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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

友人

秘密

作者: 蒼聖石

「友人」の続きになります。そちらをご覧になってからのほうがより楽しめると思います。

「離れろよ」


あれ以来こいつは学校では購買やトイレ、色んなところについてくる。

さすがに抱きついたり……したりはないが、正直目立つからやめて欲しい。

証拠にさっきから女子達からの視線が痛い。

ここは食堂。いままで孤高だった男がこんなオタクと一緒に居るのだ。当然だ。


「いやだ」


俺の向かい側でうどん+定食セットという大ボリュームを食べる奴に言っても、頑として動かない。

そう。こいつは頑固だ。こうと決めたら絶対に曲げようとしない。

そんなところがけっこう好きだったりする。

考えたら思わず頬が緩む。が、すぐに頭を振って元に戻す。


「なんで学校でついて来るんだよ?今まではそんなことなかったろ。」


学校で交流がなかったわけではないが、あくまで

"友達のいない哀れなオタクに構ってあげる優等生"

という関係だ。そのほうが俺も楽だし、こいつのイメージにもいい。

まともに話すのは昼飯のときの屋上または学食とうちだけだ。

それが急にどこにでもついてくるし、連れてこうとするようになった。

不審に思われても仕方ない。


「浮気がいやだから」

「んなことあるかーーーーーーーーーー!」


ブッ飛んだ回答に思わず立って大声を出してしまった。食堂中の生徒の視線が俺に集まってくる。

きっと俺の顔は真っ赤だろう。俺が座ってしばらくすると、食堂らしいざわめきが戻ってきた。

恥ずかしさが落ち着いてから、声を潜めて話しかける。


「んなわけあるかよ。俺に限って」

「いやある。お前は可愛いから」


一応気は使ってるんだろう。同じく声を潜めて返してくる。

返ってきたのは反応に困る答えだったが。


「……じゃあ俺、先行ってるから」


トレーを持とうとした腕を掴まれる。

かなり力が入ってて痛い……


「5分待て。食べ終わる」

「いや、そんなで食べきれる量じゃ……」


と思っていたのだが、5分もしないでこいつは食べきってしまった。

量としては2人分なはずなんだが……

呆れながら感心してると俺の分もトレーに乗せて立ち上がる。


「行くぞ」


こんな優しさがちょっと嬉しい。

頬の緩みを俯くことで垂れてくる髪で隠しながら後をついていく。

ダメだ。完全にこいつにペースを握られてる。


「あの…!」


教室へ向かう廊下の途中、階段から現れた女生徒が声をかけてくる。多分、同学年。もちろんこいつにだ。

やり方は奇襲に近いけどこんな人が多い時間に直接声をかけるなんて、大人しそうな見た目の割り大胆だ。

用件はもはや察する必要すらない。先に戻ってると言ってその場を離れようとするとまた腕を掴まれた。


「お前も来い」

「はあ!?」


馬鹿言うなよ。ああほら、その子も俺を睨んでるし。

視線だけで死んでしまいそうだ。

直接声には出さずに目配せだけで伝えようとするけど、知ったことかと俺の耳に口を寄せてくる。


「ついてこないとこの前の、ここでやるぞ」

「〜〜〜〜〜!」


耳まで真っ赤に染まるぐらいの、恥ずかしい脅迫だった。

これは仕方ない。ついていくしか選択肢が残ってなかった。

逃げ出しても2秒後には捕まってる自信がある。

女生徒には心の中で謝りながら、こいつの陰に隠れるように同行する。

着いたのは屋上、昇降口の日陰。お決まりの告白スポットだ。

そして俺は壁の陰に隠れる。その必要はあまりないけど、やっぱり告白は2人きりで行われるべきだ。


「あの!わたしとお付き合いを」

「すまないが断らせてくれ」


早っ!断るにしても最後まで言わせてやれよ!

今までもこんな風に断ってきたのか。冷たい奴だ。

ホントはもっと優しくできるだろうに。不器用め。


「な、何がダメなんですか!?言ってくれればわたし」

「変わるのか?本当じゃない、作りだした自分を好きになってもらいたいのか?」

「そ、それは」

「あんたは…あんた達は俺をわかってない」


それだけ言うとあいつは昇降口の方へ戻ってくる。

女生徒は俯いて泣きだしそうだ。ちょっと言い過ぎなんじゃないか…。

だけど女生徒は打って変わって睨むような視線で言い返した。


「わかるために付き合うんじゃないですか!間違ってますか!?」

「間違ってない。でも、そのために自分を作りだして相手を騙すのは間違ってる」


この一言で女生徒は堰を切ったように泣き出してしまった。

あいつがそんなことを思ってるなんてまったく知らなかった。

可哀想だ、と俺が言うのはダメな気がした。だから目で訴えた。

だけどあいつは、知ったことかと視線を外して俺を引っ張っていく。

怒ってるな。よほど一方的な好意が嫌いらしい。

もうすぐ昼休みも終わるし、そろそろ手を離してもらわないと。

手を外しにかかる。しかし外そうとすればするほど力が入っていく。


「離せよ。昼休みが終わっちまう」

「無理」

「はあ?なん……!」


壁に強く押し付けられる。どうやら階段下の物陰に連れ込まれたらしい。

ヒリヒリと痛む背中と腕の不満を訴えようとして顔を見ると何やら期待に満ちた目をしている。

この目は苦手だ。抗いを許してくれない。諦めるしかない。

でも俺からいくのは悔しいからシャツの襟を掴んで無理やり頭を引き下ろす。

そして軽く口づけた。


「これで……我慢しろ…」


赤くなった顔をそらして隠す。あいつは俺を抱き寄せて小さくありがとうと言った




影に入って。陰に隠れて。髪で隠して。知らないことを知って。

秘密にしたり秘密を知ったり……これってなんか

……いいな

短編シリーズで続いていきます。

終わりは未定です。

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