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鑑定士は表に出ない  作者: 南月 阿鬼羅


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第一章21静かな日常と覚醒

全面的に自己責任でお願いします。

スマホと鑑定士 第二十一章


貨幣と馬車と、初めての買い物


金属の重みは、思った以上に現実的だった。


机の上に並べられた貨幣を前に、ユーリは無言で枚数を数える。


兄用の馬車、五千万円。

夫婦用の馬車、一億円。


金貨だけではない。

魔銅、魔銀、大金貨が混ざっている。


(……町で大金貨ばかり使ったら、即で目を付けられるな)


父の配慮は、現実的だった。


「兄用が五千万だ」


・魔銅貨 三枚

・大金貨 十枚

・金貨  千枚


「夫婦用が一億」


・魔銀貨 一枚

・魔銅貨 数枚

・金貨  調整分


「……本当に払うんだね」


「当然だ」


父は即答した。


「家族でも、技術の対価は曖昧にしない」

「お前は“作った側”だ」


ユーリは、静かに頷いた。


その夜。


貨幣を片付け、自室に戻ると、ユーリはベッド脇に腰を下ろした。


そして、そっとスキルを起動する。


《異世界通販》


画面は静かだ。

だが、その向こう側には“世界”がある。


(……金があると、見るだけで緊張するな)


何気なく眺めていると、懐かしい文字が目に入った。


――おにぎり定食。

――おー!お茶。


「……あ」


気づけば、指が動いていた。


《おにぎり定食(鮭)紙皿》

《おー!おペットボトル


購入。


――アイテムボックスに収納されました。


「……来た」


取り出した瞬間、驚いた。


紙コップに入った、出来立ての味噌汁。

湯気の立つおにぎり、具は鮭。

脇には、沢庵。


「……定食だ」


おにぎりは、温かい。


(……なんで紙コップなんだよ)


そう思いながらも、指先に伝わる温度が、妙に嬉しかった。


一口。


米の甘み。

塩気。

鮭の脂。


続けて味噌汁。


(……あ)


言葉が、出なかった。


次に、おーいお茶。


ペットボトルを捻る音が、やけに現実的だ。


「………………」


懐かしい。

だが、泣くほどではない。


ただ、胸の奥が、静かに緩んだ。


食べ終えたあと。


紙コップ、紙紙、空のペットボトル。


(……これ、ゴミだよな)


ふと思い、アイテムボックスへ放り込む。


《査定しますか?》


「……してみるか」


――査定結果。


《リサイクル可能》

《買取価格:3円》


「……え?」


0円だと思っていた。

買取不可でも当然だと思っていた。


だが、確かに数字がある。


「……ゴミ、売れるのか」


金額は微々たるものだ。

だが、不思議と悪くない。


(無駄が、完全に無駄にならない……)


画面を閉じる。


机の上に貨幣はない。

腹は温かい。

頭は冴えている。


馬車。

特許。

通貨。

異世界通販。


すべてが、少しずつ噛み合い始めていた。


(……急ぐ必要はない)


今は、知るだけでいい。

使えると分かっただけで、十分だ。


ユーリは、そう結論づけて灯りを落とした。


――第二十一章・完


読み終わってのクレームは、お止めください。

自己責任です。

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