雪山の遭難
~prologue
全く冬山の登山なんて冗談じゃない。
始めは断ったんだが、どうしてもと頼み込まれて仕方無く参加したのは、やはり失敗だった。凍える様な寒さが、絶えず襲って来るのは頂けないし、おまけに案の定と言うべきか、途中吹雪となり、僕らは急遽ベースキャンプに戻る羽目になった。
山の天候は猫の目の様に変化するのが早いので、判断の遅れは即、命にも直結する。相方は残念そうではあるが、私の説得でようやく引き返す気になってくれた。ところが御承知の通り、山は登るのよりも降る方が難しいと言われている。
「((゜□゜;))あっ!」
それは刹那の事だった。私は訳が判らないままに滑落していた。身体が宙を舞った瞬間、彼がそれでも手を差し出してくれた事は瞳に残っていた。
ふと目覚めると、そこはへんてこりんな空間であった。私は宙に浮いたまま、上がったり下がったりしながら、宙を漂っている。どうやら死んでいなかった様だ。それは直ぐに判った。
視線の先には果てしない空間が続いていて、その先は薄暗く、先は見えない。首を傾けて左右を眺めると、両手を横に伸ばせば、恐らくは手が付く程の距離しかなく、横幅は極端に狭い。
そしてその壁の模様は、格子状になっていて、白黒の紋様に見えた。更に首を傾けて、真下を眺めた瞬間、私はギクリとして焦ってしまった。
真下の空間も、真上と同じ様にその先は見えなかった。底が見えない空間に漂っているのは、甚だ心許ないものだ。特に雪山から滑落した身としては、依りそう想えても不思議はあるまい。
但し、今の所は浮力が存在しているせいか、墜落する心配は無さそうだった。私はしばらくその状態で待ってみたが、特に何も起きる気配は無く、時と共に不安になって来ていた。
そこで私は大きな声を振り絞り、辺りに聴こえる様に叫んでみた。
「( ̄O ̄;)誰か居ませんか?誰かぁ…」と!
けれども辺りの気配に変わりはなく、シーンとしている。私はその後も何度となく叫び声を挙げてみたが、誰も答える事はなかった。
そんな調子で、私の心が折れ掛かって来た頃の事である。ふと私は静かな空間から感じる、奇妙な視線に気がついた。
気にしなければ、特に感じる事も無い、それはたわいも無い程の、気のざわめきだった。
「誰だ!(`へ´*)誰か居るのか?」
私はその目には見えない気配に声を掛けていた。無論、声を掛けてはみたものの、『そんな馬鹿な事があるものか…私も耄碌したな…』と感じていた。
けれどもそうじゃなかった。突如として、目の前の空間が、瞬きしたのである。そしてこう宣う。
「へぇ~お前、この儂が判るのかい?珍しい奴だな♪この儂の存在を感知した奴は150年振りだ。これは愉しみが増えたわい!」
そう言ってゲラゲラと笑い始めた。相変わらず空間は、時々瞬きしているものの、口を大きく開く訳ではない。
その変わりとして、笑いに合わせた大きな震動が身体を揺り動かすので、その度に胃を揺すられるためか、乗り物酔いに近い気持ち悪さに苛まれる。
「(´_`。)゛いい加減にしてくれ!正体を見せろ!」
私はこの不安定さに、遂に堪忍袋の緒が切れる。すると得体の知れないそいつは、奇妙な笑いを端と止めると、凄んだ様に言い放った。
「( ̄^ ̄)それは、無理な相談だな!なぜならば、お前は今、私の食道に浮いているのだからな♪」
「なっ((゜□゜;))!なんだってぇ?」
私は驚いてロをアングリと開けながら、呆けてしまった。
「では…(*≧ω≦)そろそろ自己紹介といこうか?儂の名は奈落だ。儂らは人の目には見えないが、もう何億年も前から存在している…」
「…そしてこの世に創像された生き物の恐怖を喰って生きているのさ!特にお前ら人間の恐怖は極上の味がする。儂らは特に山や谷の淵を好む。ゆえに奈落だ。別名を淵神とも言う…」
