさいよ、シオン

(;・∀・) ナン! (; ∀・)・ デス!! (; ∀ )・・ トー!!!

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