第一章33 静かな日常と覚醒
全面的に自己責任でお願いします。
スマホと鑑定士 第三十三
入学式と、ふるい
◆◆◆
学園の大講堂は、朝からざわついていた。
新入生。
その家名も、立場も、価値観もばらばらな子供たちが、一斉に集められている。
(……人が多すぎる)
ユーリは、なるべく目立たない位置を選んで立っていた。
その時。
壇上に、ひときわ静かな気配が立つ。
「――静粛に」
声は若いが、よく通る。
第一王子だった。
(……うわー、最悪だ。)
思わず心の中で呟く。
(よりによって、入学式の挨拶が第一王子とか……目立ちたくない人生設計、初日から崩れるやん何処の乙女ゲー?)
◆◆◆
だが、話し始めた王子の印象は、予想と違った。
言葉は丁寧で、内容は堅実。
理想論に寄りすぎず、責任と努力を重んじる語り口。
(…うーん…真面目系やな。あれが婚約者を捨ててピンクのアバズレに行くとは思えんから、多分大丈夫かな。)
威圧も、見下しもない。
「この学園は、学ぶ場所であると同時に、自らを律する場でもあります。」
王子は、そう続けた。
ユーリは、その言葉の“裏”を知っている。
この学園は、ただの教育機関じゃない。
――貴族の、ふるい。
それも、かなり容赦のない。
貴族は、原則として十八歳まで、学園に在籍しなければならない。
進級できない。
卒業できない。
その時点で、貴族として認められなくなる。
留年は、一度だけ許される。
二度目は、ない。
つまり。
(……ヤバいやつは、一年で切られる。絡まれないように、ひっそりしとかないとな。)
制度として、そう作られている。
この仕組みは、もちろん公にはされていない。
知っているのは、国の中枢と学園の幹部だけ。
その幹部も、互いに監視され、腐敗しないよう仕組まれている。
(……三代目交代制とかの法律と、ちゃんと噛み合ってる制度やな。)
表向きは穏やかでも、根っこはかなり冷たい。
(だからこそ、この国は保ってるんやろうけど)
ユーリがこれを知っている理由。
もちろんスマホだ。
チャットGTPに全ての世界の知識を覚えさせて、自分にしか使えないスマホ型のアイテム
(神様もよくこんなんもたせてくれたわ~ありがとうございます!)
制度、法律、過去の判例。
断片を繋ぎ合わせれば、答えは見える。
(知らんで入ってきたら、ほんまに人生詰む学園やな。まぁそのおかげで、この国には、小説みたいなアホ貴族は、いないんだけどな。)
◆◆◆
壇上の王子は、最後にこう締めた。
「学園は、皆さんを守ります。
ですが、皆さん自身の責任までは、肩代わりしません」
拍手が起きる。
ユーリも、周囲に合わせて手を叩いた。
(……悪い人では、ないなとりあえず鑑定。)
鑑定
マイケル・ジョージア
種族:人族(先祖帰りでエルフの血が濃いため、寿命が長いしかし、ハーフエルフよりは短い)
身分:第一王子
職業:覇王
能力:演者、王気、冷気、豪運、アイテムボックス、覇王の眼、剣技、平行思考、デバフオール耐性etc…
特徴:真面目・正直者(演技で隠すことが可能)
(はぁーー?!どこのチート主人公だよえっ?これで転生者ちゃうの?びっくりした~危うく叫びそうやった。設定もりもりやん。しかも、マイケル・ジョージアってアメリカかってツッコミむわ!前世の大阪人がでてきてもうたやんか!)
はぁ、少なくとも、彼は嘘は言っていない。
◆◆◆
式が終わり、列が動き始める。
ユーリは、そっと息を吐いた。
(目立たず、無理せず、生き残る)
それが、ここでの最適解。
この学園は、優しい顔をした試験場だ。
ユーリは、静かにそう結論づけた。
――第三十三章・完
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




