第一章13.5 静かな日常と覚醒
全面的に自己責任でお願いします。
第十三・五章(閑話)踊った後に残るもの ~それぞれの立場で測られる、七歳の価値~
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令嬢・マリア視点(ユーリと踊った少女)
最初に声をかけられた時、正直に言えば、驚いた。
それが、最初の感想だった。
七歳なのに、落ち着きすぎている。
こちらを「見る」目だった。
(……年上の子かと思った。それに、可愛いのにカッコいい。反則かしら。)
踊りは完璧じゃない。
でも、合わせようとしてくれる。
(……主導してるのに、怖くはない)
手を引かれた感覚が、強くない。 それなのに、迷わない。
転びそうになると、自然に支えてくれる。
(……この子、大きくなったら、絶対モテるだろうな。)
そう思った。
後から聞いたら、まだ七歳だった。
(私は九歳だしギリギリ婚約者候補に入れるかしら?)
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令息・エリオット視点(リナと踊った少年)
正直、最初は緊張した。
クロスフォード伯爵家の令嬢。 噂通り、綺麗で、隙がない。
そして、姉弟は、完成されすぎている。
令嬢リナは、社交の見本。
踊り始めてすぐ分かった。
(……上手い)
主導権を奪わないていどに、こちらを立ててくれる。
周りの視線が集まるのも当然だった。
弟ユーリは、将来の主役。
(……並ぶと、説得力がある)
ダンスを見て、確信した。
あれは「教育」だけじゃない。 本人が、場を理解している。
七歳で、あの落ち着き。
堂々と令嬢を誘い、踊る。
(……あれ、次男だよな?)
後で聞いたが、母方の伯爵位を継ぐらしい。
(……なるほど)
納得した。 あれは、そういう器だ。
正直、同じ伯爵位を継ぐものとしては、脅威だ。
ご近所さんとして、ぜひお友達になろう。
僕のほうが年上だが、幸いリナ嬢とは同い年だ。
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やんちゃそうな令息・カルロス視点
すげぇ、って思った。
七歳で、あんなにちゃんとしてるの、反則だろ。
同い年って後から聞いて悔しく思った。
俺は剣は得意だけど、ダンスは苦手だから、今回は、踊ってない。
母上にダメって言われたから。
でも、あいつは違う。
(……逃げない)
誘う時も、踊る時も、堂々としてた。
(……貴族って、ああいうのか)
ちょっと、悔しかった。
(……俺も、ちゃんとやるもっと頑張ろうとおもう。。)
剣だけじゃダメだな、と思った。
学園では、同級生になるし、仲良くなりたい。
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姉・リナ視点
(……ちゃんと、誘えたわね。ふふふ。キリッって感じで可愛カッコいいわ!流石私の弟ね。)
遠くから、ユーリを見ていた。
手を差し出す所作。
声の落ち着き。
相手を見て、間を取る。
(練習した通りできてるわ!)
でも、それ以上だった。
(うん。ユーリ、とても楽しんでるみたいね。)
義務じゃない。
緊張はしていても、怖がってはいない。
(……よかった)
弟が、社交を嫌いにならなくて。
(あの子なら、これからも、大丈夫そうね。)
姉として、それが一番嬉しかった。
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母・アリア視点
庭園に、風が通る。
花と香草と、子供たちの緊張。
(……あの子、ちゃんと呼吸してるかしら。あっ、ちゃんと誘ったわね!)
無理はしていなさそうね。背伸びは少ししてるかも緊張してるのがわかる。
(でも、自分の足で立ってるわね。周囲の視線を一身にうけながらでもちゃんと立ってる。)
踊る姿を見て、安心した。
才能は、もう分かっている。
でも、社交は違う。
壊れやすい。
(ユーリは、大丈夫そう。安心したわ。)
それが、何よりだった。
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父・アーサー視点
(…及第点。いやそれ以上だ。)
そう、静かに評価した。
誘い方。 踊り方。 終わり方。
すべてが「次につながる」。
(……目立ちすぎない。いや、容姿は仕方ない。愛する私のアリアにそっくりなんだから、皆注目するだろう。しかし、それ以外は、少し優秀そうな子の許容範囲内だ。)
それが重要だ。
あまりに派手すぎ、優秀すぎれば、警戒され、足を引っ張られる。
未熟なら、侮られる。
今のユーリは、そのどちらでもない。
(……いい位置だ。そのまま、仲間を増やせ。それが一番だ。)
伯爵位を継ぐ者として、 今、一番安全な場所に立っている。
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周囲の大人たちの感想
「……あの子、母方の伯爵位を継ぐそうだぞ」
「ほぉ、なるほど、納得だな」 「七歳で、あの所作はなかなかだだが、ハーフとはいえエルフだしな。」
「エルフにしては、早熟だが、特に焦りはないな」
「家族が、ちゃんと守っているんだろう。」
別の輪では。
「婚約は、まだ先だろうが……」 「“覚えておく”価値はある」
「将来、争奪戦になるかもな」 「今は、静かに見ておくべきだ」
さらに低い声で。
「……危うさがないのが、一番怖いな」
「才がある子ほど、崩れるものだが」
「……あれは、長く残りそうだ。」
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庭園には、まだ音楽が流れている。
子供たちは、楽しかった記憶として。
大人たちは、可能性として。
同じ光景を、違う重さで見ていた。
ユーリ・クロスフォード、七歳。
彼が踊った一曲は、 すでに社交界の片隅で、「将来、覚えておく名前」
として、静かに刻まれていた。
――第十三・五章(閑話)・完
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




