第97話 合同訓練1
俺の前に現れたのは、8人の男女。
皆、テレビや雑誌で見た事のある人ばかりである。
「本日は第1班と2班の合同訓練です。因みに結莉――水谷も第1班の所属です」
「凄い……【大いなる鐘】の精鋭中の精鋭じゃないですか……!」
「まずは第1班から紹介します。右から山王十郎。1班の壁役です」
山王十郎――【騎士】の上位天恵、4段階目の【天騎士】を得たSSの実力者。強面ながらファンも多く、山十のあだ名で世間では認知されている。大柄だが、その動きは繊細で、その立ち回りで多くの人間を助けた実績の持ち主。
「山王だ」
「伊達玖命です」
挨拶代わりの握手を交わす。
やはり強い。手から伝わる力強さは騙せないな。
「次に茜真紀。第1班のヒーラーは彼女です」
茜真紀――これまた大物。【回復術士】の4段階目【大聖女】を冠する若き鋭才。水谷と同じく20代半ばという年齢ながら数多くの実戦に参加。その美貌と、狙ったようなアダルトな衣装からファンも多く、水谷との人気を二分しているとかしていないとか。まぁ、これは命からの情報だ。
補足情報として、彼女も水谷と同じで女優業をしているものの、片や怪獣映画のヒロインだが、茜は恋愛ものの映画出演をし、イケメン俳優と絡む事が多いとか。
「よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
うーむ、近くで香る甘い匂いが……凄い色気だ。
「三人目は立華桜花。第1班の両翼の一人、水谷とは違ったタイプのアタッカーですね」
立華桜花――本当に第1班は凄いな。SSしかいない。【魔法士】の第4段階【賢者】を得たナイスミドル。白髪交じりで端正な顔立ち。丁寧にデザインカットされた髭。紳士を思わせる執事仕様の衣装。……というか、有名になると衣装にも凝るんだなぁ。
「新進気鋭の人物と聞いているよ」
「恐縮です」
この人は麝香?
イケオジってやつか、確かに男女共に人気あるもんなぁ、この人。
「四人目、ロベルト・郷田。彼は主に遊撃を担っています」
ロベルト・郷田――アメリカ系の母親と、日本人の血を引くハーフ。彫りが深く濃い顔つきながらも、顔を六尺手拭いで覆っている。というのも、彼は以前戦った羽佐間陣と同系統の天恵の持ち主だからだ。【下忍】4段階目の天恵【頭目】。完全に忍者のコスチュームである。これまたSS。
「にんにん! よろしくでござる!」
「よ、よろしくでござる……」
育ちは向こうらしいから、こういうのは仕方ないのかもしれない。この姿のまま写真集を出した事あったな、この人。
「この四人と水谷を含め、第1班です」
「おぉ、でも、越田さんは?」
「私は第2班の所属ですよ」
「えっ、そうなんですか?」
「私は主に班の実力向上に努めますので、3班、4班に入る事も珍しくありません」
「な、なるほど……」
凄いな、流石は【元帥】越田高幸。
【元帥】は全ての能力が大幅に上昇し、周囲の仲間にもその影響を及ぼす。班単位で成長させるには、彼の能力は非常に効果的。
正に、クランの代表として相応しい能力だ。
「次に第2班ですね。Sの城田英雄と、天音渚。Aランクの一色圭と前園彩香です。この四人は既にSS、Sが視野に入ってる状況です。実力は充分、後は実績を積むだけの状況です」
【聖騎士】城田英雄と【武将】天音渚。命が友達から貰ったという雑誌【月刊Newbie】の表紙を飾った二人。ニュービー……まぁ初心者とか新参者っていうスラングだが、彼らは新人ではないのだ。
しかし、一般人の認識は結構適当で、Aランクあたりからようやく認知されるようになるのだ。
それをわかってる出版社は、【月刊Newbie】のような雑誌を作り、Aランク以上の顔ぶれを紹介しているのだ。
確か来月の表紙はこの二人――【聖者】一色圭と【凶戦士】前園彩香が飾るとか、先月号に書いてあったはずだ。
「どうも」
「よろしくお願いします」
城田は表情が乏しく、何を考えているのかわからない感じがする。大盾は川奈さんと同タイプのプラチナクラスのものだ。
「よろしくー!」
「よろしくです」
反対に天音はテンションが高い元気系の女子。
甲冑を着込んでいるのは、天恵に寄せているのだろうか。
「ふん……」
「…………」
だが、一色圭と前園彩香は俺への対応が……うーんって感じだった。
「よ、よろしくお願いします」
二人の背中にそう言うも、返ってくるのは沈黙のみ。
なるほど、大手クランともなると、こういう問題もあるのか。
「すみませんね、伊達殿。彼らには後程強く言って聞かせますので」
日本唯一のSSSがこれほど低姿勢なのに、Aランクの二人が足並みを乱すというのは……クラン的に厳しい。
が、それもおそらくここだけの問題なのだろう。
何故なら、テレビで観た彼らは、リポーターに対し、ハキハキと喋り理知的な返答をする好感の持てる若者だからだ。
だから、内面はこうだとしても、表には出さない。
しっかりと管理は出来ているのだろう。
まぁ、俺なんてまだまだ顔も知られていないからな。
多少の雑な扱いは仕方ないだろう。
だが――、
「代表、このブロンズ塗れが俺たちの訓練を見学する意味ってなんすか?」
一色の言葉は、その場を凍らせるような一言だった。




