ハッピーエンドでしょ?
「……カナ、愛してる」
──────────
……うーん。
誰かに名前を呼ばれた気がして、私はゆっくりと目を覚ました。
胸の奥が、じんわりと温かい。
(……ルキ?)
夢の中で、確かに――
あの人に、愛してるって言われた気がした。
「お嬢様、ほら早く起きてください!
今日はルキ様がいらっしゃるんですよ。
念入りに支度しないといけませんから!」
マリアの声に現実へ引き戻される。
「そんな特別な日だったっけ……」
ぼんやりしたまま鏡の前に立つと、そこにはいつもより少し大人びた私が映っていた。
「……可愛い」
思わず呟くと、マリアが誇らしげに胸を張る。
「当然です。
ルキ様が“世界で一番”って思うように仕上げましたから」
「世界で一番って……」
照れ笑いしながらも、胸の奥がきゅっと鳴る。
◇ ◇ ◇
そして、ルキが来た。
扉の向こうから現れた瞬間、
時間が止まったみたいに息を忘れる。
(……ずるい)
白と金の装いに、凛とした立ち姿。
でも、視線が合うと少しだけ柔らかくなるその表情。
「……そんなに見られると、落ち着かないんだけど」
「だって……
かっこよすぎるんだもん」
小さくそう言うと、ルキは耳まで赤くして目を逸らした。
「……今日は、その……」
言いかけて、言葉を飲み込むルキ。
「散歩、行かないか」
◇ ◇ ◇
ーーーバラ園
花の香りに包まれながら歩く時間が、なぜか少しだけ切ない。
(何かある……)
そう思った瞬間、ルキが立ち止まった。
ぶつかりそうになった私を、
無意識に支えるように手を伸ばしてから――
ゆっくり、片膝をつく。
「……カナ」
名前を呼ばれるだけで、胸が高鳴る。
小さなケースが開かれ、指輪が光を受けてきらりと瞬いた。
「これから先の時間を、全部一緒に生きたい」
「嬉しい時も、不安な時も、
泣きたい夜も……全部」
「……俺の隣にいてほしい」
「……結婚してほしい」
目頭が熱くなる。
私はケースを受け取り、
指輪を見つめてからルキを見る。
「……ねぇ」
「私ね、どんな世界でも
ルキに見つけてもらえるなら、怖くない」
「だから……」
そっと左手を差し出す。
「薬指に、嵌めて」
指輪が指に触れた瞬間、世界が優しく色づいた気がした。
「大好き……ルキ」
「好きなんて言葉じゃ足りないくらい」
ルキは一瞬言葉を失って、
それから私を強く優しく宝物みみたいに抱きしめた。
「……カナ、愛してる」
「何度逆行しても、何度世界が変わっても」
「必ず、お前を見つける」
胸に顔を埋めながら、私は頷く。
「……うん」
「ずっと一緒にいようね」
そっと顎に触れる指。
視線が絡み、自然と距離が縮まる。
唇が重なった瞬間、
胸いっぱいに“ここが帰る場所だ”って思えた。
――この先も、この人と。
Fin




