逃げられない運命
『作戦は概ね成功したと言っていいでしょう。
ただ、1つ懸念事項ができましたね』
「ああ、あの電波野郎だな、いったいあれは何者だ?
戦闘能力だけ見ると俺より上だったぞ」
あれだけ派手にやっていたとはいえ、俺を殺さないように最低限の手加減は加えていた。
本気で殺しに来られたらひとたまりもない。
『それに、キュロ君が持って帰った武器、それも彼が創りだしたとみて間違いないでしょう』
極め付けにはこれだ、これほどの物は神造兵器ですらなかなか存在しないぞ。
おまけに、持っただけで一流の剣士の動きが取れると来たものだ。
それだけのことをできて専用化しないところが間抜けだがな。
『彼のことはこちらで調べます、幸い、キュロ君が戦った3人の顔が分かりますしね。
そちらからアプローチを掛けてみれば、なにか分かるかもしれない』
意外というべきか、キュロはかなり絵がうまい、戦ったという3人の似顔絵を手かがりにできる程。
それに、弓を持った女は身分が高そうだ、案外簡単に掴めるかもしれない。
『現状ですが、やはり『終の魔女』の名は強力なようで、両国ともに二の足を踏み始めました。
200年前の戦争の経験者もいますからね、しかし、その反面『終の魔女』が死んだという噂も広まっているようです』
「両国とも電波野郎を探してるってわけか」
『ええ、彼一人引き入れることができれば戦争に勝つことさえできますからね。
最低の目的は果たせましたが、未だ終戦はせず、冷戦状態と言ったところですね』
手っ取り早いのは電波野郎を殺してしまえばいいんだが……
『シオン君、『トマラクス』の力を使って彼を殺すことは可能ですか?』
「微妙なところだ、何せ、こんなとんでもないものを造り出してくる相手だ。
試してみないことには何とも言えないな」
『そうですか────シオン君、君にそれは預けておきます。
我々が持っていても奪われるのが関の山です。
何処に裏切り者がいるかもわかりませんからね』
「了解だ、それより、昨日言って話を聞かせろ」
『キュロ君が関わっていた研究についてです』
「───詳しく聞かせろ」
『『デュミナス』の調査員が研究所らしきものを発見しました。
内容が内容ですからね、流石に内部まで調査はさせませんでしたが、驚いていますよ。
まだ、あれを続けていたなんて……』
「驚いているのは俺だ、あれを潰したのは俺だからな。
あそこにいた連中は皆殺しにしたはずだったが、今度こそ逃がしはしない!」
『────っ!? まさか、あの研究は成功していたんですか!?』
「ああ、おそらく、俺が唯一の成功例だろうな。
もっとも、『クトレリフ』があってこそのものだが」
『──そうでしたか……、発見された場所は南の果ての離れ小島、『イルミス島』です』
「はい、あ~ん」
「あ~ん」
今私は、膝の上にちょこんと乗せて、キュロにお菓子を食べさせてあげてる真っ最中。
私は戦えないしね、これくらいはやってあげないと。
言っておくけど、これは頑張ったご褒美と言うわけで、キュロの事が好きとかそんな事なんだからね!
──私は誰に向かって言い訳してるんだろう……
とにもかくにも、いつも私をヘロヘロにしてしまうキュロのこういう子供っぽいところを見ると心が癒されていくわ。
「ん」
服を引っ張り次を催促してくるキュロ、やばい、萌える……
他にも無口だけど、声は綺麗で可愛いし、時々名前で呼ぶところとかキュンとするし、一見無表情だけど、よく見てみると感情に伴ってちょっと変わるところとか────────可愛いいいいいいいいいよおおおおおおおおおお!!!!!
お菓子を口に運んであげるときに、ちょっと悪戯して、引っ込めると、無言で訴えてくるあの表情は、もう、心のアルバムに永久保存決定だった。
でも、やりすぎると、性的な意味で私が食べられちゃうので注意しないとね。
悪戯した後は本当にひどい目にあったわ……
はぁぁぁぁぁ、これが妹だったら大喜びなのに、どうして彼女なんだろうか……、いや、まだ違うけど。
「──今日は大丈夫みたいだな?」
そういえば、私ってシオンに何度も裸より恥ずかしいもの見られてるわけよね……
慣れってのは怖いわ……
「明日、イルミス島に行く」
「なんでまた、あんな田舎に?
