表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/25

シオンの焦り


◆◇シオンside◇◆


 涙を浮かべたカナの背中が、いつまでも脳裏から離れなかった……どうして、俺たちはこんな関係になってしまったのだろう。


 胸の奥が、鈍く、痛む。


 衝動的に彼女を追いかけたが、すでに姿は見えない。

人気のない学園内をあてもなく歩く。


――そのときだった。


 視界の端に、見覚えのある男の背中が映る。

カナと“密会していた”あの男。


 思わず物陰に身を隠し、息を殺す。


 ……あいつは、カナの何なんだ?

まさか、本当に特別な関係なのか……


 男を見失わないよう、慎重に後を追う。

辿り着いたのは、裏庭の奥にある大きな樹木の前だった。


 男はふと立ち止まり、上を見上げて独り言を呟く。


――何をしている?


 次の瞬間、上から何かが落ちてきた。


 男が反射的に受け止め、二人は抱き合う形で地面を転がる。


「……っ!」


 助けようと一歩踏み出した俺は、目の前の光景に凍りついた。


 ――どうして。

どうして、あいつの腕の中にカナがいる。


 ただ助けただけだと、頭では分かっている。

それでも、二人の間に流れる空気が、耐え難く甘く感じられた。


 触れるな。

俺のカナに――触れるな。


 気がつけば、怒りに任せて二人の前に立っていた。

腕を組み、仁王立ちで。


 呆然とするカナの腕を、強く掴む。


「――っ」


 そのまま、引き剥がすように連れ出した。


「あの、シオン……痛いんだけど」


 聞こえているのに、止まれなかった。

壁に押し付け、至近距離で叫ぶ。


「あの男は、カナの何なんだ!?」


 怯えた表情に、はっとする。


――俺は、何をしている。


 拘束を解くと、カナは力が抜けたように崩れ落ちた。

震える肩。


胸が締め付けられる。


俺は、そっと彼女を抱き締めた。


「……ごめん。怖がらせてしまった」


 気づけば、俺自身の頬も濡れていた。


「ルキ様とは、本当に何もないわ」


カナは必死に、俺を見上げる。


「信じてほしい。周りの声に惑わされないで。

私も、シオンを信じるわ。

あの噂……きっとレイラ様が関わっているんでしょう?

お願い、彼女の言葉を信じないで」


 ――そうだ。

俺は、何を迷っていた。

大事なのは、噂でも世間体でもない……

カナとの未来、それだけだ。


「……約束する。俺は、カナだけを信じる」


 抱き締める力が、自然と強くなる。


「大好きよ、シオン」


「俺も……カナを愛している」


 この瞬間、確かに想いは通じ合った……

………はずだった。



   ◇ ◇ ◇



「シオン様……どうしてですか……」


 服を掴み、泣き崩れるレイラ。


「これ以上、カナを悲しませたくない。

だから……君とは距離を置く」


 言葉を選びながら、はっきりと告げた。


 レイラは、その場に崩れ落ちる。


「……ふざけないでよ!!」


豹変した声。


「何でヒロインの私が振られるの!?

あり得ない!!

だって私とシオンは結ばれる運命なのよ!!

悪役令嬢のあの女は、断罪される存在でしょう!?」


 血走った目。

般若のような形相。


 そして、突然――

自分の服を、ビリビリと引き裂き始めた。


「な、何を……」


「ここで私が悲鳴を上げれば、シオン様は終わりですわ」


狂気を孕んだ笑み。


「私を襲ったと言えば、カナ様はどう思うかしら?

本当に、あの女を信じているの?

選びなさい。

私を抱くか――

私を襲った犯人になるか」


 ――この時。


俺は、カナを選ぶべきだった。


彼女なら、俺を信じてくれた。

それなのに――


愚かな俺は、一瞬、世間体を選んだ。


気づいた時には、

レイラを抱き寄せていた。


――取り返しのつかない、一瞬だった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