第一章11 静かな日常と覚醒
全面的に自己責任でお願いします。
七歳という節目~置いていく研究、刻み始める文字~
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七歳になった。
特別な儀式があるわけでも、急に何かが変わるわけでもない。 けれど、朝の空気が少しだけ違って感じられた。
(……一つ、区切りだ)
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アロマポットは、すでに完成している。
安定した火、穏やかな拡散、耐久性。
アロマオイルも二十種類。
鎮静、集中、回復補助、睡眠導入、すべて鑑定済みで、家族用として問題はない。
それ以上は、手を伸ばさなかった。
(今は、置いておくことにしよう。種類も多いし、ハマり過ぎて、やり始めたら他に手が行かない。)
完成したものを、無理にいじらない。
必要になった時に、続きをやればいい。
それができるようになったのは、 少しだけ「待つこと」を覚えたからだ。
◆◆◆
両親は王都から戻ってきた。
社交パーティのシーズンが終わったからだ。
この時期は、昼に会議なんかもあるらしい。
貴族の当主は、基本全員参加だ。
これに何年も出席できない場合は、強制的に当主を交代させられる。
出れない=貴族の勤めが果たせない。ってみなされるからだ。
他にも、三代交代制って呼ばれる制度もある。
三代目が家を潰したり、犯罪したりする事が良くあったから、怒った時の王様が制定したらしい。
三の倍数の当主は、何らかの手柄を立てないと爵位が下がる因に父がこれにあたり、領地経営で手柄をあげて、母を嫁にもらったらしい。スゴい。
同じ伯爵家でも、エルフ家系のははの実家は上位だそうだ。
「兄さんに会ってきたんですね」 「ああ」
父は頷き、母は優しく微笑む。
「元気そうだったわよ。顔つきが、少し大人びていたし、学園にも、よく馴染んでいたわ」
(……よかった)
離れていても、同じ方向に進んでいる。
それだけで、胸の奥が軽くなる。
◆◆◆
アロマから一歩引いた代わりに、 僕が向き合い始めたのは、古代文字だった。
鑑定で視える、失われた魔術言語。
今の魔法陣よりも、もっと「意味」に近い文字。
前世で知っていた漢字と、構造が似ている。
それは、一文字に「概念」が詰め込まれている。
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木片を削り、表面を滑らかに整える。
細い刻印刀を手に取り、深呼吸。
刻む文字は、たった一つ。
『光』
点と線。 上から、下へ。
意味を壊さないよう、形を崩さないように。
次に、補助文字として小さく添える。
『微』
(強くしない。灯りでいい)
刻印が終わると、錬金術で固定。 魔石をはめ込み、魔力を流す。
――ぽう。
木片が、淡く光った。
◆◆◆
鑑定。
【簡易灯火魔道具】
刻印古代文字:『光』『微』
効果:微光発生
持続:短時間
安定性:低~中
備考:実用最低限
――――
(……成功。でも、これ『光』『明』『灯』どれでもいいのかな?まだ分からないことが多い。たしか、レオン先生が、高等科で研究されてるって言ってたよな。)
派手ではない。
けれど、意味を刻み、機能を生むことはできた。
◆◆◆
別の日、母から言われた。
「来年、リナが学園に入るでしょう?」
「はい」
「その前に、あなたも一緒に学びましょう」
「マナーと、社交ダンス」
(……僕の為だな。)
「はい。」
リナは十一歳。
貴族としての基礎は、すでに身についている。
つまり、姉の訓練ではない。
僕が“恥をかかないため”の準備だ。
◆◆◆
実際、教えられるのは僕だった。
「姿勢、背中」
「目線は、相手を見すぎない」
社交ダンスも同じ。
「主導はしても、支配しない」 「一緒に動くの」
(……魔術より、難しいかもしれない。でも、転生特典のおかげで何度かすれば、身体かきちんと動く。前世は運動音痴だったから楽しい。)
学ぶ価値も意味もある。
◆◆◆
夜、いつものように、ノートに書き留める。
・年齢:七歳
・アロマ研究:一旦保留(完成済)
・古代文字:『光』『微』で簡易魔道具成功
・マナー/社交:基礎開始
七歳の僕は、 研究を一つ置き、 文字を刻み、 人としての基礎を積み始めた。
まだ表には出ない。
でも、確実に前に進んでいる。
――第十一章・完
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