東のパーミラ島なら分かるけど」
イルミス島なんて年中凍土の極寒の島、リゾート地のパーミラ島とは月とすっぽんよ。
「お前には言ってない」
「私だって『デュナミス』の一員よ」
「下っ端が関わることじゃない、それも役に立たない奴にいちいち説明する必要もない」
変ね……、いつも通り口は最悪だけど、説明できないことは罵詈雑言を浴びせて誤魔化すはずだし、なんだか、怒ってる?
「私も同行するわ、それなら聞く権利くらいあるでしょ」
「役に立たない奴をどうして連れて行く必要がある」
「そこは『頭だけじゃなく耳まで悪くなったのか?』っていうところでしょ。
何を怒ってるか知らないけど、らしくないわよ」
睨んでくるシオンを真正面から睨み返す。
相変わらずの美形よね、迫力満点だわ。
「馬鹿だと思っていたが、分別も聞かない馬鹿だとは思わなかったぞ」
「あんたこそ、年中冷血毒舌だと思ってたけど熱くなれるとは思わなかったわ。
だけど、あんたは今、キュロを、世界の運命を握ってるのよ!
少しは落ち着きなさいよ!」
「俺がいつ世界の事なんて気にした?
何度でも言うが、俺は俺の為に利用しているだけだ」
─────パァァァァァン
「あんた、いい加減にしなさいよ!
そりゃ、いろいろあって、あんたも大変だってことは分かるわよ!
だからってね、あんたはもう1人じゃないでしょうが!」
胸ぐらをつかみ、頭を付きあわせ、叫ぶ。
勝手に利用して、いらなくなったらぽい? はっ、ふざけんじゃないわよ!
「キュロだって! 私だって! いるでしょうが!
あんたが私を疑ってるなら言ってやるわよ! 私はあんたを騙せるほど器用でもないし演技が得意なわけじゃない!
キュロまで疑ってるなんて言ったらはったおすわよ!
それにね、利用されるだけなんて、私が許すわけないでしょうが!」
言ってやった、あのシオンに言ってやったわよ。
これは我ながら褒めても良い事だと思う。
「───つまり、死んでも文句はないと言うことだな?」
「上等よ、妹分のキュロが命張って、私が張らないわけないでしょうが」
「説明は船の上でしてやる─────さっきの言葉後悔するなよ」
「誰に向かって言ってんのよ?」
「底抜けの馬鹿だな」
捨て台詞を言い捨て、シオンが部屋を出ていくと同時に
────はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
こ、怖かった……、本気で殺されるかと思ったわ……
あはは……、腰ぬけて立てないや……
でも、あれで少しは冷静になったわよね。
いつも、馬鹿にしてる私にあれだけ言われたんだもん、そりゃ気合い入れるわよ。
安堵と満足感に浸っている私を後ろからキュロが抱きしめる。
あぁ、癒される、今日はキュロに一杯ご飯を食べさせよう。
うん、そうして、いっぱい和もう────そう思った私に凍えた声が耳に入ってくる。
「妹分?」
────終わった
覆い被っている程度の抱擁、それだけだというのに、体がピクリとも動いてくれず、冷や汗だけが背筋を辿っていく。
振り向けばそこには真の無表情で私を見つめ、考えているんだろう。
「ち、違うのよ? ほら、流石に人に言うのはまだ恥ずかしいからで……」
「調教」
今度こそ立ち直れないくらい徹底的に私の心を折って、自分のモノにする方法を。
背筋凍らせる悪寒が全身を震わせる、だけど、いまは固まってる暇はない。
気合で部屋の外に出ようとしたときにはすでに遅かった。
あっけなく組み敷かれ、服の中に手を潜らせる。
「まって! ほら、今日はいっぱい、ご飯食べさせてあげるから、ね?
だから、許し───────」
言いかけた言葉は唇で口を塞がれてしまい、キュロの唾液と一緒に飲み込まされてしまう。
ああ、これはもう駄目だ……
そこからはいつも通り、意識が混濁するまで犯され、刷り込むように何度もキュロのモノだと言うこと口にさせられ、眠りについたのは朝日が昇り始めた後だった。
。。。ササx((・・)ノ o_ _)oドテッ口←出口




