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理の使役者  作者: ひさし
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メイドとロマン

「頼みねぇ……知ってると思うけど、僕は俗世に干渉しないと決めているんだ。

今の僕は、若者たちがどんな世界にしていくかを、シズクといちゃいちゃしながら傍観するだけの鑑賞者だよ。

いくら、彼女のお気に入りの君の頼みとはいえそれは聞けないな」


この反応は予想通り、だが、俺もここで引き下がるわけにはいかない。


フィーネを殺すためには、こいつの協力が不可欠だ。


「君も一途だねぇ……まぁ、せっかく来てくれたんだ、話くらいは、酒の肴にでも聞いてあげるよ。

そうだね、久しぶりの君の手料理を食べたくなったことだし、シズクと変わってあげてくれ」


「―――分かった」












「どういうおつもりですか、ご主人様?」


「そんなに怒らなくてもいいのに、でも、怒ったシズクも可愛いよ」


「そうやって、いつまでも誤魔化されると思わないでください」


そう言いながらも、しっかりと表情には表れているツンデレ具合も最高だね。


今夜はたっぷりと可愛がってあげよう。


「一応、呼び戻した理由はあるんだよ。

1日に2人も客人が来るなんて、彼女とシオン君が来て以来だね」


「―――お迎えに行って参ります」


「いや、いいよ、もうすぐ来るから」


この部屋に通じる唯一の扉が開かれ、現れたのは遠目には性別が判断できない黒髪の少年。


あの子に女装させるとさぞ面白そうだねぇ……


シズクに用意させておこうかな。


「君がここの主か?」


「ああ、そうだよ、ようこそ僕の城へ、僕は来る者は拒まない主義だけど、城を壊すのはいただけない。

御帰りの際は修理を頼むよ」


「ここは素晴らしい場所だ、この場所を譲ってもらえないか?」


僕の話を無視した挙句、好き勝手に言っている慇懃無礼な態度に眉をひそめる僕のメイド。


僕? あはは、子供が生意気なのは元気がある証拠だから、これくらいで気を害するほど器量は狭くないよ。


「悪いけど、ここは僕の住居だからそれは叶わない。

でも、せっかく、来てくれたのだから、1つ良い事を教えてあげよう。

今の君は操り人形で哀れなピエロだ、それを抜け出したかったら『世界の王』だなんて馬鹿な事を言うのはやめた方がいい」


僕の忠告というか助言はどうやら不快に取られたらしいね。


不快な表情を隠そうともしていない。


「君がどのような存在か知らないが、知ったような口を利かない方がいい。

僕は―――――」


「『終の魔女』をも打倒することができた、とでも言う気かな?

