【短編完結】悪役令嬢が二人? そんなの聞いてない ハッピーエンドのヒロインの座を巡って今日も対決
「あんたが行きなさいよ。ヒロインのイベントでしょ」
「いやよ。そっちこそ、悪役令嬢としての見せ場じゃない」
虚無の空間で、二人の少女が向かい合っていた。
豪華なドレスを纏いながら、その瞳には光がない。
「いい? どっちかが動かないと、物語は永遠に進まないのよ。このまま時が止まったセーブデータの狭間で、お互い頭がおかしくなるまで続けるつもり?」
「私は平気よ。……何周だって、繰り返してきたんだから」
片方の少女が、冷淡に言い放つ。
「でも、わかってるでしょ? プレイヤーがボタンを押すのと、私たちが自発的に地獄へ進むのは訳が違うわ。これ以上、虚無を繰り返してどうするのよ」
「だから、協力しろって言うの? でも知ってるでしょ。ハッピーエンドの枠は一つ。ヒロインの椅子は、たった一つしかないのよ」
「だから、私は――」
その瞬間、世界の端からノイズが走り、空間が溶け始めた。
シューーー……
「はぁ……また数日前まで戻されるのね。今度は……あなたと会うルートじゃないかもしれないわね」
「え……? 待って。別に、記憶が消える訳じゃ……」
不安に揺れる声を、システム音が無慈悲にかき消す。
「ちょっと……馬鹿な真似はよしてよね。ヒロインと悪役令嬢がいなきゃ、物語は止まったまま動かなくなるんだから……」
シューーーーーン!!
ホワイトアウトの向こう側。
カチリ、とボタンが押され、物語はまた「数日前」のプロローグへと巻き戻っていく。
(完)




