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「知ってんだよー俺。」
和也に目をやらずに、窓から外を見て言った。
返事はない。
「・・・夏葵、そいつのこと好きなんだろ」
沈黙の中、気持ちを抑えきれずに言葉に出てしまった。
ほんとはこんなこと聞きたいわけじゃないのに。
「・・・」
背中に暖かい感触がした。
和也が後ろから俺を強く抱きしめている。
相手の鼓動が、体を重ねてるときのように早く感じる。
後ろで小さな深呼吸が聞こえた。
「・・・安亮。ごめん」
口を開いたかと思ったら、その言葉だった。
「僕は安亮が好きだ。・・・でも、夏葵も好きなんだ・・・っ」
そういわれて胸が苦しかった。
でも、思ってた痛みよりそこまでつらくはなかった。
それも殆ど気付いてはいたからだと思う。
「うん。たぶん俺、薄々気付いてたよ。そいつが和也の心ん中にいること。」
和也の強く抱きしめていた腕の力がかすかに緩んだ。
それを見計らって、俺は逆に和也を真正面から抱きしめる。
和也を愛してると、抱きしめることで伝えようとするように。
ほんとは優しく抱きしめたいけど今は無理だ。
それじゃあ俺の気持ちも何も、届かない気がして。
「和也。俺はお前が好きだよ、愛してるよ。
お前と一緒にいられて幸せになれんなら、たとえ2番目でも
構わないと思てた。けどもう無理だ。わがままかな俺。
・・・俺だけ、見ててほしいわ・・・」
和也を思う気持ちがだんだん強くなると同時に
自分だけのものにしたい独占欲と欲求が大きくなっていく。
苦しい。
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