表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定士は表に出ない  作者: 南月 阿鬼羅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/40

第一章35 静かな日常と覚醒

全面的に自己責任でお願いします。

スマホと鑑定士 第三十五


静かな暗器と、朝の教室


◆◆◆


――クロードは、確信していた。


あの少年は、危険だ。


それは能力が高いからではない。

欲がないからだ。


欲のない人間は、王の道具にはなりにくい。

だが同時に、最も信用できる存在でもある。


(……殿下は、拾ってしまわれたな)


真夜中のお茶会を終え、廊下を歩きながらクロードは思う。


クロスフォード伯爵令息、ユーリ。


表に出ることを拒み、

命と平穏を対価にしないと明言したうえで、

それでも「裏方なら」と条件を突きつけた。


忠誠ではない。

服従でもない。


――取引だ。


それを、あの年齢で当然のように成立させた。


(殿下が“使う”つもりなら、

 逆に“使われる”覚悟も要る)


だが殿下は、それを理解している。


だからこそ厄介で――

だからこそ、王なのだ。


◆◆◆


翌朝。


第一上級クラスの教室は、静まり返っていた。


空気が、張りつめている。


ここに集められたのは、

成績優秀者、将来有望株、問題児予備軍。


そして――第一王子。


誰もがちらちらと視線を送るが、

真正面から見る者はいない。


ユーリは、一番後ろの端の席に座っていた。


(……やっぱ、このクラス息苦しい)


王子がいるだけで、教室は“舞台”になる。

無意識に、全員が振る舞いを調整している。


ユーリは視線を落とし、机に肘をついた。


(関わらん。目立たん。静かに)


その時。


「――おはよう」


低く、落ち着いた声。


顔を上げると、マイケル・ジョージアが立っていた。


クラスメイトとしての、ただの挨拶。


「……おはようございます」


最低限の礼。

それ以上でも、それ以下でもない。


王子はそれを見て、小さく頷いた。


それだけ。


それだけで、周囲の視線が一斉に刺さる。


(やめて。ほんまに)


だが王子は、それ以上何も言わなかった。


昨日の“取引”は、

この場には存在しない。


――暗器は、影にあるから意味がある。


◆◆◆


一方、その頃。


王子の私室。


「……どう思う?」


マイケルは、クロードに尋ねた。


「クロスフォード伯爵令息のことだ」


クロードは少し考えてから答える。


「裏切りません。ただし、縛れません」


「だろうな」


「ですが、殿下が約束を守る限り、

 彼は刃であり続けます」


マイケルは、静かに息を吐いた。


「私は、彼を臣下にはしない」


「存じております」


「隣に置く。影として」


クロードは、深く一礼した。


(……殿下も、危ない橋を渡られる)


だが、その橋の強度を測れる人間が、もう一人増えた。


それだけで、この国にとっては――十分な価値がある。


◆◆◆


教室。


授業が始まり、ユーリは黙々とノートを取る。


内容は基礎。

だが、飛び交う質問の質が高い。


(……このクラス、静かに地獄やな)


誰もが理解している。


――落ちたくない。


だから無駄な衝突はない。

だが、油断もない。


ユーリは、気配を殺す。


暗器は、抜かれた瞬間に価値を失う。


(裏方でいい。ほんまに)


そう思いながら、ペンを走らせた。


だが。


この学園が、それを許すかどうかは――

まだ分からない。


◆◆◆


昼休み。


廊下の向こうから、

親友たちの笑い声が聞こえた。


別クラス。

別の空気。


(……もう、戻れんのやろな)


それでも、完全に切れたわけじゃない。


寮は同じ。

道は、まだ繋がっている。


ユーリはノートを閉じ、小さく息を吐いた。


暗器として生きる覚悟は、決めた。


(暗く考えすぎやな。

 アホらしい。俺は俺や)


王子が求めているのは、

暗殺でも策略でもない。


――鑑定能力だ。


(逆に今の俺、暗すぎて怪しいんちゃうか?)


なら、逆だ。


普段は今まで通り、道理に生きる。

王子が“俺を抜いた瞬間”だけ、闇を噴き出す。


ピエロ。

道化。


周囲を欺く役。


(……なんか、カッコええやん)


今世、イケメンやし。


やれる気がしてきた。


あとは――


使われすぎないこと。

そして、折れないこと。


それだけ。



読み終わってのクレームは、お止めください。

自己責任です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