押し問答
自宅付近までひとっ飛びでやって来た奈落は、玄関の眼の前で「ウェッ!」と僕を吐き出してくれたので、どうやら五体満足で帰宅する事が出来た。
奈落は消え去る前にこう忠告した。
「(*゜ε´*)もう二度と会う事も無いだろうが、一つ言っておく。儂の存在を、もし誰かに喋ったら、お前は身体の有りとあらゆる穴から出血して死ぬ事になる。だから絶対に口外してはならない。良いな!」
「ああ…(。-∀-)心配ない♪どうせ言っても誰も信じないさ!それにこんな事をまともに話した日には、気が触れたと思われて、即刻病院送りに成っちゃうからね?」
「( ̄~ ̄;)そうなのか?」
「そりゃあそうさ(>д<*)!五百年前とは訳が違うよ!今はそういう御時世なの♪」
「随分、変わり果てたんだのぅ…色々教えてくれて感謝するぞ(´_`。)゛♪」
「いやぁ~(。-∀-)♪自宅まで律儀に送って貰ったお礼だよ!後、ついでにもう一つ教えようか?」
「何だ(*`艸´)?」
「( ・∀・)僕が身体中から血を流して死ぬのはやめた方が良い!」
「何でだ( `ー´)!さてはお前この儂を騙すつもりじゃなかろうな?」
「違う(。-∀-)!そんな死に方したら…今時、司法解剖されて大事件になる…つまりは大騒ぎになるよ!騒ぎは君も嫌なんだろう?」
「そうだな…(* ̄◇)=3 それは困る!どうすれば良い?溺死とかはどうじゃ??」
『(-∀-`; )…どうしても殺す気だな!いったいどうしよう?喋らなきゃ良い話しだけど、僕も人間だからな…ついつい口に出る可能性が無いとは言い切れない。困ったな…』
私は少し悩んでしまった。第一、五体満足の僕と会った時の友人のリアクションも気になる。こちらもポロッと口に出しかねない。
「(^。^;)溺死も司法解剖されるよ…」
「じゃあ、どんな死に方が良い?お前が言ってみろ!参考にしてやろう( *´艸`)♪」
『(^。^;)厭に上から目線だな…まぁ相手はこの世の者じゃ無い存在だからね…仕方無い!』
私はしばらく考え込んでいたが、結局こう提案した。
「(。-∀-)…いっその事、僕の記憶を消すとか♪その方向は駄目かな?でもそれが一番安全なのでは?」
「ε- (´ー`*)まぁ、それでも良いが、そうすると葛籠も消えちゃうだろうがな!それで良ければ…」
「(〃´o`)=3 それは困る!あれは当価交換したものなんだから、それじゃあ狡いじゃん♪」
「(´・ω・`; )狡っ…小僧、お前言う事がどぎついのぅ…じゃあやはり死に方を決めてもらおう!」
「判った(;´∀`)!但し、こちらも条件があるよ♪それも君にとって有利な条件だけどね!」
「( `ー´)ほぅ~では聞こうか?」
「(。-∀-)♪それはね…」
私は説明した。山登りに行った関係者の記憶を消す事の安全性を、とても丁寧に、そして為るべく恩着せがましく、切々と説いたのであった。
奈落はとても感心している。
「成る程…(*`艸´)判った!その方がお前も、うっかり口に出す事が無いと言うのならば協力しょう♪だが、死に方は決めて貰うぞ!」
「え~(^。^;)やっぱり罷らない?」
「当たり前だ( `_ゝ´)!」
「チェッ(*゜ー゜)!」
私は再び考える。しかしまともな精神の持ち主ならば、自分の死に方を考えろと言われて、はいそうですかと答えられる訳がない。
そもそも死に方って何?…て感じだ。死とは…ある日突然やむ得ず降って沸いてくるから、受け入れるしか無いものであって、予め定まっているもんじゃあない。しかも自分で決めるものでは、尚更無い。
『(^。^;)記憶を素直に消してもらうか…?』
でもそれでは葛籠も消える。しかもその葛籠の中身もまだ確認すら出来ていない。もし仮に、つまんない物なら、記憶消して貰った方が良かったと、後で後悔する事に為るかも知れない。
「(〃´o`)=3 あのう…」
「何だね…( `ー´)?」
「(^。^;)私は本来、雪山からの転落死だったんですよね?」
「(*`エ´*)それで良いって事かね?」
「えぇ…(´_`。)゛それならば仕方ないかと?運命には逆らえませんからね!これはあくまで、本来の流れならば受け入れ易いだけですが…」
「判った(*`艸´)!では承ろう♪」
「あのぅ…(;´∀`)これって喋らなきゃ良いんですよね?」
「まぁそうだな…(*`艸´)それが条件だと言ったろう?」
「(;´∀`)でも、考えてもみて下さい!関係者の記憶を消す事が出来るんでしたら、その時に消せば済むのでは?」
「(*`エ´*)ナヌッ?この儂に、お前のうっかりの尻拭いをしろという事かな?」
「(^。^;)まあ、そうはっきりと言ってしまうと身も蓋も無いんですけどね!」
「(*`エ´*)それは駄目だな!」
「( ゜∀゜)面倒臭いとか?」
「( ;゜皿゜)ノシ 言い難い事を堂々と宣う輩だな…」
「まあ…(^。^;)命が掛かってますからね…」
奈落は厄介な事になったと嘆息する。すると"瓢箪から駒"というが如くに、クスッと笑った。
「(*`エ´*)この儂は人も喰わぬし、全くと言って良い程に善良だ!けれどもお前の期待に答えてやりたいが、それは必然的に出来ぬ相談だな!」
「その心は(*`▽´*)?」
「何だ!今度は落語の掛け合いかね?」
「落語なんて知ってんの?」
「まあ…落語家の恐怖を喰った事があるからな…」
「へぇ~その人はどうなったのかな?」
「文字通り、落伍したな…徳を積むのを忘れたようだ♪"落ち"が好きなんだろう?」
「それは気の毒…で答えを聞いてないけど?」
「ああ…我らは恐怖を消化したら、当該者の記憶は残らぬ…つまりお前の事は忘れるゆえ、その都度は助けてやれぬ!そう言う事だ♪」
奈落はそう宣うとドヤ顔を決め込む。してやったりという確信の顔である。
「( -_・)?嘘臭さいね…」
それはそうだろう。記憶が残らないなら、落語家の事を覚えている訳が無い。正に馬脚を露すという奴である。
私がそれを指摘してやろうとした時に、丁度 奈落も自分の失言に気づいた様で、突然ガッハッハと笑い飛ばすと、「この世に未練があり過ぎて未消化の欠片でも残っていたんだろう!」と大胆にもそう嘯いた。
「割といい加減なんだな…」とふと想った瞬間に、マシンガンの如く矢継ぎ早に事は進む。
「御主は先程、死を受け入れ、それを承諾したのだ。請け負ったものはもう変えられぬよ!儂は確認したな?そうだな?」
奈落はひつこく迫って来る。その態度には辟易してくる。私はつい鬱陶しくなって口走る。
「(^。^;)まぁ確かに言いましたけど…」
私がそう答えた瞬間に彼はニタッと笑った。
「そうだ(*`艸´)!お前は確かにそう言った♪これで話しは決まったな、じゃあな!」
奈落はそう言い捨てると、瞬きする間も無く、消え去ってしまった。
「えっ…(◎-◎;)早やっ!おいちょっと待ってよ!話し終わってない…」
私は慌ててそう叫ぶも、既にそこにはつむじ風のなごりさえも、もはや残ってはいなかったのである。