人の定義
「おい、そんなに離れるな。
下手をしなくても死ぬぞ」
「いや、でも、シオンが私に惚れたら、それこそ私死んじゃうし」
「そんなことはありえないから安心しろ」
なんだかな、イケメンからこんなこと言われたら、私の中の女のプライドが疼いちゃうな。
このすまし顔を、明かしてやりたいな。
「どうだか、男なんて、隙あらば襲ってくる生き物でしょ?」
「お前の頭が可哀想なことはよく分かった。
その可哀想な頭に伝わるかどうかわからないが、一応言っておこう。
そんなやつばかりだったら、この世は性犯罪だらけだ。
そして、いまの世の中の犯罪比率を調べればお前の頭が可哀想なことの証明になる」
───プツッ
なにこいつ……なにこいつ、なにこいつ!?
ちょっと、自分がイケメンだからって、人のことを可哀想、可哀想、連呼していいと思ってるの?
「ふん、そう言えば、シオンはロリコンだったわね。
そりゃ、安全だわ」
「本当に可哀想な頭をしてるな。
昨日言ったことをもう忘れてるとは、よく今まで生活に支障が出なかったな」
───────ブチッ
「さっきから、可哀想、可哀想、連呼するんじゃないわよ!
あんた、喧嘩売ってんの!?」
「少なくとも吹っかけてきたのはお前だ。
ああ、そんなことも分からないんだったな。
そこは、俺の落ち度だった、すまなかったな」
あ、こいつ、また鼻で笑いやがった!
何この天然猛毒生産野郎、美少女に優しくするのは常識でしょ!
はっ、そうか、こいつ照れてるんだ。
そうよね、ずっとあんなところに居れば、他の人と接する機会なんてほとんどないだろうしね。
そして、久しぶりに他の人に会ったかと思えば、私のような美少女じゃ照れるに決まっている。
そう言えば、ミトスもこいつの事ツンデレって言ってたし、照れてた分、それを悟らせないために毒舌だったのよ、きっとそうに決まってるわ。
「何を気持ち悪い顔をしてるんだ?」
気持ち悪い!?
いや、落ち着け私、これは照れ隠しなんだ。
「いや、まぁ、あんたが恥ずかしがるのも分かるわよ。
久しぶりに会った女が、私みたいに美少女じゃ照れちゃうわよね」
「どう勘違いしたらそこまで行くのか聞いてみたいが、理解できないだろうから止めておこう」
「でも、ミトスに殺されるのは嫌だから、私に惚れちゃわないように気をつけなさいよ」
「ふん、誰がそんな貧相な体に欲情するんだ?」
「死ねえええええええええ!!」
殺す、こいつだけは生かしておかない!
「ふん、図星を突かれて焦ったか?
単純な奴だ」
「私は貧乳じゃない、私より小さい奴なんていっぱいいるわよ!」
そうだ、確かに大きくはないが、慎ましいだけ。
断じて、断じて貧乳なんかじゃない!
「ああ、そうか、それは良かったな」
「うがーーーーー!!」
一緒に旅をして1時間、こいつのことは絶対に好きになれない。
一応、身の安全は確保されたわけね。
絶対にこいつは一発殴るけど。
「止まれ」
やはり、この森に入ってくるような命知らずではないか。
それにしても、この森に入ったら死んだも同然だろうに、態々見張りを付けるとはご苦労な事だ。
「まさか、この森に入って生きて帰ってこようとは。
だが、もう逃がさんぞ」
「やば、まだ、追手がいたなんて……」
わらわら……、この女1人捕まえるために10人以上、しかも、死んだと推測されて当然の場所にこれだけの人手があるということは、そこそこ大きな組織が絡んでる。
あの秘宝は、よほど大切な物らしいな。
「下がってろ」
「大丈夫なの?」
「俺の師匠を誰だと思っている。
あの程度、百人集まっても問題ない」
「なんだ、貴様は?
