ルキの秘めた思い
◆ルキside◇◆
ある日、空から面白れえ女が落ちてきた。
カナと初めて会話したのを今でも鮮明に覚えている。
あの時、最初は敵意むき出しだったよな……クスッ。
まさか同じ転生組だとは思わなかったけど、同郷の同志に会えたような不思議な感覚があった。
偶然が重なり、カナと過ごす時間が増えるたびに、自然と追ってて目が離せなくなっていった。
いやいや、この感情は只の同郷愛だ……。
けして恋愛感情ではない……。
そう自分に言い聞かせながらも、いつからか目で追っている自分に気づいた。
◇ ◇ ◇
「では、その件について――私が第三者として調査致しましょう」
「今まで身分を隠していましたが……実は私は隣国の第四王子です。
ルキ・ソーエンと申します」
「カナ様とは親しい友人であり、私は彼女の身の潔白を信じています。
国の名誉にかけて真実を調査し、皆様に公表致しましょう」
気づけば窮地のカナを助けるために飛び出していた。
カナもレイラも驚愕している。
「なぜ貴様がしゃしゃり出てくる!!」
嫉妬に狂ったようなシオンの姿に思わず笑いそうになる。
だって今、婚約破棄を宣言しといてどんな頭してんだ?
俺は奥の手を出すことにした。この世界は小説の世界だと聞いていたけれど、あくまで現実の世界であることに変わりはない。
ギャラリーから拍手喝采が巻き上がる。
まるで物語の主人公になった気分だ。
「ルキ様、心遣いありがとうございます。調査の方、よろしくお願い致します。」
カナも驚愕していたが、やっと理解したのだろう。
俺の提案を受け入れ始めた。
◇ ◇ ◇
「ちょっとルキ!!
いきなり身ばれして良かったの?」
「別に気にしてねーし!
婚約破棄されて肩身が狭いなら、俺のとこに嫁に来るか?」
冗談めかしてからかってると、カナが突然馬鹿みたいなことを言い出す。
「え、もしかして……私に惚れた?」
勢いよく飲み物を吹き出す俺を、小馬鹿にするような眼差しで見つめてくる。
そんなに見るなよ……。
「自信過剰すぎだろ??どこに惚れる要素があんだよ?」
カナのハンカチを強引に奪い、顔を近づけて照れ隠しの笑みを浮かべる。
「もしかして照れてる? 素直になりなよ?」
冗談っぽくからかっていたはずなのに、いつの間にか心臓の奥が熱くなって、鼓動が暴れ出す。
思わず両腕でカナを軽く押しつけ、壁際まで距離を詰める。
「俺をからかうとか、百年早ぇんだよ」
至近距離で見つめ合うだけで、息が詰まりそうだ。
でも、動揺を悟られたくなくて、強気を装う。
「……心臓の音、丸聞こえだぞ。お前の方が俺に惚れてんじゃねーの?」
今にも唇が触れそうな距離に、自然と引き寄せられる。
でも、ぎゅっと堪えて、両腕を離す。
「……このままキスしてほしかった?」
強気な態度を崩さないように言葉を選ぶ俺に、カナは慌てて逃げるようにその場を後にする。
背中を見送ると、胸の奥が熱くなり、自然と呟く。
――馬鹿だな、俺。
こんなにも愛おしいのに、ちっとも素直になれないなんて……。
でも、絶対に諦めねぇ。
お前は俺だけのカナだ。
誰にも渡さねぇ……。
胸の奥が甘く疼くのを感じながら、俺は小さく笑みを零した。
――次こそ、逃がさない。




