第一章27 静かな日常と覚醒
全面的に自己責任でお願いします。
スマホと鑑定士 第二十七
五歳の儀式と、知ってしまった現実
◆◆◆
十歳になった。
数字だけ見れば、まだ子どもだ。 だが、この世界では「節目」が多い。
そして今日は――
弟、マルコフ・クロスフォードの五歳の儀式の日だった。
◆◆◆
教会は、人で溢れていた。
白い石造りの大聖堂。 高い天井。 儀式室の中央には、あの魔導円。
(……僕の時と同じだ)
あの時は、人の多さに圧倒されて、 何が起きているのかも、よく分からなかった。
今は違う。
◆◆◆
「緊張してるか?」
父が、マルコの肩に手を置く。
「うーん……」
マルコは曖昧に笑った。
五歳。 まだ世界は怖くない。
だからこそ、少しだけ羨ましい。
◆◆◆
神官が、厳かに告げる。
「――マルコフ・クロスフォード」
名を呼ばれ、魔導円が淡く光る。
空気が、変わった。
◆◆◆
結果は、静かだった。
だが、神官の声が一瞬、詰まる。
「……職業は」
一呼吸。
「外交渉術師」
場が、わずかにざわめいた。
◆◆◆
父が、小さく息を吐く。
「……なるほどな」
母は、ただ頷いた。
「この子らしいわ」
◆◆◆
帰り道。
馬車の中で、ふと疑問が湧いた。
「……父上」
「ん?」
「兄さんと姉さんの職業って、何なんですか?」
今まで、聞いたことがなかった。
◆◆◆
父は少し考え、そして言った。
「デビットは剣豪だ」
「リアは、大魔術師」
「……」
言葉が、止まった。
◆◆◆
「父上は?」
「私は剣聖だ」
「母上は?」
「弓聖よ」
◆◆◆
馬車の中が、静まり返る。
(……あれ?)
計算するまでもない。
「……これ、ヤバくない?」
父が、苦笑した。
「今さら気づいたか」
◆◆◆
鑑定結果を、頭の中で並べる。
父母:UR
兄姉:SSR
僕:UR
弟:SSR
(……チート家族だ)
◆◆◆
マルコが、無邪気に笑う。
「にーちゃ!ぼく、えらい?」
「……ああ」
そうだな。
「十分すぎるほど」
◆◆◆
世界は、まだ知らない。
だが――
クロスフォード家は、静かに揃っていた。
誰も、誇らない。 誰も、驕らない。
ただ、備えている。
◆◆◆
(……やっぱり)
(この家、普通じゃない)
ユーリは、そう結論づけた。
――第二十七章・完
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




