始まり
命からがら逃げたしたと思えば、致死率100%の死の森でした、ちゃんちゃん。
───納得できるかあああああああ
なに、私が何か悪いことした?
気付いたら、歩いているだけで死亡フラグ乱立する場所にいたなんて、何の罰ゲームよ!
しかも、いろいろアウトな幼女で最凶の魔女と、ロリコンのイケメンとかもうわけ分かんないわよ!
「今日はもう遅いし、泊まっていきなよ。
たまには、シオン以外の人がいるってのも楽しいしね」
それは、新手の拷問を試そうっていう魂胆でしょうか?
「あの、心遣いはありがたいんですけど、私急いでるんでお暇させてもらいたいな、なんて思ってるんですけど」
「ん、それはいいけど、夜の『アインナッシュ』は危ないよ?
シオンでも生きて抜けられるか分からないくらいには危ないね」
「すみません、泊めてください」
「うん、シオンの手料理は絶品だから楽しみにしててね」
イケメンで強くて、料理もできるとは、これでこの性格じゃなかったら優良物件なのに。
「この部屋を使え」
「分かった、それと、ご飯美味しかったわよ。
お休みなさい」
ふぅ、さて
「師匠、入ります」
「うふふ、どうしたの、今日は何時にもまして機嫌が悪そうだね」
「どういうつもりですか?」
「さぁ、どういうつもりなんだろうね?」
こんな外見をしてても、中身を数百年を生きた魔女、一筋縄でいかないことはこの数年で身に染みている。
「あの女を撒き餌に餌を呼び込むつもりなんですか?」
「ん~、それも、あるかな。
『アインナッシュ』もお腹すかせてるだろうしね。
でも、そんな理由なら、こんなことしなくてもシオンに頼んじゃえばそれで事足りるよね」
そうだ、そんな理由なら俺の力だけで、解決する。
だが、そうだとしたら、この魔女はいったい何を企んでいる?
「うふふ、そんなに怖い顔しないでよ。
せっかくの綺麗な顔が台無しだよ」
「師匠が、茶化さなければそんなこと気にしなくて済むんですけどね」
「ぶ~、本当にシオンは堅いなぁ。
もう少し、楽しんで生きようよ」
「そうやって、師匠に利用されるのはこりごりです」
「それは、残念。
シオンって変に頭がいいから苦労するんだよね。
まぁ、そこもシオンの魅力の1つなんだけど」
「師匠には死にかけのところを助けてもらって感謝しています。
しかし、悪戯が過ぎるところは直してもらいたいんですが」
「無理、だって、シオンと遊ぶの楽しいもん」
そこは『と』ではなく『で』の間違いだな。
「それじゃあ、師匠命令、エルナを王都まで護衛してきて」
「──いま、なんと言いました?」
「エルナを王都まで護衛してきてって言ったの。
もう、10年位、外に出てないんだし、そろそろ、外の世界に行きたいでしょ?」
「本当に何を企んでいるんですか……」
ここで保護されていらい、俺は『アインナッシュ』から出たことがない。
出ようと思ったこともないが、そう思ったとしても絶対にそれは叶わないだろうと思っていた。
この魔女が、自分の物をそう簡単に野放しにするなんて考えられない。
「半分はさっき言った理由だよ。
たまには、気分転換しないとパンクしちゃうからね。
あぁ、家のことは気にしなくていいよ。
私は部屋にこもってるし、この姿なら10年は何も食べなくても大丈夫だから」
もう、半分は違うってことか……
「もう、疑り深いなぁ!
