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理の使役者  作者: ひさし
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『ネストリウス計画』

「『ネストリウス計画』?」


「人型魔導兵器製造計画の俗称。

俺やキュロはその計画の被験体だ」


聞いたことがない、下っ端とはいえ私だって裏に生きる者なわけだから、そんなやばそうな話耳に入りそうなものだけど……


「概要はいたって簡単だ、往来の魔導兵器はどれほど高性能であろうと人が扱う上に単一の機能しか持たせられない。

なら、人に魔導兵器と同じ機能を持たせればいい、それを可能とするための計画」


「それは分かるけど、具体的にどうするのよ?

魔導師なんて魔力の多さでほとんど決まっちゃうのに、その魔力は生まれでほとんど決まっちゃうし」


「だからこそ、後天的に魔力の飛躍的向上を目的としたんだ。

その方法は、外部または他人の魔力を吸収させること」


「はぁ!? そんなの無理に決まってるじゃない!」


以前、精霊にそそのかされた時も『スラント』がなければ不可能だと言われた。


自身で生成する以外の魔力なんて、害悪以外何物でもない。


そもそも、人が生成する魔力と星が保有している魔力なんて根本的に違う。


なんたって、星が保有している魔力は、大地を育み、穢れを浄化する、役割を持った星の触覚だ。


そんなもの人の体に適応するはずがない。


「だからこそ悪魔の研究なんだ、被験体は99.9%が死ぬ。

研究が進んだとしても、以前のキュロのように感情が死ぬ、それさえ奇跡だろう。

だか、その奇跡を起こしても、キュロは魔法を使うことができない。

結局失敗作と言うわけだ」


こんな子供を……!


でも、それは確かに理に適ってる、この世界には貧困層で生きるか死ぬかの毎日を送っている人なんて山ほどいる。


そんな人たちを実験体にしたところで、誰も気づかないし誰も裁こうとはしない。


「加えると、子供の方が何事も適応しやすい。

順番待ちだった俺の前には同い年くらいの死体が山のように転がっていた」


「────っ、でも、どうしてあんたは生き残れたのよ?」


「俺には『スラント』『トマラクス』と同等の力があったんだよ。

反転の力、『クトレリフ』がな、その力で害悪だった毒を有益な薬と反転させ、命を繋いだ」


それじゃあ、シオンの魔力は後天的なもの?


というか、そんなことできるなら、それこそ無限の魔力になるんじゃないの?


「勿論、世界はそんなに甘くない、理を乱す俺を殺そうと研究所を襲撃した。

その頃の俺は、抑止力を倒せるほどには力をつけていたからな、混乱の中逃げだし、抑止力もろとも研究所を潰した。

そこからは、逃げ続ける毎日だ、その果てで師匠と出会い命を救われた」


これがシオンの過去、だから、同じ境遇のキュロにはあんなに甘いわけね。


しかも、キュロはシオンみたいに特別な力を持たない、奇跡で生き残ったんだから、普通に暮らしてほしいわよね。


あれ? そう言えば―――――――


「『終の魔女』もその実験の被験体だったりするの?」


「あれは先天的な天才だ、そもそも200年も前に同じ研究が行われているわけないだろう。

相変わらず、物事を考えること機能をどこかに置き忘れてきたような頭だな」


うん、いつも通りの毒舌、私はいつも通りスルー。


それにしても本当に化物としか言いようがないわね。


抑止力って言ったら、あれよ? 世界の防衛機関よ?


それを倒せるってことは世界を滅ぼせると同義よ?


そのシオンより強いってどんだけ強いのよ。


「ところで、キュロは何処だ?」


「寝てるわよ」


あんた、昨日私たちが一体何をやってたか知ってる?


正確に言えば何をやられたかだけど、普通の女の子なら間違いなく再起不能ものよ?


私は前回で多少慣れていたからまだ立ち直れたものの、思い出しただけでも身震いするわ……


「────まぁいい、島へ降りたら寝る暇なんてないだろうからな」


「でも、研究って成功してないんでしょ?

多少、強い衛兵がいてもあんたとキュロなら問題ないんじゃない?」


「───少しは頭を使って物を言えとお前の猿並の脳みそはいったい、何度言えば理解してくれるんだ?

その程度だったら、『デュナミス』が先行して潜入してるに決まってるだろうが」


む、そう言えばそうよね、でも、うちの先行部隊が撤退せざるを得ない理由ってなんなのかしら。


「お前でも魔獣くらいは知ってるな?」


「それくらい、知ってるわよ、魔力を持たない動物に魔力を持たせた生物の総称でしょ?」


「その技術の元になったものが『ネストリウス計画』だ。

つまり、あいつらは強力な魔獣を作りたい放題、そして、もう1段階上の生物も造り出してる可能性がある」


「───なによそれ?」


「人型がむりなら、時点、魔物を魔獣化させる可能性だ。

人よりもはるかに頑丈な魔物、それも上位の魔物なら多少の毒くらいどうということはないだろう。

それを、制御できるかは別問題だがな」


確かにそれは気が抜けないわね……


下手をすれば、島中に魔獣がいる可能性だってあるわけだし。


「それにしても、1回あんたが潰したんでしょ?

それに、そこまで失敗を続けてどうしてまだ続けてるのよ?」


「知らん、あいつらは研究さえできればそれでいいマッドだからな。

狂人の考える事なんて理解できるはずがない」


でも、この計画って両国ともに関わってるはずなのよね。


魔獣化の技術を提供したってことは、資金を求めての事だろうし、強力な兵器が手に入るなら、研究費を捻出したっておかしくない。


それに、考えたくもないけど、両国とも問題視している、貧困層の問題。


一応、物資の普及をやっているとはいえ、まともに暮らすには圧倒的に足りない。


その人たちを被験体として研究が進めば、一石二鳥だもんね……


流石に幹部クラスになると知っているだろうけど、下っ端が知って良い事じゃないわね。


「分かっていると思うが、絶対に俺かキュロの傍を離れるな。

それと、こいつを渡しておく」


「────これって『トマラクス』じゃない!?」


「もしもの時の保険だ、それがあれば、多少の危機は回避できるだろう。

だが、極力使うな、一応俺が偽物を持っているとはいえ、使えば一発でお前が持っているとばれる。

あの電波野郎もそれを取り返すために躍起になってるだろうしな」


「あいつらが、追ってくる可能性があるってこと?」


「当然だ、そいつがなければあいつらの目的が果たせないことは確実なんだ。

組織を上げて、奪い返しに来るのは当たり前、そして俺たちが向かう先にはあいつらの息が掛かってるんだからな」


────うぅ……、死なないためとはいえまた国宝を持つ破目になるなんて……


そりゃ、命をかける覚悟ならできてるけど、これって死ねないじゃない。


不安を胸に、ついに極寒の地、南の果て『イルミス島』へと着陸した。

((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル

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