式典での逆転劇②
あっという間に、形勢は逆転した。
――前回のレイラは、用意周到で狡猾だった。
巧妙な罠で、私は完璧に追い詰めたのに……
それに比べて今回の腹黒ヒロインは……
ある意味、頭が弱くて助かったのかもしれない。
「……で、で、でも! 私が襲われたのは間違いなくカナ様が……!」
途切れ途切れで、今にも泣き崩れそうなレイラ。
その必死すぎる姿に、私は再び笑いを堪えきれなくなる。
――ああ、もう完全に詰んでるわね。
「では、その件について私が第三者として調査致しましょう」
そう言って、私とレイラの間に割って入った人物を見て、思わず息を呑んだ。
……え?ルキ?
まさか、彼がここで名乗り出るなんて思ってもみなかった。
レイラも私も一瞬言葉を失う中、シオンだけが露骨に反応する。
「なぜ貴様がしゃしゃり出てくる!!」
――あのさ。
私たちってもう婚約破棄したんだよね?
嫉妬に狂ったようにルキを睨みつけるシオンを一瞥し、ルキは淡々と、しかしはっきりと口を開いた。
「今まで身分を隠していましたが……実は私は隣国の第四王子です。ルキ・ソーエンと申します」
会場がざわめく。
「カナ様とは親しい友人であり、私は彼女の身の潔白を信じています。
国の名誉にかけて真実を調査し、皆様に公表致しましょう」
一瞬の静寂のあと――
「わぁっ!」と拍手が巻き起こった。
レイラは顔面蒼白。
シオンは完全に思考停止した顔でルキを見つめている。
「ルキ様、お心遣いありがとうございます。
調査の件、よろしくお願い致します」
私が深く頭を下げると、ルキは軽く肩をすくめた。
――これで、彼は表立って動ける。
ずさんな管理をしていた証拠なんて、すぐに出てくるはずだ。
◇ ◇ ◇
「……ねぇルキ。いきなり身分バラして大丈夫だったの?」
式典後、人気のない廊下でそう聞くと、ルキはあっけらかんとした様子で答えた。
「別に気にしてねーし。
それよりさ、婚約破棄されて肩身狭いなら、俺のとこに嫁に来るか?」
……はい?
ちょっと待って。
今、爆弾投下しなかった?
「え、もしかして……私に惚れた?」
……次の瞬間
ぶふっ!!と勢いよく飲み物を吹き出すルキ。
私は慌ててハンカチを差し出す。
「自意識過剰すぎだろ!?
どこに惚れる要素があんだよ!」
そう言いながら、私のハンカチをひったくるように奪って顔を拭くルキ。
……ねぇ。
耳、真っ赤なんだけど。
「もしかして照れてる? 素直になりなよ?」
からかうように言った、その瞬間……
ぐいっ。
両腕を掴まれ、そのまま壁に押し付けられる。
え、ちょ、近……!
さっきまでの軽い空気は消え、急に“男”の顔になるルキ。
「俺をからかうとか、百年早ぇんだよ」
……至近距離。
心臓がうるさいくらいに鳴っている。
「……心臓の音、丸聞こえだぞ。
お前の方が俺に惚れてんじゃねーの?」
今にもキスされそうな距離に、思わず目を閉じてしまった。
……でも
次の瞬間、ふっと腕が離される。
「……このままキスしてほしかった?」
満面の笑顔で言われて、カッと頬が熱くなる。
「そんなわけないでしょ!?
もう、どいてよ!!」
私は恥ずかしさをごまかすように、その場から逃げ出した。
――くそ。
あいつ、絶対わざとだ。