シオンにそんな目で見られちゃうのは嫌だから、本当の理由も教えてあげる」
「それが本当だったら俺は苦労していませんけどね」
「あはは、それもそうだね。
本当の理由はね、退屈だからだよ」
これは、嘘ではない。
この魔女の行動理念は全て娯楽の為にあると言っていい。
人を殺すのも生かすのも、戦争を始めるのも終わらせるのも、すべては面白いから。
「だから、アカッシクレコードに記録されていない、シオンには本当に期待しているんだよ。
シオンが、この世界にどんな影響を及ぼすか、楽しみだと思わない?」
「──出発は、明日からでいいでしょうか?」
「うん、エルナも早く行きたいだろうしね」
「それでは、失礼します」
「ん、楽しみにしてるよ、シオン」
独りでに閉じられる扉、一つの空間が閉じられた証だ。
普通に、この扉を開けたところで、あの魔女が作り出した世界に喰われて終わりだ。
それにしても、本当に久しぶりの外だ。
だからと言って、何処からか、監視されていることは間違いない。
娯楽の為、確かに一番それらしい理由だが、魔女の言葉ほど古来より信じられないものはない。
とはいえ、いまある情報が少なすぎる。
道中、あの女が持っているものについて聞くことにしよう。
「お世話になりました」
「ううん、私もシオン以外の人と話せて楽しかったよ。
それと、独りでこの森を抜けるのは大変だろうし、道中も1人じゃ危ないでしょ?
だから、シオンを連れて行っていいよ」
「え、本当ですか!?」
これが、あの極悪非道と言われた『終の魔女』?
超親切なんだけど
「うん、シオンも了承してくれたし、気を付けてね」
「はい、何から何までありがとうございます」
「また、遊びに来てね」
「是非、お礼に来ます」
ああ、やっぱり、噂なんて当てにならないわね。
見た目は変だし、ちょっと怖かったけど、根はいい人だ。
「あ、でも、1つだけ」
「なんですか?」
「シオンに色目使っちゃだめだよ。
シオンは私のものなんだから、取ろうとしちゃだめだからね」
───ええっと、もしかしてこの子病んでます?
『終の魔女』がヤンデレなんて、シオンって世界滅亡のカギを握ってるんじゃ……
いや、まて、単に独占欲が強いだけで、私の勘違いかもしれない。
「あの参考にですよ、私は絶対にそんなことしませんけど、シオンの美貌に引かれて、声を掛ける人がいたらどうなるんでしょうか?」
「う~ん、とりあえず『アインナッシュ』の苗床になってもらおうかな。
でも、それじゃあ、快楽の中で死んでいくようなものだし、生やさしいかな?
だって、私のシオンを取ろうとするんだから、2度とそんな輩が出ないようにもっと見せつけないといけないよね?」
はい、ヤンデレちゃんでした!
いやいやいやいやいや、なに、それ、死ぬまで犯されるってこと?
え、それ以上に残酷な事を、まだ思いつけるの?
無理無理無理無理、例えイケメンで強くて、料理ができても、病んでる『終の魔女』が後ろにいる男なんて絶対無理!
「あ、でも、エルナだったらいいよ」
「え?」
「エルナ、可愛いし、私も楽しめそうだしね」
幼女でМでヤンデレでバイとか、1人でいくつ属性もってるの?
幼女でМでヤンデレでバイとか、もう、ホラーだよ!
幽霊だって素足で逃げだすよ!
「あの、私はノーマルなので……」
「そっか、でも、その気になったらいつでも言ってきてね。
いつでも待ってるから?」
笑顔が怖い、いや、目隠しで目が隠れているから口元でしかわからないけど、これ以上怖い笑顔なんて絶対にこの世に存在しない!
「し、シオン、そろそろ行きましょう」
「ああ、それでは、行ってきます」
「いってらっしゃい、気を付けてね」
「あは、本当に楽しみだなぁ」
いろいろ伏線張りまくってますが、上手く回収できるか不安です……
ヤンデレ最強魔女の出番はいったんここまで、今後は裏方に回ります。
こんなのが表に出たら物語が成立しないんですよね……
次回は再びシオンの毒舌が光ります。
それではまた次回(。・ω・。)ノ~☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'バイバイ☆