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第3話

◆お姉さんの誘惑


ネオンが煌めく歓楽街の喧騒の中、俺は真柴さんに連れられて、場違いなほど豪華なキャバクラのソファに座っていた。


「わぁー、チャンプだぁ!本物だぁ!キャー!」

「かわいいー!何飲むー?」

「一緒に写真撮ってください!」


周りには、見たこともないほど煌びやかなドレスを着た女性たちが俺を囲んでチヤホヤしてくれる。俺は生まれてこの方、女性にはあまり免疫がない。顔が熱くなり戸惑うばかりだった。


お姉さんが真柴さん用の水割りを作ろうと少し屈んだ時だった。大きな双丘が見えて、思わず視線をそこへと移してしまう。


「キャッ!もお〜どこ見てるんですか〜?」

「いい、いえ!何も見てませんよ!?」


嘘である。チラリと覗く谷間をガン見していた。仕方がない。これはもはや本能だ。


お姉さんも嫌そうじゃ……ないよね?笑ってるし。


真柴さんも、そんな俺を見て楽しそうに笑っていた。


「ほら、コレがお前が求めていた世界だろ?このベルトのおかげで、お前はこんな世界に足を踏み入れられるんだ。なぁ、最高だろ?」


俺はコクコクと何度も頷く。女性たちの眩しい笑顔と谷間、真柴さんの言葉が頭の中で混ざり合い、俺の口から出たのは「最高です……!」という、どこか情けなくも弾んだ声だった。


ファン◯でシャンパンタワー?が作られ、俺は次々と注がれる炭酸を飲んだ。女性たちの『チャンプ、すごい!』という声と、真柴さんの『さすがチャンピオン!飲めるねぇ!』というヨイショに、俺はすっかりいい気分になっていく。


もはやお姉さん達が、『さすが〜、しらなかった〜、すご~い』しか言っていない気もしたけど、気の所為だろう。だって楽しいんだもん。


「おい、ユキカズ!」


そんな時、真柴さんが突然真剣な顔つきで俺に話しかけてきた。


「別席でな、お前へのサイン攻めがすごいらしいんだ。このままじゃあ、営業の邪魔になるって店長が困ってたぜ。お前もせっかくモテるようになったんだし、ここは一つ男気見せてやれよ」


真柴さんは、分厚い色紙のようなものを俺に差し出す。


「これ、この子たちに一筆書いてやれ。もちろん、ただのサインじゃダメだぜ。お前はチャンピオンなんだから、名言の『誰とでもやりますよ』って書いとけ。そしたらこの子たちも喜ぶだろ?」


誰とでもやるって……卑猥じゃないですか(笑)


頭の中は、女性たちに喜んでほしい、その一心だった。ペンを握り、真柴さんが指差した場所にふらふらと流されるがままに、自分の名前とあのセリフを書き込んでいく。


うっぷ……流石に炭酸を飲みすぎた。


眠い……。急激な血糖値の上昇からか、ひどい眠気が俺を襲った。そういえば最近まともに寝れていなかったしな。


コクコク、と船を漕ぎ出していく。


「ククッ……これで、お前はもう逃げられねぇぜ。チャンピオン」


その声が、俺の意識の最後の断片だった。



◆美谷という女


夢だけど夢ではない。睡眠中、整理するように思い出していたのだ。先日の放課後の出来事を。



「貴方の子供を産ませてちょうだい」


美谷は真剣なまなざしで俺に言った。いや、真剣でも半笑いでも俺の返答は一緒だ。


「……どういう意味?」


クラスメイトにそんな事を言われれば、頭が混乱するのは当然だし、何ならドッキリでも仕掛けられているのか?と疑って然るべきだろう。


「私の家はね。江戸時代から代々護身術を教えているの」

「そ、そうなんだ。凄いね」

「つまりね。そういうことよ」


日本語が疑わしくなる回答だ。


「つまり、の前段階が気になるんだけど?」

「あら?理解が遅いのね。まあいいわ」


男だったら数発は殴っているであろう不遜な態度。どれだけ運動神経が凄くても相手は女の子。落ち着け、上桑は拳を握り込んだ。


「才能豊かな跡継ぎが必要なの。おめでとう、貴方は選ばれたの」

「何にだよ!?」


俺のツッコミは虚しく宙に響いただけだった。


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