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「夏葵って、誰?」
「ただの仕事仲間だよ。」
和也は俺の太ももに手を置いた。
俺といる時も、和也は頻繁にメールをチェックしたり、
忙しそうに電話をかけたりしている。
その中に、「夏葵」というやつがいるのは知ってる。
最近までは仕事仲間だと思っていた。
仕事の夢でもみてんのかなって、そう思ってたけど、
こんなに毎日、仕事の夢なんて普通見ないよな。
「信じらんねーな。」
和也の手をどけて立ち上がってベランダにむかう。
そうでもしないと、いまにでも和也を押し倒して
めちゃくちゃにしてしまいそうだから。
「安亮。」
どんな顔して俺の名前を呼んだのかわからないけど
声がどこか、さみしく聞こえた。
俺はその声にも苛々して、冷たくあたる。
「そいつ、俺よりいいの?」
そんなのきくんじゃなかった。そう思ってももう遅い。
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