邪魔立てするつもりなら命はないと思え」
「俺はこいつの護衛だ。
それに、下っ端には聞きたいことなんてない。
今すぐ、目の前から消えてくれれば、命は助けてやる」
「いいだろう、その女ごと貴様も………」
「今すぐ消えろと言ったんだ。
誰が、口を開けと言った」
「こ、こいつ、魔導師か!?」
「逃げろ、魔導師なんかに勝ってこねぇ!」
「タイムアウトだ、お前たちも逝け」
流石、あの魔女が作った魔法、本来風の魔法を使えば、周囲には風が舞う、それに首を落とすほどの刃となれば視認すらできるが、この魔法は一切、周りに影響を与えず、目にも見えない。
気付いたら、首と胴体は永遠にお別れだ。
欠点と言えば、俺程度の魔力では出力が弱く、強固な魔獣や魔物には効かないところだな。
「どうして、殺したの……
あんたほどの実力があるなら、何も殺さなくても……!」
「態々、逃がして、何のメリットがある?
それとも、実力が伯仲しているなら、殺してもいいと?
そんな、自己満足の偽善の為に敵を生かしておくわけないだろう。
それに、俺は最初に逃げるチャンスは与えたはずだ」
俯き、先へ進むエルナをゆっくり追いかける。
「ついてこないで」
「はい、そうですか、ってわけにはいかないんだ。
どうしてもというなら、師匠に断わってくれ」
「あんたは……何も思わないわけ?
無抵抗だった人を殺して、その人の友達や家族が悲しむって思わないわけ?」
「そんなことを考えて、戦えるものか。
戦いとは命を懸けて臨むもの、死にたくなかったら最初から出てこなければいいだろ」
「戦いたくなくても戦っている人だっているわよ!
だから、私たちは人の命を重く受け止めなきゃいけない。
そうじゃなきゃ、それは人じゃなく殺人鬼よ」
「言いたいことはそれだけか?」
「所詮、『終の魔女』の弟子ってことね」
「ああ、師匠も俺も人としての矜持なんて持っていない。
師匠は楽しむために人を殺し、俺は生きるために人を殺す。
それが鬼だというなら、俺は鬼なんだろう」
あそこにいたころは、人を殺す必要もなかったがな。
勝手に『アインナッシュ』に喰われて終わる。
だが、俺があそこに辿り着くまでは、殺さなければ殺される。
俺の世界はこいつのように綺麗じゃない。
「何を言っても、無駄なようね」
「ああ、そんなに俺とはなれたいなら、さっさと王都まで行くぞ。
そうすれば、俺もお役御免で、帰ることができる」
「命令よ、今後、私の許可なく人を殺すな」
「俺がお前の命令を聞く必要はないな」
「ええ、そうでしょうね。
だったら、私にも考えがあるわ」
急に脱ぎ始める……? っち、そういうことか。
「あれは冗談じゃないぞ。
お前が想像もつかない拷問を受けることになる」
「それでも、私は私を許せない。
そんな生き方するくらいなら、死んだ方がましよ」
10年もの間、まともな人と俺はあったことはない。
だから、この女は確実に死ぬだろうが、俺に被害が及ぶかと言われれば実際、体験してみないと何とも言えないところだ。
だが、あの魔女の行動は突拍子過ぎて全く読めないことを考慮すると、下手に刺激を加えたくない。
「分かった、お前の指示がない限り人を殺さない、これでいいか?
まぁ、殺さなければ殺される状況下においては守れそうにないがな」
「ふん、最初からそう言えばいいのよ」
「早く服を着ろ、日が暮れる前に、宿に着きたいんだ。
お前が露出狂だということは分かったが、街中では俺とは何の関係もない赤の他人としてふるまってくれよ」
「誰が露出狂よ!
いままで、1回たりとも男に肌を見せたことなんてないわよ!
うぅ、初めては、お金持ちで優しくてイケメンの彼氏って決めたのに……」
「そんなやついるわけないだろう。
いたとしても、お前のような貧相な体に欲情はしない」
「死ねええええええええ!!」
気が付いたら9時間くらい寝ている今日この頃。
仕事行ってご飯食べたら後は寝るだけという、廃人のような生活送ってます(ノ_-;)ハア…
どうにかしないと、と思っていますが睡魔に勝てず(-_-)zzz
それでも、投稿は続けます!
それではまた次回(。・ω・。)ノ~☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'バイバイ☆




