表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定士は表に出ない  作者: 南月 阿鬼羅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/40

第一章15.5 静かな日常と覚醒

全面的に自己責任でお願いします。

スマホと鑑定士 第十五・五章


返書という名の返事


~招かれた側の本音と、親の判断~


◆◆◆

リード伯爵家

(カルロス側)

「……カルロス、これを」

朝食の席で、父が一通の手紙を差し出した。

「クロスフォード伯爵家?」

カルロスは、パンをくわえたまま目を丸くする。

「昨日のガーデンパーティーで会った、あの子からだ」

(……あ、あの俺と同じ、七歳のやつだ)

封を切り、ゆっくりと読み進める。

剣の話が面白かったこと。

また話したいということ。

堅苦しくない、気軽な招待の言葉。

「……」

カルロスは、しばらく黙ったまま手紙を見つめていた。

「どうだ、行くか?」

「……行く」

迷いのない即答だった。

母が、少し驚いたように微笑む。

「即決するのね」

カルロスは、ぽつりと言った。

「俺、あいつと話してて、嫌じゃなかった」

父は、その一言を聞いて、静かに目を細める。

「そうか。なら、返事を書け」

「俺が?」

「招かれた以上、自分の言葉でだ」

カルロスは、少しだけ背筋を伸ばした。

(……貴族って、こういうのか)

「わかった。でも……恥ずかしくない文章にしたいから、母様、書き方を教えて」

「ふふ。あらあら、いいわよ。一緒に書きましょう」

その声は、どこか楽しそうだった。

◆◆◆

ハートリーフ侯爵家

(ハイネス側)

静かな書斎。

ハイネスは、暖炉の前で手紙を読んでいた。

「……ふふ。とても丁寧だね」

控えめで、押しつけがましくない文章。

それでいて、自分が“きちんと見られていた”ことが伝わってくる。

(本の話、覚えていてくれたんだ……)

それが、少しだけ嬉しかった。

「母上」

ハイネスは、手紙を差し出す。

「クロスフォード伯爵家の次男からです」

母は、ゆっくりと目を通し、穏やかに微笑んだ。

「良い招待状ね」

「はい。無理がありません」

父も、静かに頷く。

「相手の年齢を考えれば、十分すぎるほどだ」

「……行っても、いいですか?」

母は、即座に答えた。

「ええ。学園前に、同世代の知己を得るのは大切よ」

「それに」

父が、言葉を継ぐ。

「クロスフォード家は、急がない。そこがいい」

ハイネスは、少し安心したように息を吐いた。

(……今回は、ゆっくり話せそうだな)

◆◆◆

ベインズロック伯爵家

(ゴードン側)

工房の一角。

ゴードンは、手紙を読み終えると、静かに顔を上げた。

「……変わった道具」

その一言に、父が反応する。

「ほう?」

職人気質の父は、興味深そうに眉を上げた。

「クロスフォード家に、そういう物があるのか」

「多分……ある」

ゴードンの目が、わずかに輝く。

「あの子、道具を見てる時の目が……ちゃんと“分かってる”感じだった」

母が、くすりと笑った。

「珍しいわね。あんたが人を褒めるなんて」

「……行きたい」

父は、少し考えてから言った。

「行ってこい」

「いいの?」

「ああ。職人肌同士の縁は、悪くない」

ゴードンは、珍しくはっきりと頷いた。

◆◆◆

クロスフォード伯爵家

(返事を待つ側)

その日の午後。

使用人が、銀の盆に三通の返書を乗せて運んできた。

「……来た?」

ユーリは、思わず立ち上がりそうになるのを、必死で堪える。

母が一通ずつ目を通し、柔らかく微笑んだ。

「ええ。三家とも、参加の返事よ」

「……!」

言葉が、喉で止まる。

リナが楽しそうに言った。

「全員来るなんて、珍しいわね」

「……よかった」

それだけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。

父は、静かに言った。

「覚えておけ、ユーリ」

「はい?」

「“招いた”のは君だ。だが、“来ると決めた”のは、彼ら自身だ」

その言葉は、重く、そして優しかった。

「……はい」

◆◆◆

こうして、小さなお茶会は、

ただの計画から、確かな「約束」へと変わった。

まだ遊び。

まだ友達。

それでも、学園に入る前のこの一歩は、

確実に、未来へと続いている。

――第十五・五章(閑話)・完

読み終わってのクレームは、お止めください。

自己責任です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