表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定士は表に出ない  作者: 南月 阿鬼羅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/40

第一章14 静かな日常と覚醒

全面的に自己責任でお願いします。

帰宅後の家族会話 ~選ぶことと、選ばないという選択もあること~


◆◆◆


馬車が、屋敷の門をくぐった。


ガーデンパーティーの余韻が、まだ体に残っている。

音楽、視線、評価。 七歳には、少しだけ濃すぎる一日だった。


「……ふぅ」


思わず息を吐くと、向かいに座る姉のリナが、くすりと笑った。


「お疲れさま、ユーリ」

「姉様こそ。ずっと踊ってたじゃないか」

「慣れてるだけよ。でも、今日は楽しかったわ」


その言葉に、嘘はなかった。


(パーティーは、確かに疲れたけど、この馬車移動がホント疲れる。これに、乗って王都とかいやだ。入学までには、馬車もなんとかしたいな。今の所やりたいことは、トイレ改装に風呂作りにシャンプー&リンス、それに馬車だな。)


◆◆◆


屋敷に戻り、いつもの居間。

香草茶が用意され、ほんのりアロマが焚かれている。


皆の空気が一気に“家”になる。

母が、穏やかに切り出した。


「今日はどうだった? ユーリ」 「……正直に言っていい?」

「もちろん」


少し考えてから、答える。


「……楽しかった。でも、疲れた」


父が、くくっと小さく笑った。


「正しい感想だな」

「はい。」


僕は、今日の光景を思い出す。


やんちゃそうで、でも逃げなかった少年。

悔しそうに、でも真っ直ぐな目で見ていた、あの子。


「でも、今日、話してた男の子がいたでしょう。」

「ああ、リード伯爵家のカルロス君だね。」

「うん。あの子、多分、学園で同級生になるでしょ?」


母が、少し興味深そうに眉を上げた。


「どうしてそう思うの?」

「家柄も年齢も同じだし、貴族は、学園に皆行くよね?」


そして、続ける。


「…たから…仲良くなりたいんだ。」


◆◆◆


一瞬、部屋が静かになる。


リナが、ぱっと明るく言った。


「いいじゃない! あの子、素直そうだったわよ」

「だろ?」


父は、顎に手を当て、ゆっくり頷いた。

「彼を選んだ理由は?」

「…えっと…一番は、逃げなかったからかな。」


それだけで、十分だった。


◆◆◆


「それと」


僕は、もう二人の顔を思い浮かべる。


「今日は、まだちゃんと話してないけど……多分、同じく同級生になる人たちにも、出会ってるとおもう。」


母が、微笑んだ。


「へぇ~誰かしら?」


「一人目はさっき言った、リード伯爵家の長男のカルロス。スポーツ系で剣術が得意らしい。ヒト族」

「うんうん。活発そうな子だったものね」

「うん。体動かすのが好きそうだった。」

「二人目は、ハートリーフ侯爵家の次男のハイネス。本が好きらしい、おとなしそうな子。エルフ族」

「……ああ、庭園の端で読書してた子か」

「そう。話し方が落ち着いてて、頭が良さそうだった。侯爵家だけど偉そうじゃなかったし。」

「ハートリーフ家の方々は、研究者きしつの方が多いわよ。私とおなじ純血のエルフ族だから、長生きでね、マイペースな方がめだつわね。」

「へぇ~。三人目は、ベインズロック伯爵家の三男のゴードン君。工作が好きらしい。ハーフドワーフ」

「道具とか魔道具をじっと眺めてた子ね」

「うん。目が、完全に職人だった」


◆◆◆


父が、静かに言った。


「バランスがいいな」

「でしょ?」


リナが、くすくす笑う。


「ユーリ、もう“派閥”作り始めてるみたい」

「違うよ。友達だよ」


そう言うと、二人は顔を見合わせた。


母が、穏やかに提案する。


「なら、お茶会を開きましょうか」

「え?」

「家でなら、肩の力も抜けるし、親同士の顔合わせにもなるわよ」


父も、頷いた。


「いい判断だ。学園前に関係を作っておくのは、悪くない」

「……いいの?」

「君が選んだ相手なら、なおさらだ」


◆◆◆


リナが、楽しそうに手を叩いた。


「私も手伝うわ! お菓子は何にする?」

「……姉様、気合入りすぎ」


でも、悪くない。


◆◆◆


「ユーリ」


父が、少しだけ声を落とした。


「今日の場で、君は“選ばれる側”だった」

「……うん」

「だが、これからは“選ぶ側”にもなる」


その言葉が、胸に残る。


「誰と一緒に立つか。それはプラスになることもあるし、反面間違えれば、マイナスにもなる。忘れるなよ。」


「はい。わかりました。」


僕はゆっくりと、しかし、ハッキリと頷いた。


◆◆◆


窓の外は、夕暮れ。

今日出会った顔が、いくつも浮かぶ。


(……一人じゃない)


それだけで、少しだけ未来が軽くなった。


◆◆◆


こうして、静かに決まった。


入学前の、初めての小さなお茶会それは、今のユーリには、立派な“社交”だった。


そしてそれは、貴族としてのただの、始まりだ。


――第十四章・完

読み終わってのクレームは、お止めください。

自己責任です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