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理の使役者  作者: ひさし
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「シオン、あんたには一度言っておかなきゃいけないと思ってたことがあるのよ」


「お前が実は見栄を張っていたってことか?

そんなこと言わなくても見ればわかる」


「同意」


なにこの子、治ってくれたのは嬉しいんだけど、シオンと同類?


私たちってほぼ初対面よね?


そして、私は見栄を張っているとかじゃなく正真正銘の美少女よ!


「って、そうじゃなくて、どうしてあんたはいちいち、喧嘩売るような真似するのよ!?」


「何のことだ?」


シオンが言うと同時に首を可愛らしく傾げる、成程、本気で分かってないようね……


「あんたが、入口で毒舌吐きまくるからでしょうが!

下に出ろとは言わないけど、もう少し態度ってものがあるでしょう!」


見なさいよ、あんたの後ろから殺意を込めて睨んでいる人たちを。


あんたのせいで私までとばっちり来てるのよ!?


「俺に説教とは随分出世したようだな?」


この子に襲われた後、時間の感覚が狂ってしまうくらい浴びせられた罵詈雑言が蘇る。


───うっ、そ、そんな目で見たってこれは社会の常識なんだから、負けないわよ!


「斬る?」


「ああ、もう、私が悪かったわよ!」


だから、その物騒なものしまいなさいよ!


私が親切で押してやってるのに、もう、あんたたちは常識を捻じ伏せながら生きていきなさいよ!


「───はぁ、ところでミトスは?」


流石に表立って『終の魔女』の名を出すわけにはいかない。


『ミトス』っていう呼称も偽名っぽいし、これで『終の魔女』だって特定されることはないわよね。


「知らん、目が覚めたら消えていた」


「──そう」


正直、ほっとしたわ。


あんなのが近くにいるなんて耐えられない。


傍にいるだけで発狂しそうになるわ。


「それで、お前の方はどうなった?」


「それついての話があるからついてきて。

頭領から話があるそうよ」
















「君が『終の魔女』の弟子のシオン君か」


意外と若いな、もっと老いた奴が出てくるかと思ったが……


だが、この組織のトップというだけあって一筋縄というわけにはいきそうにないな。


「前置きはいい、さっさと話を進めろ」


「よろしい、まずは、君たちが届けてくれた『スラント』だが、すでに王国へと返還している。

これで、過激派も少しは収まるだろうが、帝国が関与していないとは確定できない。

未だ、余談を許さない状況です」


「───奴らの足取りはつかめているのか?」


「残念ながら、構成員を捕まえても、吐かせる前に死んでしまう。

何らかの魔法が掛けられているみたいだが、我等ではそれをどうすることもできない」


「未だ、手がかりの一つもなしか、これでよく戦争を止めるなんて言えたものだな」


「───っ、シオン!」


「いいんですよ、耳が痛い限りですが事実です。

我等では『終の魔女』には対抗できない。

そこで、シオン君、君に協力を仰ぎたい」


「断る、俺がこの組織に着くメリットがない」


「我々が君の行動を全面的に支持するとしてもかな?」


「足手まといはいらない」


「───そうですか、エルナ、彼を送って上げなさい」
















「ねぇ、シオン、どうしても駄目なの?」


「お前を態々守って来たのは師匠の命令ということもあるが、お前がいれば話が通りやすいからだ。

その必要がなくなった今、慣れ合うつもりはない」


ここまで、はっきりとした拒絶って初めてかも……


確かに、私たちが何をやってもシオンの足手まといにしかならないのは確か。


それを黙って見ているだけしかできないなんて……


「お前はお前にできる事をやれ。

遠からず、あいつらは俺が潰す」


「私"達"」


この子、意外と度胸あるわね。


シオンもこの子にはなんだか甘いような気がするし、シオンってやっぱりロリコンなんじゃ……


「お前はお前のやることをやれ。

これは俺がやることだ」


「私"達"」


無表情だけど、心なしか怒っているような気がするわね。


シオンもバツが悪そうな顔してるし、この子を上手く操作できればシオンに頭を下げさせられるかも……















「行き先は?」


「帝国に向かう。

今の状況があいつらのシナリオ通りか分からないが、確実に帝国の『ラトクス』が必要なはずだ。

後手に回るのは得策じゃないが、今俺たちが取れる手はそれしかない」


「よかったの?」


「こっちが一方的に利用するんだ。

態々、手を組んでやる必要はない」


「納得」


あそこには幾つか盗聴器を仕掛けてきた。


これである程度なら情報も手に入る、いざとなれば、船で渡したあれを座標代わりに召喚して聞きだせばいい。


「とりあえず、港だな。

待ち時間が短ければいいんだが」















「後4時間」


流石に何もないここで4時間はつらいな。


「観光にでも行くか」


外に出てきたのも、久しぶり、それにこいつも、殺伐とした時間ばかり送ってきたわけだ。


たまには、何の目的もなくぶらつくのも悪くないか。


「お金は?」


「子供がそんな心配しなくていい」


「美味しいもの食べたい」


「それじゃあ、行くか」


『エリクシル』の目的、師匠の思惑、世界の動向、いろいろと考えることは多いが、たまにはこういう息抜きも必要だろう。












「おかわり」


「お前のその体の何処にそれだけ入るんだ?」


高く積み上げられていく皿、決して、給仕がサボっているというわけではなく、皿が片づけられるスピードより、料理が運ばれ、注文を取っている時間の方が早い。


既に10人前は食べているんじゃないだろうか?


