第一章23 静かな日常と覚醒
全面的に自己責任でお願いします。
スマホと鑑定士 第二十三章
届いた手紙と学園の日常
◆◆◆
午後の書斎は静かだった。
窓から差し込む光の中、執事が二通の封筒を差し出す。
「若様。王都より、お手紙でございます」
(いつの間にか若様になってる?まぁいいか。)
見慣れた筆跡が、二つ。
兄と、姉。
ユーリは椅子に腰掛け、まず兄の封を切った。
◆◆◆
兄の文字は、相変わらず簡潔だった。
――――――――――
ユーリへ。
学園生活は、特に変わりなく続いている。
王都にいる時間も長いが、学園の中は別の世界だ。
授業は、年次が上がるにつれて実務色が強くなった。
理論は前提。
それを「どう使うか」を問われる。
最近は、魔法制御と礼法の比重が増えた。
目立つ者ほど、評価も監視も厳しい。
お前が言っていた通り、
余計なことはせず、必要なことだけをやっている。
例の馬車は、父上たちが持ってきてくれたから、毎日使っている。
移動が楽だと、集中力が違う。
中等科になってから寮を出て王都の別宅へ引っ越したが、通学げ憂鬱でったので、ほんとうにありがたい。周囲は、何か言いたそうだが、普通だと言ってある。
それで十分だ。
体調は問題ない。
家の様子も、また教えてくれ。
――デビット
――――――――――
ユーリは、手紙を読み終え、静かに頷いた。
(……変わってないな)
王都に慣れているからこそ、
学園の空気を冷静に見ている。
それが、兄らしかった。
◆◆◆
次は、姉の手紙。
こちらは、文字に少し柔らかさがある。
――――――――――
ユーリへ。
学園生活にも、だいぶ慣れてきましたわ。
最初は緊張しましたけれど、今は落ち着いています。
選択授業は、予定通りこちらにしました。
・家政
・魔法
・美的眼
家政は、思っていた以上に理論的ですの。
「管理」は感覚ではなく、積み重ねなのだと学びました。
初めてお料理もしました。
お裁縫は、得意なので安心してください。
魔法は、基礎の再確認。
派手ではありませんが、抜けがあるとすぐ指摘されます。
美的眼は、とても面白いですわ。
物の価値だけでなく、人の立ち居振る舞いまで見る授業です。
友人たちとも、何度かお茶会を開いています。
最初は形式的でしたが、今では自然に話せる関係になりました。
あなたが用意してくれた馬車、
こちらでも評判が良いですの。
自慢はしていませんが、先日、友人を乗せたら「静かで、落ち着く」と言ってました。
何処産という話になりましたが、お父様がつてで買ったので私にはわかりませんと言っておきました。
あなたらしい贈り物ありがとうですわ。
では、また書きます。
――リア
――――――――――
ユーリは、最後の行で小さく息を吐いた。
(……ちゃんと、居場所を作ってるし、馬車もごまかせたみたいだ。)
それが、何より安心だった。
◆◆◆
机の上に、二通の手紙が並ぶ。
兄は、王都の中で学園を見ている。
姉は、学園の中で世界を広げている。
同じ場所でも、見ているものは違う。
(……今は、これでいい)
ユーリは、返事を書くために便箋を取り出した。
追いつく必要はない。
比べる必要もない。
ここで、磨く。
それだけだ。
◆◆◆
夕暮れの光が、書斎を染める。
王都は遠くない。
だが、まだ踏み込まない。
文字を通して、様子を知れれば十分だ。
ユーリは、ペンを走らせた。
――元気そうで、安心した。
それだけ最後に書き足して、封を閉じた。
――第二十三章・完
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




