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理の使役者  作者: ひさし
22/40

完敗

「師匠はあまり表に出てこないものと思っていたんですけどね」


「そうだね、私はここ以外でてくる気はないよ。

だって、もう何もかも手遅れだしね」


俺の腕の中で息絶えている、サンスクリットの姫君。


そして、取り押さえられているテーヴァの重役、この2人がいればどんなふうにでも状況を転がせる。


なにより、ここには『トマラクス』もある。


「さて、どうしてあげようかなぁ?

お姫様が犯人扱いされた腹いせに『トマラクス』を盗み、そこのに殺されちゃった?

それとも、最初からお姫様が仕組んだことでそれに気づいたそこのが殺しちゃった?

いろいろやり方はあるけど、いままでと違うのはどちらにも非があるってことだよね。

2国間の仲が良かったら、喧嘩両成敗ってことで済んでたかもしれないね。

でも、今はどうかな? 両国ともに大義名分ができちゃった。

うふふ、ここまで来て止められるかなぁ?」


くるくると回りながら、無垢な笑顔で、この世を嘲笑う。


止められなかった……、また、何もできないまま……!


「この女を俺に仕向ける必要はあったんですか?」


「当然だよ、そもそも、私の一番の目的はそれなんだしね」


俺の目の前に立ち、笑顔で見上げる。


「ねぇ、シオン、裏切られた気分はどうだった?

つらいよね? 苦しいよね? 傷ついちゃうよね?

シオンが助けた2人も、この私が巡り合せたんだよ?

それを、まだ信じられるかな?」


そういうことか……


それだけの為に、世界を巻き込んだのか……!


「欺瞞と裏切りに満ちたこの世界で、たった1人、私だけは絶対にシオンを裏切らない。

だから、帰ろ? シオンが望むならこんな世界壊してあげる」


狂気としか思えない所業、だが、その瞳に狂気など宿っている気配はない。


もう、狂いきってる、何年生きてきたか知らないが、その長い年月は精神を狂わせるには十分すぎるというのに、その狂気さえも支配して見せた魔女。


この人は絶対に俺を裏切らないだろう、世界だって壊して見せるだろう。


だが、それでも俺はこの人を殺す。


「───俺は諦めません」


「───そっか、うん、シオンも成長したね。

それじゃあ、ここからは取引といこっか」


少し残念そうな顔をしたあと、すぐにぱっと笑顔になる。


「さっきも言った通り、これ以上私は手を出さないけど、その死体と『トマラクス』は欲しいんだよね。

でも、シオンと戦って勝てるような手駒は用意してないから取引しよう?

