百合
「────くすん」
「ん?」
悲しみに明け暮れる私を慰めるように、頭をなでる、キュロ。
分かってるわよ、この子に悪気なんてないことは、ずっと、感情が死んでいて、道具みたいな扱いを受けてつらい思いをしたってことも。
だから、シオンも可能な限り大切にしてるし甘やかしてるんだろうし、そりゃ、私だって可能であれば、もっと甘やかしてあげたいわよ?
でもね、いきなり、ディープキスはないでしょ!?
シオンは気を利かせたつもりか、姫様を引っ張って部屋から出てくし……
っていうか、あんた一国の姫に対してどんな扱いしてるのよ。
そんなことはさておき、シオン達が部屋から出て行ってから、すでに4時間が経過しそうになっている。
その間、首筋や、耳を子犬がじゃれつくように舐められ、キスも数えきれないほどに。
最初は頑張って口を閉じて、舌の侵入は拒んでいたんだけど、拙いながらもしつこい愛撫に私の首筋や耳は徐々に開発され、理性は溶け、気付いた時は時すでに遅く、小さい舌を受け入れ、あろうことか、自分からから絡めあってしまった……
名誉の為に言っておくけど、私だって年頃の女の子よ?
そりゃ、性感帯を刺激され続ければ、体は火照るし、変な気分にだってなる。
穴があったら入りたい程に恥ずかしいけど、一回り小さい女の子に、少しイかされてしまった……
仕方ないじゃない! さっきも言ったけど私は年頃なのよ!?
それに、その……小さい女の子に舌を絡め、体を開発されていく背徳感に不覚にも興奮してしちゃったのよ……
理性が戻った時には、泣きたくなるわよぉぉぉぉ!!
「ん、ぺろ」
滲む涙を舐めとられる、この子なりに慰めようとしてくれてるらしい。
小さい女の子に慰められる私、駄目だ、このまま優しくされたら、ずるずるいってしまいそうな気がする。
そうよ、この子は常識を知らない、きっと、さっきのあれも、好意を示したかっただけで、加減を知らないから、あんなことになったのよ!
「ありがとう、もういいよ」
「ん」
「あのね、キスは好きな人にしかしちゃ駄目なの。
いい? 感謝の気持ちを示すならさっきのクッキーを上げるだけで十分なの」
「好きな人」
「いや、うん、あのね『好きな人』にもいろいろ意味があって……」
「面倒」
「いや、ちょ、まっ、んぐうっ……!?」
うわぁぁぁぁぁん!!
どうして、こうなるのよおおおお!!
「なんだ、まだ、やってたのか……?」
いやぁぁぁぁぁぁ!!
脱がさないで! 変なとこ触らないで!
「キュロ、やりすぎるなよ?
そいつはお前と違って普通の体力なんだからな」
待って、お願いだから、この子を止めてええええぇぇぇ!!
「シオンの馬鹿ああああああああ!!」
「叫ぶな、他の客に迷惑がかかるだろうが」
「あんた、分かってんの!?
私はまだ乙女なのよ!? 純潔なのよ!? 処女なのよ!?
それなのに、10時間以上放置するってどういうことよ!?」
純潔だけは死守したけど、それ以外のところはもう滅茶苦茶よ!?
素っ裸に剥かれるし、私の弱点を見つけられて、しつこく攻められて、頭の中ぐちゃぐちゃだったし、意識朦朧としてた時に恥ずかしいこと言っちゃった気がするし!
「ああ、分かった分かった、いくらだ?」
「あんた馬鹿にしてんの!?」
「黙りなさい、キュロちゃんが起きるでしょう」
キュロに膝枕をしていて、御満悦そうなお姫様。
私は被害者なのに、理不尽だ……
「あ……ごめんなさい……」
そして加害者である、キュロは、私を滅茶苦茶にした後、満足して眠りについたのでした。
できれば、もう、目覚めないでほしい。
これから、シオンと行動することになるってことは必然的にこの子とも……
「いったい何が不満なんだ?
キュロはお前が望むならある程度の事ならやるだろうし、金なら俺が融通してやるし、誰が見ても将来有望だぞ?
容姿が良く、金もある、それにお前には優しい、お前の理想通りだ」
「私はノーマルなのよ!
ロリコンのあんたと一緒にするな!」
「諦めろ、お前が俺と一緒に来るならキュロはお前を離さないだろうし、逃げたところで、どこまでも追っていくぞ」
「そ、そこは、あんたがどうにかしなさいよ」
「悪いが、俺は可能な限りこいつの思うとおりにさせてやるつもりだ。
俺としては、さっさとお前と結婚でもして、安全なところでおとなしくしてほしいんだ」
「け、結婚ってあんた馬鹿なの!?」
性別とか年齢とか、誰が見てもアウトじゃない!
