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鑑定士は表に出ない  作者: 南月 阿鬼羅


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第一章16 静かな日常と覚醒

全面的に自己責任でお願いします。

スマホと鑑定士 第十六章


お茶会当日


~言葉を交わし、席が近づく~


◆◆◆


その日のクロスフォード伯爵家の庭園は、「整いすぎている」ほど整っていた。


白布のかかった円卓。

四脚の椅子。

日差しを和らげる木陰と、風向きまで計算された配置。


だが、座っている四人の少年の空気は、ぎこちない。


(……全員、固いな。)


ユーリは、内心で苦笑した。


七歳。

貴族。

初めての「自分たちだけのお茶会」。

緊張しない方が、難しい。


◆◆◆


「……じゃあ」


ユーリは、少しだけ背筋を伸ばした。


「まずは、自己紹介からにしようか」


三人が、わずかに目を見開く。


「えっと……僕から」


ユーリは、ゆっくり言葉を選んだ。


「僕は、ユーリ・クロスフォード、七歳です。

勉強と、魔法と…最近は、色々物を作るのが好きです。

体を動かす事も好きです。

5歳の儀式で、鑑定師のジョブを貰いました。今日は、学園に入る前に、同じ年の人と、ちゃんと話してみたくて皆を誘いました。

堅苦しい場じゃないから、気楽に話してほしいです。」


その一言で、空気がほんの少し、緩んだ。


◆◆◆


「……じゃあ、次は俺か」


カルロスが、少し居心地悪そうに椅子に座り直す。

「カルロス・リード、伯爵家の長男だ。

剣が好きで、体動かすのが得意。勉強は…嫌いじゃないけど、じっとしてるのが苦手だ。

5歳の儀式では、刀剣師のジョブを貰った。」


ユーリが、すかさず頷く。


「剣の話、面白かったよ」

「……ほんとか?」

「うん。魔法にも興味あるんだよね?」

「ああ、カッコいいからな。」

「刀剣ってジョブもカッコいいね」


カルロスは、照れたように鼻を鳴らした。


◆◆◆


「次は、僕ですね」


ハイネスが、自然な動きで一礼する。


「ハイネス・ハートリーフ、侯爵家の次男です。

本を読むのが好きで、魔法理論に興味があります。

運動は…正直得意ではありませんが弓は得意です。5歳の儀式では、魔術弓師と言う聞きなれないジョブをいただきました。」


「ハイネス君は、とっても話し方が落ち着いていて大人ぽいよね。魔術弓師てなんか名前的に強そうだよね。羨ましいな。」


ユーリが笑顔でそう言うと、ハイネスは少し目を瞬かせた。


「そう見えましたか?」

「うん。聞き上手だと思った」

「……ありがとうございます。」


◆◆◆


「……最後、俺だな」


ゴードンは、少し低めの声で名乗る。


「ゴードン・ベインズロック。

伯爵家の三男、物を作るのが好きだ。木工も、金属も」


視線が、無意識にテーブルの脚へ向いている。


「魔法は……補助くらいしか使わない。5歳の儀式で、錬金鍛冶師のジョブをもらった。簡単に言えば、鍛冶に特化した鍛冶師だ。」


ユーリは、静かに言った。


「道具を見る目が、職人だったもんね。」


ゴードンは、一瞬だけ驚いた顔をしてから、はっきり頷いた。


「……分かる人がいて、嬉しい」


◆◆◆


自己紹介が終わった瞬間、紅茶が運ばれてきた。


湯気と共に、空気が変わる。


「……いい香り」

「落ち着くな」


ケーキが置かれた途端、視線が集まった。


「これ……見たことない」

「色、きれいだ」


一口、次の瞬間。


「……うまい!」

「甘いのに、軽い?!」

「……これ、どう作ったんですか?」


◆◆◆


ユーリは、少しだけ困ったように笑う。


「色々な国の料理のレシピ集を読んでて、暇な時に、組み合わせて考えたんだ。」


それは事実だった。

ユーリの書斎の本棚には集めにあつめた、国別・地域別の料理本が様々な薬学書や錬金術の本などと共にずらりと並んでいる。


「料理って、魔法薬学に似てると思うんだ」


三人が、自然と聞き入る。


「分量、温度、順番。

どれか一つ間違えると、全然違うものになるし失敗する。」

「……確かに」

「理論魔法と同じだ」

「うん。各々組み合わせて適正量を見極めて、出来たのがこのレシピなんだ。とりあえず、近いうちに特許を取る予定」

「え、売るのか?」

「今は売らない。面倒事はいやだしね。けど、レシピを守るためにとるんだ。

中等科になってギルド登録したら、公開する予定。

そしたら、何割かのアイデア料貰えるし。

別に僕シェフになる予定はないからさ。」


その考えに、皆が頷いた。


◆◆◆


話題は、自然に広がった。


剣と体術。

魔法理論と本。

道具と構造。

誰も、無理に話さない。

誰も、取り残されない。


それは、ユーリが


「話題を振り、受け止め、繋ぐ」


ことを無意識にやっていたからだ。


◆◆◆


「…ええ~…最後に、」


ユーリは、少しだけ真剣な声で言った。


「これ、家族以外に見せるのは初めての物なんだ。」


置かれたのは、アロマポット。

火を入れると、

香りが静かに広がる。


「……頭が冴える」

「落ち着くのに、眠くならない」

「いい香りだな。」


誰も、軽々しく口にしない。

それが「特別」だと、分かっているから。


◆◆◆


この日のお茶会は、誰かを選ぶためのものではなかった。


同じ場所に座り、

同じ香りを吸い、

同じ時間を共有できるか。


答えは、すでに出ている。


――第十六章・完

読み終わってのクレームは、お止めください。

自己責任です。

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