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銃と魔法 3

 


「何で一つも連絡をよこさないんだお前は!」


 拠点に帰ってきた俺は、帰って早々に上のやつに部屋に呼び出された。

 そして魔法使いを殲滅したはずの俺は目の前の男に怒鳴られている。


「連絡したくても出来ない状況だった」

「んな事あるか!トランシーバーはどうした!?」

「奴は必要な犠牲だった、トランシーバーが俺を救った」


 今までも、トランシーバーは俺を救った。

 奴はいい罠要因だ。


「また壊したのか!?あれだって無限じゃねぇぞ!」


 男が頭を抱えため息をつく。

 俺は魔法使いを殲滅した、何故怒られている。

 普通なら、泣いて喜ぶ所だ。


「帰って来いって言ってんのによ…死んだらどうするんだ」

「俺は生きてます」

「結果論だろそれは、もしものことを考えていないのかって聞いてんだぞ」


 目の前の男は紙にペンを走らせ、書き終わったそれを机の横に置く。

 男の名は西城、下の名は知らない。

 西城は三年前、俺の命を救ってくれた命の恩人と言っていい。

 向けられた視線は、クマを倒せると言える鋭さを持っている。


「俺の言ってる意味わかるか?少しは自分の命を大切にしろと言っているんだ」

「………何故?」


 言っている意味が分からない。


「何故って…生きたいと思わないのか、まだ18歳、まだ20代にも差し掛かってねぇだろ」


 西城の言葉を聞いた俺は反射的に答えた。


「18歳だから、生きるべきか?」

「え?なんだって?」

「18、まだ10代だから生きないとだめか?」


 18歳だから生きないといけないのか。

 18歳だから無茶をしてはいけないのか。

 この世界の未来に可能性があるか。

 このまま俺の余生は戦争続きのクソライフで終わる可能性の方が高いというのに、何もやらずに雑種の一人のように死んでいく…それが正しいか?


 全て否だ。


「生きることが必ずしも正解ではない…俺は死ぬその時まで…この命を燃やし続ける」


 全ては、魔法使いを殺すために…そのために俺の命は動いている。


「…はぁ」


 西城はため息を吐く。

 椅子から立ち上がり窓を開けてポケットから煙草を手に取り、火をつけた。


「必ずしも生きるのびることが正解じゃない…一理あるな」

「思いにふけっているところ悪いが、もういいか」


 俺がそう言うと、西城は一呼吸入れてからこちらを向く。


「研究班のやつらがお前に会いたがっている、たまには顔を出せ」

「持ってきた死体は向こうに回収させたぞ」

「そうじゃない、お前がやったのは手渡し、ちゃんと話して来いって言ってんだ」


 意味のない行動はしたくない。

 研究班に行かなくても、俺は死なない、研究班のやつらも死ぬことはない。


「………わかった」

「そうか、じゃ!さっさと行くんだな」


 渋々承諾すると、西城の声が少し明るくなった。

 西城に背中を押されて部屋を出る。

 コミュニケーションと言う奴か…恩人を悲しませたくない。



 ♦



 向かうは西城に催促された研究班の部屋。

 設備はそこそこ整っている、人一人の手術ぐらいは容易い。

 空調も整っているはずだが、よく異臭がすると話題上がる場所だ。

 今回は命令され来たが、本来はここには行きたくなかった。


『顔認証システム:顔を近づけてください』


 面倒くさい。

 顔を近づけると画面の中に緑色の横線が上下に動く。

 数秒後、甲高い音が鳴り、目の前のドアが開く。


 中に入る。

 研究班の構造はシンプル。

 今歩いている長い一直線の道、医療室、施術室、研究室、大きな広間の計五つ。


「や、ゾンビ君」


 大きな広間に入れば、全員が俺の方を向く。

 その中でも声をかけるのは、この頭のおかしなの女性だけだ。


「俺は人間だ」

「いや、君はゾンビだ、何せこの私がそう言うんだ」


 間違いはないと、女性は頭を上下させる。

 俺をゾンビと呼ぶ頭のおかしな女性の名は村上紗奈、西城同様、俺の命の恩人。

 こんなやつでも、この研究班の一番上の地位で天才だ。


「いいかい?君はゾンビだ、はい復唱」

「黙れ、俺は人間だ」

「高さ四十メートルあるビルの屋上から飛び降りて平気で着地、異次元に早い走るスピード、極め付けはゾンビ君特有の魔銃さらには自分自身の記憶がない…人間は要素はどこかな?」


 村上は、俺のおかしな点を挙げた。

 確かに、少しおかしいかもしれないが、それでも俺は人間だ。


「それだけでは、俺が人間じゃないと言えない」

「西城君が連れてきたゾンビ君を治療したのは私だ、断言するよ、君は死んでた…心臓はピクリとも動いてなかったよ」

「俺は生きている」


 村上は手をひらひらを上に向けて振った。


「だーからゾンビだって言ってんの、君は間違いなく死んでた。なのにどういう訳か息を吹き返した…天才の私でも解明できない難問を突きつけないでくれよ」


 ………ふむ。


「感謝する」

「褒めてないよ、まぁいいや…一体何の用事?」

「バカを言うか、お前たちが呼んだのだろう?」

「私呼んでないけど…あっまさか」


 証言のすれ違い、理解した村上は何かを察した。

 誰が呼んだか…俺の知る限りでは、村上とあと一人しかいない。

 研究室の方面、その方向からハイテンポの足音が近づいて来る。


「おい、用がないなら俺は帰る」

「え、あぁうん、じゃ」

「ビル待ってぇぇぇぇぇぇ!?」


 前から金髪の白衣を着た女性がブレーキ知らずに俺めがけて突進、足がこんがらがって転んだ。

 体を横にずらし金髪女性の突進を回避。

 女性は地面にべチンと全身を打ちつけた。


 恐らく、こいつが俺をここに呼んだのだろう。


「何で避けるの!?」

「逆に受け止めると思ったか?」


 俺に積極的に話しかけてくる金髪女性、

 こいつはヴィクシー・ビルリア。

 俺が二年前、偶然助けたハーフの女性だ。


「まったく、ビルはツンデレなんだから」


 立ち上がり白衣に着いた埃を手で払いながら立つ。

 歳はそんなに変わらない。

 助けたところの近くにある避難所に送り込もうとしたが、懐かれてしまった。


 避難所に送り込もうとすると、俺の背中に引っ付きヤダヤダと叫ばれるため、面倒臭いから折れた。


「その服装で走るのが悪い」


 白衣の中には上半身のラインがハッキリとしている服。

 下半身は股下から数える方が早いと思われる黒のタイトスカート…男を誘惑するには十分。


「ねぇビル?私とっても体が熱いの…何とかして?」


 ヴィクシーは俺の首に腕を回し体を近づけてくる。

 他の男ならイチコロだろうが、魔法使いにしか目がない俺に意味はない。


「氷食って寝ろ、村上、死体見せろ」

「へいへい、じゃあこっち来て」


 ヴィクシーの体を片手で押さえつけながら、死体のある場所まで付いていった。



村上はヴィクシーの見るたびに自分のスタイルと比べて日々泣いているらしいですよ。



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