シオンがそれを渡してくれるなら、今抑えつけている抑止力を誤魔化してあげる」


やはり、あれで抑止力は働いていたのか。


抑止力から送られてきた使者を倒すことはさほど難しい事じゃない。


だが、俺にも限界がある、それに『クトレリフ』で奴らを消滅させるということは世界を消滅させると同義だ。


それに、『クトレリフ』を使えば使う程、逃げ場が無くなってしまう。


「分かりました」


「うん、約束通り、それじゃあね、シオン、愛してるよ」


俺は何も言わない……言えない。


姫君の死体と『トマラクス』を受け取る際に、そっと唇を重ねる。


「それは始末して」


「ま、待て話がっ……」


どんな優秀な治療師でも頭部が完全に破壊された状態から蘇生は不可能だろう。


俺も無駄な努力はしないし、そんな暇もない。


確かにここまで来てしまったら俺1人の力ではどうしようもない。


組織に組み込まれるのは可能な限り避けたかったが、こうなってしまったのは俺の責任でもある。


「おい、聞こえるか」


『あ、シオン! ちょっと、いまどうなってるのよ!?』


「話は後だ、それより、頭領と連絡を取らせてくれ」


まだ、手がないわけじゃない、開戦は止められなくとも戦争そのものはまだ止められる。


絶対に届いて見せる、そして必ず……















『手遅れです、先ほどサンスクリットは親善大使を殺され、その仇討として宣戦布告を申し出ました』


「戦場は何処になる?」


『サンスクリット領とテーヴァ領の間にある、バルト海域になると思われます』


海上戦か……ここにきて犠牲なしで済ませようという考えが甘いか。


『何か考えがおありのようですが?』


「俺が戦場で派手に暴れる、そこからはあんたたちに任せたい」


『──そういうことですか、分かりました。

今、打てる手としては最善手でしょう』


これで下準備は終わり、後は戦争が始まってからだ。


迷うな、躊躇うな、俺は必ずあの人に届くんだ。


「ねぇ、シオン、いったいどういうことなの?」


あんなことがあった手前、多少警戒が入るのは仕方ないが少なくともこいつとキュロは違うはずだ。


こいつの記憶は見たが、変なところはなかったし、隠蔽されている形跡もない。


そして、俺が何より憎んでいると言っていいあの研究の被験者を使うとは考えずらい。


「200年前と同じことをやるだけだ。

そして、俺が戦場で『終の魔女』の名を借りて無理矢理休戦させる」


「そっか! それなら戦争を続けてるわけにはいかなわよね。

あ、でも、どうして、『デュナミス』の手を借りる必要があるのよ?」


───こいつの察しの悪さには苛々させられるが、これでも多少役に立つのだから、一言言ってやりたい衝動を飲み込み説明してやる。


「噂を広めるためだ、俺が戦場でアピールするだけでは、効果が薄い。

それを補うために、手を組むんだ」


「成程……ねぇ、ところで、どうしてキュロはあんなにしょんぼりしてるの?」


いつも通りの無表情、俺にはそんな感情は読み取れないが、あれだけ懐かれていたんだ。


僅かな表情の変化で見分けることができるんだろう。


「落ち込んでいるかは分からないが、心当たりがあるとすれば躾をやってお前から距離を取らされたからだろうな」


合流してまず、行ったのが躾という名の教育。


ところ構わず、襲うわ、俺の話が聞こえない程夢中になるのは後々困る。


俺の為にもキュロの為にも、早めに改善しておくことにこしたことはないだろう。


「でも、ちょっと可哀想じゃない?

別に、そこまで徹底しなくても……」


呂律が回らなくなるまで犯されて、まだ、気を使う余裕があるなんて、自分の都合の悪い記憶を忘れるようにできているのか?


「お前がそう言うなら俺は構わないが、その時は責任を取ってキュロを貰ってもらうぞ」


「はぁ!? どうしてそうなるのよ!?」


「緊急時に、以前のようなことになったら話にならない。

失敗しただけならともかく、作戦に組み込んでいた時、行動できなかったじゃ済まされないんだ。

それならいっそ、最初から戦力として除外していた方がましだ」


「ちょっと、そんな言い方しなくてもいいでしょ!

キュロだってちょっと魔が差しただけじゃない!」


お前は本当にどうしてほしいんだ?


そもそも、常識を教えろと言ったのはお前だぞ。


これはいっそ、本気でキュロに落とさせるかべきか?


いや、もう落とされていると見るべきか?


「つまり、お前はキュロに抱かれてもいいと取っていいのか?」


「───っ!?」


その言葉にすぐさま反応するキュロ、無表情だが相当期待しているんだろう。


それにしても、感情が戻ったばかりだというのにここまで入れ込むとは、何がそこまで気に入ったんだ?


「そ、そういう訳じゃないわよ!

ただ、キュロの扱いが酷いって言いたいだけよ!」


「誤解しているようだが、俺の言っていることはキュロも納得している。

さっきも言ったが、キュロが落ち込んでいるのはお前から距離を取っている所為だ。

つまり、お前が大人しく抱かれていれば何の問題もない」


「いや、でも、それは……、ほら、私だってまだ嫁入り前だし簡単に体を許すわけにはいかないし……」


「そんなものキュロに貰ってもらえば問題ないな。

金が必要なら俺が面倒を見てやるから安心しろ」


「だ・か・ら! 私はノーマルって言ってるでしょが!」


「──っち、面倒な奴だな、結局お前はどうしたいんだ?

キュロの機嫌を取りたいなら体を差し出せばいいし、体が大事ならキュロのことは放っておけ」


「~~~~~~~っ、分かったわよ! 好きにすればいいじゃない! 

そのかわり、時と場所は選びなさいよ!

それと、たまによ! 毎日とは───」


「だそうだ、キュロ、やっていいぞ」


「ん!」


「───言ってえええええええ、ちょっと、時と場所は選べって言ったばっかりぃぃいいいいいい!」


「すぐに行動するわけでもない、部屋の中で誰が来るわけでもない、時と場所は選べているな」


「それは、あんたの都合でしょうがぁぁああああ!」


そう言っている間にも次々と服を剥かれ、性感帯を刺激され嬌声を漏らし始める。


「キュロ、これから忙しくなる、不満を残すなよ」


「いただきます」


「ちょ、あんたなにいって……」


これまで、散々な目に遭ったことが記憶によみがえり顔を青くする。


だが、時すでに遅し、扉は閉じられ、喘ぎ声だけが部屋にこだまし続けた。

ココカイ?(((*´Д)ノ*ノ▽ノ)ア、ダメ・・・

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