あはは、もう1つ教えてあげよう、君のような人類が僕たち『理の使役者』を倒すことは不可能だ。

僕はこれでも3000年は生きているけど、かつて『理の使役者』を倒すことができた人類なんて存在しない」


「それは今まで僕のような存在がいなかっただからだ。

僕は理を超越した存在、君たちをも超越した存在だ」


「――ふむ、これはちょっと重傷だね。

先人の忠告は素直に受けておくべきだと早いうちに気付くことを祈るよ。

シズク、御帰りになってもらいなさい」


次の瞬間、斬撃が僕へと放たれる―――――もちろん、僕のメイドが守ってくれるんだけど。


「貴方は敵と判断し追放します」


「メイド如きが邪魔をしないでくれないかな。

女性を傷つける趣味はないんだ」


「お帰りくださいませ」


僕特製の箒を持って果敢に侵入者へと向かっていくシズク。


やっぱり、戦うメイドさんはロマンだね。


白を基調としたエプロンドレスに、少し短めのスカート、純白のストッキングにガーターベルト、絶妙に調整された絶対領域には感動さえ覚える。


激しい動きで時折、スカートが翻り、露わになる下着を見るたびに、僕はいい仕事をしたと自分を褒め称えたくなる。


それにしても、今日は黒か……眼福眼福


こんなに素晴らしいメイドがいるにもかかわらず、僕と来たら罪な男だ。


クールビューティーのメイドの次は、純情ドジっ娘のメイドが欲しくなってくる。


う~ん……あ、いま、僕はとてもいいことを思いついてしまった。


そうと決まればこんなことをしている場合じゃない。


「―――――っく」


「少しはやるようだけど、その程度で僕に勝とうだなんて思い上がりも甚だしい」


そんな事を考えている間に、勝敗は決していた。


お互いに致命傷と呼べるものはないけど、シズクの箒は真っ二つに折れ、肩で息をしている。


―――少しメイド服が破けていればいいと思ったのは秘密にしておこう。


「シズク、下がっていいよ」


「ですが……」


「これは命令だ」


「畏まりました」


どんな時でも、優雅な僕のメイドはやはり素晴らしい―――けど、メイドを侍らせたいのは男の夢だ。


「次は君が相手か」


「ああ、かかってくるといい。

さっきの忠告の意味を教えてあげよう」


せっかちな性格なのか、言うや早速自慢の刀で僕の首を落とすであろう神速の抜刀を見せた。


それを前に僕は何の力も残っていない折れた箒を拾い、剣戟を受ける。


―――――パキン


「―――な…に?」


箒に当たった刀は折れ、呆然自失となったピエロ君へ箒を振り下ろす。


瞬時に反応し魔法障壁を展開し防ぐが、衝撃で大きく後退する。


「―――いったい何が……」


「駄目だな、ちゃんと手入れをしないから、こんな時に劣化で折れてしまうんだ」


「そんなこと――――ぐっあああああああ」


彼にとっては突然痛みが走ったように思えるだろう。


それも当然、彼の左腕は有りえない方に曲がっているんだから。


「いったい、なにを……!?」


「若者を一方的にいじめる趣味なんて持っていないし、別に隠すこともないから教えてあげるよ。

君はこういう話を聞いたことがないかな?

今というものは数ある分岐点の1つであり、違う分岐点を辿った平衡世界が存在すると」


「つまり、君はその分岐点を選ぶことができるのか……」


戦慄しているところ悪いけど、僕の力はその程度のモノじゃないんだよね。


そもそも、それだけだとしたら、なぜ刀が折れ、腕が折れているか説明がつかないだろう?


どうやら、シオン君と違って少々物わかりが悪いようだ。


「正確に言えば、僕は分岐点を何度でもやり直し、それは今に反映させることができるんだよ。

いくら、君の刀が自慢の一品だとしても、何年も前から少しづつ疲労していれば、あの瞬間に折れることだってあるだろうしね。

その後は、もっと単純だ、君が魔法障壁を張り遅れた分岐点を選んだんだよ。

勿論、態々、過去の分岐点をやり直さなくても、そのまま腕を折ってあげてもよかったんだけど、これはちょっとしたヒントのつもりだったんだ。

僕は穏健で尊大な性格でね、若気の至りは誰にでもあることだし、それを赦すくらいの寛容さくらいは持ち合わせているつもりだ。

だが、これ以上ごねて時間を取らせるというのであれば、腕ではなく首が折れることになるよ」


これが僕の『理の使役者』としての力、『アルゴリズム』。


シズクがただの人間でありながらここまでの力を有しているのもこの力のおかげ、生まれた時まで遡って、一部の隙もなく完璧に積み上げてきたシズクだ。


ああ、でも誤解しないでほしいのは、僕はこの力でシズクの心象を操作した事はない。


面と向かい合ってきちんと口説き落としたし、納得してもらった上でメイド服も来てもらっている。


―――まぁ、体質の方は少し変えさせてもらったけどね……


少し敏感な方が萌えるだろう?


「――――くっ」


短い捨て台詞を残し、消えていくピエロ君。


帰る前に壊したところは直していくように言ったのに、話を聞かない若者は感心しないな。


まぁ、壊されなかった分岐点を辿ればいいわけだけど。


「お手を煩わせてしまい、申し訳ありません」


「気にしないで、それより、純情ドジっ娘メイドってどう思う?」


「私はメイドですのでご主人様の御命令には従います」


そう言いながらも、しっかり嫉妬してくれるシズクは最高に萌えるね


「いったい、さっきの音はなんだ?」


厨房からいい香りが漂ってくる、どうやら宴の準備はできたようだね。


「気にしなくていいよ、シズク、配膳を頼む」


「畏まりました」


。゜+.(・∀・)゜+.゜イイ!!

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