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シオンの嫉妬

◇◆シオン side◇◆


「シオン様、どうなさったのですか?」


 いつものように、レイラが可憐な笑みを浮かべてこちらを覗き込む。


「いや、何でもない。それよりレイラ、式典の準備は順調か?」


「はい。シオン様の的確なご指示のおかげで、すべて滞りなく進んでおります」


 そう――

大都学園で開催される大規模式典。その準備のため、俺は運営組織の一員として日々奔走していた。

そして、その組織の中にレイラも選ばれていた。


 ……あれ以来、彼女とは距離を置くべきだと思っていたはずなのに。

こうして接点が生まれてしまうのは正直気が重い。


「シオン様、少しお顔色が優れないようですが……お疲れでは?カナ様にご連絡なさいますか?」


「いや、いい。カナに余計な心配をかけたくない」


「……承知いたしました」


 最近は忙しさに追われ、カナと顔を合わせる時間もほとんど取れていない。

今頃、彼女は何をしているだろうか。


 ……きっと、また甘い菓子でも口にしているんだろうな。


 ふっと、自然に口元が緩む。

そんな自分に気づき、少し照れくさくなる。


 その時だった。


「……実は、シオン様にお耳に入れておきたいお話がございまして……」


 レイラの声音が、微かに硬くなる。


「言いづらそうだな。構わない、言ってみろ」


 俯いていたレイラは、意を決したように顔を上げた。


「……カナ様が、他の殿方と親しくしている、という噂がありまして……」


 ――何?


 思わず、レイラを睨みつけてしまう。


「お前……その言葉の意味を分かって言っているのか?」


 自分でも驚くほど、声が低くなっていた。

レイラは怯えたように肩を震わせ、しゃくり上げる。


「わ、私の友人が……裏庭で、密会しているところを見たと……」


 それを聞いた瞬間、俺は全てを放り出して走り出していた。

背後でレイラが俺の名を呼んでいる。

だが、そんなものに構っている余裕はなかった。


 ――嘘だ。

カナが、そんなことをするはずがない……


   ◇ ◇ ◇


 裏庭に辿り着き、視界に飛び込んできた光景に息が止まる。


……いた。


 確かに、カナと――見知らぬ男が。


「……っ」


 本当に、密会だというのか……?


 信じていたはずなのに。

胸の奥が、ぐしゃりと潰れる。


 その時、不注意にも足元の枝を踏み折ってしまった。


バキッ――乾いた音。


 カナと男が、同時にこちらを振り向く。


「……シオン?」


 カナの口から、俺の名が零れた。


 今、俺はどんな顔をしているのだろう…

胸が苦しくて、張り裂けそうで、今すぐこの場から逃げ出したい衝動に駆られる。


「式典でお忙しいと伺っていましたが……お時間は大丈夫なのですか?」


 ――その態度。

後ろめたさの欠片もないのか?


苛立ちが募る。


「カナこそ、こんなところで何をしている!」


 思わず声を荒げてしまう。

カナは目を丸くして固まった。


 その隣にいる男は、なぜか落ち着いた様子でこちらを眺めている。


「特に何かをしていたわけではありませんわ。

ルキ様と、少し世間話をしていただけです」


……白々しい。


まるで、悪びれる様子もない。


 すると、その男――ルキと呼ばれた男が、カナに何かを耳打ちする。

カナは顔を真っ赤にして抗議しているようだが……。


 まるで、痴話喧嘩を見せつけられている気分だ。


「……もしかして、シオン様。何か誤解なさっていませんか?」


「誤解、だと?」


「その……私とルキ様の関係を、疑っていらっしゃるのではと……」


 歯切れの悪い言葉に、怒りが込み上げる。


その時――


「シオン様!」


 遅れて、レイラが息を切らして駆け寄ってきた。



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