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第6話

◆翌日の放課後


「じゃあ上桑は、外国人ともよく戦うのか?」

「よくかは分からないけど、10戦以上はしていると思う」

「やっぱり日本人とは違うもんか?」

「やっ、体重は一緒だしね。そこまで大きな差を感じたことはないかな?強い人はどの国でも強いし」


昨日までの放課後が嘘のように、上桑はクラスメイト達との会話を楽しんでいた。カラオケでは上手く歌えなかったが、皆が知っている曲を一緒に歌ってくれたお陰で楽しい時間を過ごせた。何より、お互いの名前と顔が一致したのは大躍進だろう。


(ああ、これこれ!俺が望んでいた青春は)


あの大会……FUTUREの国内予選が始まったのは上桑が高校一年の5月だった。そこからの丸1年間は練習漬けの日々。


結果を残し、ようやく会長やトレーナー達の監視の目が緩んできたお陰で、昨日はカラオケにも行くことが出来た。いやまあ、単純にダメージを抜くために一ヵ月は練習に来なくていいと言われたのもあるけど。


そんな楽しげな空気をぶち壊す暗雲が、カツカツと足音を立てて近寄ってきた。


「さあダーリン。今日こそ我が家に来て貰うわよ」

「やだよ。今日はボーリングに行こうって誘ってもらったし」


あまりにも素早い断りの言葉に、ハアアッ〜と美谷は盛大なため息を吐いた。


「あのねダーリン。よく聞いてちょうだい。結婚というのは二人だけじゃなくて家族同士のお付き合いでもあるの。子供じゃないんだから、聞き分けてね」


コイツは何を言っているんだ?と、上桑は冷たい視線を送り返した。


「そ、そんなにカッコいい目をしてもダメよ///」


無駄だったが。


その時だった。ブルブルとスマホが揺れたので上桑がラインを開くと、


『学校の前に車を停めているから今すぐ来い』


という短いメッセージ。それは、真柴からだった。


「ゲッ!」


ボウリングには行きたい。凄く行きたい。

しかし、真柴を怒らせると後が怖いしなと、上桑は一緒に遊びに行く予定だったクラスメイト達に頭を下げ、校門へと向かう。その間、ずっと美谷も後ろを付いてきた。


「あの、美谷さん。これから用事があるから」

「それは大丈夫よ。ダーリンの用事は私の用事でもあるから」


この女、頭沸いてんじゃねえの?なんて酷い感想を抱きながら校門を出ると、見慣れた黒いワゴン車が停まっていた。


「よお、チャンプ。悪いな突然」


運転席の窓から顔を覗かせた真柴は、対して悪びれていない表情でそう言う。


「本当ですよ、真柴さん。友達とボウリングに行く予定だったのに。それで何の御用ですか?」

「まぁまぁ。取り敢えず乗れよ。詳しい話は車内でするから」

「分かりまし」


と、上桑が言いかけた所で、美谷は車のドアを開けると後部座席にサッと乗った。


「あの、美谷さん……何をしているんだい?」

「さあ!ダーリンも早く乗って。真柴さんにご迷惑が掛かるでしょ?」


二人は知り合いなのかよ?


そんな嫌な予感だけを残してワゴンは走り出した。



◆車内にて


「どうもです、お嬢様。相変わらずお綺麗ですね。ユキカズとも上手くやられているようで一安心です」

「お陰様で。ただ、ダーリンが恥ずかしがり屋さんなので、いまいち心の距離が縮まらないのです」

「ハッハッハ。いやいや、その童貞君チェリーボーイにはお嬢様の美貌が眩しすぎるだけですよ」


車内では真柴と美谷が親しげに話しており、やっぱりかと上桑は頬を引き攣らせていた。


「真柴さん。美谷と知り合いだったんですね。それにお嬢様って」

「ん?……ああ、まだ聞いていないのか。ま、お嬢様ご本人から聞いたほうがいいんじゃないか」


そんな意味深な言葉を聞かされた上桑は、隣で楚々とした表情をしている美谷に視線を向けた。


「そうね。それでは私の母方のお話からしましょうか……私の母の旧姓は鈴木なの。聞いたことない?」

「多すぎて誰だか分からないね」


日本人の名字ランキングにおいて、1位か2位の名前だ。聞かずに生きる方が難しい。


「あら?じゃあヒント。貴方が保持するベルトに関係しているわ」

「はあっ?……それが、何だ……よ」


(いやいやいや!嘘だろ?いや、まさか)


俺が持つタイトルはFUTURE。これは、鈴木という富豪がメインスポンサーとして作られた団体だ


だとすれば、美谷家の母親の家系は世界でも有数の資産を保持する、超絶金持ちという事になる。


「そのまさかよ。メインスポンサーの鈴木は私の祖父母なの」

「……マジか」

「そもそもね。今大会を開いた理由は、私の花婿探しだったのよ」

「えっ?」

「お祖父様方がね。なんか胡散臭いのとお見合いさせようしてきたの。だから、実際に戦っている姿を見て、本当に強い人が良いと言ったのよ」

「それであの大会を開催したっていうの?」

「そうよ」


そんな馬鹿な話があってたまるか!……と思いつつ、コイツの家系ならやりかねない。と、上桑は頭を抱えた。


「あのさ。俺より強い人なんて沢山いるよ?それこそヘビー級の人とか、俺より確実に強いと思うけど……?」

「言ったでしょ?我が家は護身術がメインなの。身体が大きければ強いというのは当たり前。実践の領域においては、それよりも別の才能が大切なのよ」

「別の才能?」


(この女。まさか運とか言い出さないだろうな?)


「ええ。まあ、もうすぐ分かると思うわ」


美谷は意味深な笑みを浮かべると、窓の外に映る景色を眺めていた。




次回、御宅訪問!



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