「…つまりお前はこの儂に呑まれたのだ。御馳走さん!なかなか美味だったぞ♪」
彼はおもむろにゲップを「グエッ」と放つと、愉しそうにまたゲラゲラと笑い出したので、空間の振動がこれまた半端ない。
「(TДT)うっぷ…」
私はもう少しで吐きそうになってしまった。その口臭足るやこれ以上は無い程の臭さである。まるで硫黄の臭いが漂って来る。
「"(`へ´*)この私をいったいどうするつもりなのだ!」
胃の辺りを押さえながら、顔を歪めているため、そう口にするのが精一杯と言った有り様である。
「そうだな…(*≧ω≦)それは趣向による。時にはその後、肉体をも喰らう者もいる。そして口から吐き出す者もいる。口から吐き出された者は、雪に埋もれて、春先に発見される場合もあるし、全身打僕で命を永らえる場合もある…」
「…喰われたら助からない。これは消化された後に、白骨となって臀部から排出される。つまり助かる目はないって事さ…」
「…あいにくと儂は、喰う趣味は無いから、まだお前が確実に死ぬかどうかは決まっておらぬ!まさにお前次第ってとこかな?」
「(`へ´*)それで私をどうするつもりだ?」
「そうだな…(*≧ω≦)私は喰わぬ変わりにその者の善意を測る事にしている。お前はこれまでの人生で徳を積んで来たから、ここまでは生き残ったのだ…」
「…そこで尋ねる。お前が持っていたのは、この金のハーケンか?それともこの銀のハーケンか?それともこの普通のハーケンかね?(。-∀-)♪」
「(*゜ー゜)…普通のハーケン!」
「(*`▽´*)ほぉ~お前は何と正直者…」
「(^_^;)否、否…今時そんな問い掛けやばいから♪誰も騙されないから!」
「えっ(´・ω・`)!そうなのか?…参ったな!千年前に底なし沼に凄みつく蟒蛇から聞いたばっかなんだけどな…」
『(-∀-`; )…』
「判った( ;`ー´)♪仕方ない!お前は合格だ!命は助けてやろう♪しかも儂の宝物の中から、一つだけお土産を与えてやる事にする!」
「まじで( ・∀・)!ラッキ~♪」
「では…ここに大中小の葛籠がある。どれが欲しい(*`▽´*)?」
「((゜□゜;))げっ!またかよ…それも蟒蛇に教わったのかい?」
「否…(*`▽´*)これは五百年程前に大恐慌から聞いた…」
「それも古い( ;゜皿゜)ノシ!!」
「(´⊂_`;)そ、そうなのか…じゃあいらない?」
「(*´▽`)否!それはいる♪こんな目に合ったんだ!それに僕の恐怖の味は旨かったんだろう?何か貰わなきゃ割に合わない!」
「何だ…(*`艸´)偉く強欲だのう…さっきとイメ~ジが違い過ぎるぞ!」
「( ・∀・)ちゃうちゃう♪対価を払ったんだ!等価交換じゃないか?僕は慎ましさを美徳としてんだぞ!失敬だな?」
「それはスマン…(-∀-`; )では大中小の葛籠どれが…」
「(*゜ー゜)ププッ…そりは勿論、小で~す♪」
「ほぉ~( ̄~ ̄;)確かに欲の無い奴だ…では小をくれてやる♪」
「(*^ー^)ノ有り難う♪勿論、助けてくれるんでしょう?」
「(*`艸´)約束だからな!」
「(。-∀-)♪じゃあ、慎ましく小の葛籠を選んだんだから、せめて自宅に戻しておくれよ?」
「なぜじゃ(*´艸`*)?助けた時には、山の麓までと、相場が決まってるんじゃが?」
「(^人^)そこを曲げて♪そもそも僕は嫌なのにも拘わらず、登山に連れて込られて…それで災難に遭ったんだから、そのぐらいは負けてよ!」
「何だ( -_・)!そうなのか?調子の良い小僧だな!」
「(。-∀-)♪もしかして出来ないとか?」
「そんな事は無い( `ー´)!楽勝じゃ♪」
「じゃあ、頼む(。-∀-)♪」
「任せろ(*´艸`*)♪」
こうして僕は小さい葛籠と共に、生還を果たしたのである。