断罪までのカウントダウン②
そっちが、その気なら――。
私は悲しげに肩を震わせ、周囲の視線を意識しながら、あえて大袈裟に振る舞った。
「……私は、レイラ様を睨んでなどおりませんわ」
一呼吸置き、ゆっくりと言葉を重ねる。
「巷でどのような噂が囁かれようとも、私はシオン様を信じております。
私の気持ちは変わらず、シオン様をお慕いしております」
胸元に手を当て、少しだけ声を震わせる。
「ですが……私の弱い心が、どうやら悲鳴を上げているようです……申し訳ございませんが、失礼いたします」
そう言って、わざとらしく一粒の涙を零し、踵を返す。
――やっぱり、私。女優になれるんじゃない?
背後では、泣きそうな顔のシオンと、仏頂面の腹黒ヒロインが立ち尽くしていた。
最近の私は、誰の目にも明らかに変わった。
体重は順調に落ち、かつての面影はなく、すっきりとした体型。
派手な化粧もやめ、今はナチュラルな美しさ……自分で言うのも何だけど。
どう見ても、悲劇のヒロインは私の方でしょう?
ギャラリーから突き刺さる、痛いほどの視線が、二人に集中する。いい気味だわ!!
◇ ◇ ◇
「おい、大丈夫か?」
下から聞こえてきた声に、私はいつもの場所――裏庭の大木の枝の上から顔を覗かせた。
「ルキ!大丈夫よ。ちょっと待って、今降りるから!」
枝から枝へ、いつものように軽やかに……のはずが。
足を滑らせた。
「きゃっ――!」
次の瞬間、下にいたルキの胸に飛び込む形になり、そのまま二人で地面を転がる。
気がつけば、私の上にルキが覆い被さっていて……
距離、近すぎ。
「大丈夫かよ?」
「う、うん……またごめん……」
無性に恥ずかしくなり、視線を逸らす。
するとルキは、私の髪をそっと撫でながら低い声で言った。
「心臓、止まるかと思ったじゃんかよ……」
「……あの、ち、近くない?」
その言葉に、ルキはニヤリと笑う。
そして、悪戯っぽく、さらに顔を近づけてきた。
「キスできちゃうくらい近いな」
……っ!?
真っ赤になった私の耳元に、追い打ちをかけるように囁く。
「キスでも、する?」
限界まで赤くなった私を一瞥すると、ルキはあっさり離れ、腹を抱えて笑い出した。
「本気にした?」
「…………ムカつく!!」
心臓はバクバク、思考回路は完全停止。
そんな私を見下ろしながら、ルキがぽつりと呟く。
「……今度は、止まれないかもな」
爆弾発言すぎるでしょ!?
私はあたふたしながら、どう返せばいいか分からず固まるのだった。