まぁ、いままでは、まともな扱いをされていなかった反動だろうが、それにしてもこれは食いすぎだな。


「食べないの?」


「俺はもう十分だ、お前は気にせず食ってろ」


「了解、おかわり」


まだ食うか……


この店ならいくら食べたところで懐は痛まないとはいえ、今後は店を選ぶ必要があるな。


高級店でこの量は、流石にもたないだろう……


「美味いか?」


口に物を入れて話すのは、行儀が悪いと知っているのか首を縦に振り、変わらず食べ続ける。


体の方はもういいとはいえ、身なりも最低限は整えないとな。


「御馳走様」


「やっと、食い終ったか」


「腹八分目」


「───そうか……」


まだ、時間はある、適当な店で適当に見繕うか。













「美味しそう……」


「お前はどれだけ食い意地が張ってるんだ」


あれだけ、食べた後だというのに、通行人が持っていたアイスに熱視線が注がれている。


「えっと、た、食べる?」


「ありがとう」


「悪いな、これの代金は払わせてくれ」


「いいわよ、大したものじゃないし。

それにしてもこの子、可愛いわね、妹さん?」


「似たようなものだ」


「ねぇ、あなたお名前は?」


「キュロ」


「そう、キュロちゃんは可愛いんだからもっとおめかししないと駄目よ。

それじゃあね、縁があったらまた会いましょう」


「あんた、時間あるか?」


「ないわけじゃないけど、そんな子連れてナンパ?」


「こいつの服を見繕って欲しいんだよ。

男の俺が選ぶより、あんたが選んだ方がいいだろう?」


「ん~、そういうことなら、付き合ってあげる。

早速行きましょうか」


「姫様、ようやく見つけましたぞ!」


"君子危うきに近寄らず"とはよく言ったものだな。


「悪い、この話はなかったことにしてくれ。

行くぞ、キュロ」


「御馳走様」


「ちょっと、待ちなさいよ。

あんた、変わり身速すぎない?

女の子が誘拐されようとしてるんだから、助けようとしなさいよ」


「姫様なら、おとなしく城の中に籠ってろ。

ちょうど、お迎えも来たことだし潮時だ」


「嫌よ、あんな窮屈なところにいつまでも閉じ込められた生活なんてもうこりごりなの。

刺激がない人生なんて退屈すぎて、死んじゃうわ」


「勝手に死んでろ、俺の関与しないところでな」


「そっちが、あんたの素ってわけね。

これでも、私は一国の姫なのよ、その私にそんな口を利いてもいいと思ってるの?

不敬罪で罰することだってできるのよ」


「おい、そこの奴、早くこれを引き取ってくれ」


「ご協力感謝する」


「命令よ、この生意気な男の首を跳ねなさい」


「は、はぁ……」


「我儘な姫もいたものだな、あんたには同情するよ」


「分かってもらえますか……」


涙を流しながら頷ほど、苦労してきたらしいな


このじゃじゃ馬姫は、人の苦労も知らないで勝手に抜け出してるんだろうし、これからもそうなんだろう。


────キィン


「で、これは何のつもりだ?」


「御命令ですので」


こいつはこいつで、なかなかの食わせ物だな。


───パキン


「まだ、やるつもりなら、次はお前の首をへし折るぞ」


「姫様、もう代わりの剣がございませんので、一度城へ戻りましょう」


「ふぅん、あなた、意外とやるのね」


「一国の姫にそう言ってもらえて光栄だ。

じゃあな、もう2度会うこともないだろう」


「待ちなさい、まだ、アイスのお代を貰ってないわよね」


「───いくらだ?」


「500万よ」


「そんな見え透いた嘘に誰が騙されるんだ?

三流の詐欺師ですら、もっと上手くやるぞ」


「あら、でも、それを嘘と証明できるものはあるのかしら。

爺や、あれは500万よね」


「そうでございます」


「───何が目的だ」


「そこの誘拐犯を撃退しなさい」


「姫様!?」


「悪いな、恨むならこの性格がひん曲がった姫様とやらを恨んでくれ」


「待て待て、私に手を挙げる事がどれほどの大罪か……」


「見事なものね、爺やはこの私の側近になれるほどの腕なのに」


世の中の姫様に憧れている奴らにこれを見せたら、失神するじゃないか?


どうやったら、純粋培養でこんなに捻くれるんだ?


まぁ、もう、俺には関係ないか。


「待ちなさい、どこに行こうとしてるのかしら?」


「お前の足が届かないところだな」


「そう、可哀想な爺や、身を挺して私を守ろうとしてくれたのね。

敵は必ず取ってあげるわ」


「最悪だな、お前」


「キュロちゃんの服を身に行くんでしょう?

女を待たせる男なんて最低よ」



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