表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定士は表に出ない  作者: 南月 阿鬼羅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/40

第一章28 静かな日常と覚醒

全面的に自己責任でお願いします。

スマホと鑑定士 第二十八


学園という檻と、評価の更新


◆◆◆


王都学園は、変わらない。


校舎は整然と並び、規則は細かく、秩序は絶対だ。

少なくとも、表向きは。


だが――

評価表だけは、嘘をつかない。


◆◆◆


まず、兄――デビット・クロスフォード。


中等科に上がってから、学園側の評価は一段階引き上げられていた。


理由は、派手さではない。


・剣術演習での安定性

・模擬戦における判断速度

・無駄のない動き

・勝っても驕らない態度


突出していないようで、

「崩れない」。


それが、教官たちの一致した見解だった。


「才能型ではないが、完成度が高い」

「伸びる余地が大きい」

「何より、周囲を乱さない」


王都育ちの生徒は多い。

貴族の子息も珍しくない。


だが、**“扱いやすく、信用できる剣”**は、そう多くない。


そこに――

あの馬車が届いた。


◆◆◆


「……揺れないな」


通学用の馬車を見た教官の一人が、そう呟いた。


目立つ装飾はない。

派手な魔道具も見当たらない。


だが、毎日の移動で疲労が溜まらない。


結果として、

集中力が落ちない。

成績が安定する。


「偶然ではないな」


学園側は、そう判断した。


評価表の備考欄に、短く書き足される。


――クロスフォード家、技術力あり。


◆◆◆


一方、姉――リア・クロスフォード。


こちらは、別の意味で目を引いていた。


家政。

魔法。

美的眼。


どれも、目立たない選択だ。


だが。


「この子……観察が鋭いですわね」


家政の教師が、記録を見直す。


作業は丁寧。

段取りが良い。

他人の動きを邪魔しない。


魔法では、基礎の再確認を徹底し、

決して背伸びをしない。


美的眼では、

「高価かどうか」ではなく、

「場に合っているか」を正確に言い当てる。


「育ちが、静かに良い」


それが、評価だった。


◆◆◆


決定打は、茶会だった。


何度目かの、友人同士の小さな集まり。


特別な話題はない。

ただのお茶と菓子。


だが、空気が崩れない。


誰も萎縮せず、

誰も出しゃばらない。


「……この場、居心地がいいですわね」


誰かが、そう漏らした。


原因は、リアだった。


話題を拾い、

流れを整え、

価値観を押し付けない。


目立たないが、

確実に“場を作っている”。


教師の一人が、内心で評価を改める。


――社交適性、高。


◆◆◆


学園側は、静かに情報を集め始めた。


兄は、堅実で折れない剣。

姉は、空気を制御する魔法使い。


共通点は、一つ。


「前に出ない」

「だが、欠けていない」


そして――

二人とも、クロスフォード家。


◆◆◆


会議室。


学園関係者の一人が、書類を閉じて言った。


「……弟の情報は?」


「まだ、学園前です」

「鑑定師。UR」


一瞬、空気が止まる。


「……なるほど」


誰かが、低く呟いた。


兄姉がこれなら、

弟は、恐らく――


「今は、刺激するな」


結論は、それだった。


評価は、上げる。

だが、接触は最小限。


◆◆◆


王都学園は、変わらない。


今日も、鐘が鳴り、授業が始まる。


だが、評価表の片隅で、

クロスフォード家の欄だけが、

静かに書き換えられていた。


誰にも知られず。

だが、確実に。


――第二十八章・完

読み終わってのクレームは、お止めください。

自己責任です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