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鑑定士は表に出ない  作者: 南月 阿鬼羅


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第一章16.5 静かな日常と覚醒

全面的に自己責任でお願いします。

スマホと鑑定士 第十六・五章(原文)


お茶会のあとで


~甘さと香りが残したもの~


◆◆◆


リード伯爵家


(カルロス側)


馬車の中で、カルロスは腹をさすっていた。

「……腹いっぱい」

「ふふ、食べ過ぎよ」


母は笑いながらも、視線は鋭い。


「でも、あのケーキ……初めて食べた味だったわね」

「うまかった!」


即答だった。


「甘いのに、重くなくてさ。剣の訓練のあとでも食えそう」

「……それは、珍しい感想ね」


父が、静かに口を挟む。


「糖と脂肪の配分が異常にいい」 「え?」

「料理というより、“設計”だ」


カルロスは首を傾げるが、父の視線は別のところを見ていた。


「それと、最後の香り」

「アロマポット?」

「ああ。集中力を上げ、疲労を抑える」


父は、断言した。


「どちらも、軍が欲しがる」 「……え」


母が、すっと話題を切る。


「だからこそ、口外しないのよ」 「うん」


カルロスはよく分からないまま頷いた。

ただ一つ、確かなのは


(また、食いてぇ)


それと同時に、


(また、あいつと会いてぇ)


という気持ちだった。


そして、お土産は、日持ちするカステラをユーリはチョイスし、カルロスは、大喜びで数日過ごした。


◆◆◆


ハートリーフ侯爵家


(ハイネス側)


屋敷に戻ると、ハイネスは真っ先に書斎へ向かった。


「……再現、できるかな」


ノートには、ケーキの断面図と、味の印象が書き留められている。


「香りが立つ前に、甘味が来る」 「後味が消えるのが早い」


母が、肩越しに覗き込む。


「随分、細かいわね」

「料理ですが……理論的でした」


父が、椅子に腰掛ける。


「香りと味覚の相互作用か」 「はい。最後のアロマポットで、余計に印象が強まりました」


ハイネスは、少し興奮している自分に気づき、咳払いする。


「……ユーリは、どちらも“急いでいない”」

「ええ、そうね。」

「だからこそ、完成度が高いのだろう。」


父は、静かに言った。


「知識を“遊び”として出している」

「……怖いですね」

「優秀な子ほど、怖く見えないのが本当に怖い」


ハイネスは、素直に頷いた。


(学園で、ああいう友人がいるのは……心強い)


お土産のカステラは、研究中の両親に半分以上食べられてハイネスは久しぶりに泣いた。


◆◆◆


ベインズロック伯爵家


(ゴードン側)


帰宅後、ゴードンは珍しく母に言った。

「……ケーキ」

「え?」

「あれ、型からして違う」


父が、すぐ反応する。


「ほう」


ゴードンは、真剣な顔で説明する。


「焼成ムラがない」

「軽いのに、崩れない」

「持ち運びも、日持ちも考えてる」


母は、目を瞬いた。


「そこまで分かるの?」

「……職人だから」

父は、低く笑った。

「料理を“製品”として見ているな」

「……うん」


そして、アロマポット。


「あれは……」

「言わなくていい」


父が遮った。


「分かる者だけが分かればいい」


ゴードンは、短く頷いた。


「……また、行きたい」

「だろうな」


お土産のカステラは、母と半分ずつした。


◆◆◆


クロスフォード伯爵家


(その夜)


静かな居間。


「……ケーキの反応、良すぎたかしら」

「いいや。あれは“分かる者だけが分かる”」


父は、きっぱり言った。


「甘いだけの菓子だと思った家は、そこまでだ」

「ふふ……確かに」


母は、紅茶を一口飲む。


「アロマポットも、ケーキも」 「“すぐに欲しい”と言わなかったのが、正解の子たちね」


少し離れた場所で、ユーリはリナと後片付けをしていた。


「……食べ過ぎたの?」

「うん。みんな、美味しそうに食べてくれたし」


リナは、にやりと笑う。


「ねえユーリ」

「なに?」

「あなた、無自覚に“選別”してるわよ」

「そうかな…。」

「ふふふ。良い事よ。あっ私も明日ケーキ食べたいわ。」

「うん。まだ残ってるよ。」



◆◆◆


その日を境に、不思議なケーキ、妙に頭が冴える香り


この二つは、


どの家でも「詳しく語られなかった」。


だが、大人たちは理解している。


あれは、偶然ではない。

甘さと香り。

どちらも、人の警戒心を下げ、記憶に深く残る。


ユーリ・クロスフォード、七歳。


彼のお茶会は、友情を結び、信頼を育て、そして大人たちに、“今は、手を出すな”という共通認識を植え付けた。


――第十六・五章(閑話)・完

読み終わってのクレームは、お止めください。

自己責任です。

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