「そうね、そこにだけは同意するわ。
キュロちゃんは私の愛玩動物にするのよ」
「ついでに、そこの馬鹿女も飼ってやればいいだろ」
「嫌よ、美しくないもの」
こ…こいつら、人のことをペット扱いして、挙句の果てには、美しない?
あんたら、一回生まれ変わって、一から常識学んできなさいよ!
「と・に・か・く! 私は男がいいの!
いくら可愛くても、優しくても、お金持ちでも、女の子は駄目なのよ!」
「で、俺にどうしろと?」
「私とキュロを2人きりにしないこと、私が襲われそうになったら助ける事、キュロに真っ当な常識を教える事の3つよ」
また、襲われたらたまったもんじゃない。
ただでさえ、今回でいくつも開発されたのに、次は冗談抜きで純潔奪われる。
「いいのか? 一応お前は被害者なんだから、賠償として何かあるなら可能な限りならなんとかしてやるぞ」
「いいわよ、その子だって、これまでいっぱいつらい思いをしてきたんだから。
────それに、あの時、私はこの子を助けなかったんだから」
たぶん、万人が同じ選択をするだろうけど、それで罪悪感を覚えないというの間違ってる。
私は、戦争をなくすために、この子を犠牲にしようとしたものなんだから。
だから、今回はその贖罪ということでなかったことにする。
というか、私の記憶から消し去って欲しい……
「あなたも随分なお人好しね。
お人好し同士、お似合いなんじゃない?」
「同族嫌悪という言葉があるんだよ。
それに、俺は馬鹿は嫌いなんだ」
「なっ、私だってあんたみたいなロリコンはお断りよ!」
「黙りなさい、これで2回目よ?
こんな簡単な事も出来ないなんて、馬鹿だと思われても仕方ないわよ」
ぐぎぎぎぎ、なんで私が怒られてるのよ!
でも、一応これでも相手は姫様なわけで無礼を働くわけには……
「真実ははっきりしてやった方が後々、本人の為だぞ」
「そうね、あなたは馬鹿だわ」
「いい加減にしろおおぉぉ!
あんた達、分かってんの!? 私被害者よ、被害者!!
あんた達に慰めてもらえるなんて期待してないけど、少しは気を遣いなさいよ!」
「何を言ってるのかしら?
キュロちゃんに抱かれるなんて、ご褒美でしょう?
それに、聞く限り随分乱れていたそうじゃない」
「──うっ、それは、それよ!
あんただって、一応女なんだから、分かるでしょ!?」
「まったく、きゃんきゃんと五月蠅い雌犬ね。
シオン、きちんと躾けておきなさい」
こ・こいつ……こんなのがお姫様だなんて、世の中間違ってるわよ!
お姫様なら御淑やかにしときなさいよ!
「それにしてもいいのか?」
「───なにがよ?」
「一応、あれでも一国の姫だぞ?
俺は返り討ちにできるから問題ないが、お前は無理だろ?」
───あ、やばい、急に熱が冷めていく……
「そうね、普通なら不敬罪で私の一存でどうだってできるわ」
「え、え~と、なかったことにして欲しいな、なんて思ったりしてるんですが」
「無理ね」
「ですよね……」
あれ、私終わった?
「安心しろ、条件さえ飲めば俺がどうにかしてやる」
救いの神がここにいた……わけないわよね……
あの、極悪非道なシオンが無償で助けてくれるわけない。
そして、その条件もだいたい予想がついてしまう。
というか、私嵌められた?
「この私を利用するなんて、いい度胸してるわね。
安心しなさい、別にどうするつもりないわ、むしろ堅苦しい口調は鬱陶しいだけだからそのままでいいわよ」
「───っち」
──もう、いや……
なんで、私がこんな目に……
「落ち込むのは勝手だが、休めるときに休んだ方がいいぞ。
どうやら、航海中に襲ってくることはないようだが、上陸してすぐに襲撃される可能性だってある。
キュロが気に入ってしまった以上、お前も守る対象だ。
以前のように足を引っ張られたらたまったもんじゃない」
そうね、助けられるのは、まだいいにしても、キュロとの戦いの時みたいに邪魔になっちゃ駄目よね。
「それじゃあ、ちょっと寝てくるわ」
「部屋の扉にそれを張り付けとけ。
大丈夫だと思うが念のためだ」
「分かった、ありがと。
それじゃ、おやすみ」
「さぁ、シオン、お手並み拝見だよ。
頑張ってね、うふふふふふ」
スリスリ(*^∇゜)(゜ロ゜;)ヒィィィィィ!!