表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/327

第8話 証明

 その後、【超集中】を発動しながら、何度も素振りをし、【剣士】の天恵を【探究】し続けた。


 ――【探究】を開始します。対象の天恵【剣士】を更に解析します。


「はぁ……はぁ……いいね、馴染んできた……」


 ――【探究】の進捗状況。天恵【剣士】の解析度25%。


 相田さんが用意してくれた東寮の掃除も、中学生のようにモップを振り回した。


「おぉ……今の動きだと重心が心許なくなるのか。なら、()えてそれを利用すれば……」


 ――【探究】の進捗状況。天恵【剣士】の解析度41%。


 夕暮れになり、相田さんが帰った後も、俺は剣を降り続けた。


「はぁはぁはぁ……はは……ははは……!」


 剣を振れば振る程、自分の力が向上しているのがわかった。


「ハハハハハッ!」


 喜び、悦び……否。

 そんな生易しいものではないこの感情。(たかぶ)る気持ちが抑えられない。


 ――【探究】の進捗状況。天恵【剣士】の解析度64%。


 広場を使ってる他の天才たちは、若干引き気味になりながら俺を見ていた。

 確かに、今の俺の姿を見れば、(みこと)は俺を病院へ連れて行くかもしれない。

 それに気付いてからは、口を閉じた。しかし、ヒクつく表情を抑える事は出来なかった。


「やべぇよアイツ……」

「剣を振りながらずっとニヤついてる……」

「あぁ、ついにおかしくなっちまったか」


 などなど、散々な言われようだったが、今の俺には何も響かなかった。

 何故なら、剣を振れば振る程、自分に響くとわかっていたからだ。


 ――【探究】の進捗状況。天恵【剣士】の解析度75%。

 ――失敗。技術リソースが足りません。


「はぁはぁはぁ……なるほど?」


 素振りじゃ75%(ここ)が限界って事か。

 逆に言えば、これ以上の技術リソースがなければ【探究】は発動してくれない。

【探究】が何を求めているのかがわかった。

 実践の後は……実戦。


「ごめんな……(みこと)。ちょっと約束破るわ……」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 天才派遣所には仕事の依頼が潤沢にある。

 当然、それはモンスターの被害に対するものばかり。

 寮の掃除なんて本来あるはずもない。

 それを相田さんが、民間依頼にせず、定期的に俺へ回してくれていたのだ。

 しかし、今日の依頼は既に消化した。

 だから、別の依頼を受けるのだ。

 天才派遣所本来の仕事を。


「いつもありがとうございます、管理区域(、、、、)での哨戒任務(、、、、)ですね。お一人という事でよろしいですか?」

「はい、お願いします」


 普段、俺はこの時間に天才派遣所にはいない。

 情報として俺は知っていても、俺の顔を知ってる受付は多くないだろう。

 哨戒任務とは名ばかりで、付近に大型の門――通称ポータルが出現していなければ単純なパトロール任務である。

 これは警察と連携して行うものでなく、天才派遣所が独自に行うものだ。

 そしてそれは、低ランクの天才が受ける哨戒任務が非常に特殊だからに他ならない。


 (ポータル)とは突発的に出現するダンジョンへの出入り口である。そこからモンスターが出て来たり、天才たちがダンジョンに入り、そこのボスを倒したりする。

 天才派遣所はこれを効率化するために、一つの方法をとった。

 それがゴブリンダンジョンへ繋がる(ポータル)の保護である。

 高位ランクの天才たちが発見したゴブリンダンジョンの(ポータル)。それを攻略せずに天才派遣所で管理するのだ。これにより、(ポータル)から出現するゴブリンを強固な囲いの中で管理する。

 (ポータル)にこそ入れないものの、この管理区域に出現するゴブリンであれば、天才は狩り放題という訳だ。

 理由は勿論、ゴブリンの脳にある魔石である。

 魔石採取の効率化、低ランクの天才の育成、低コスト管理と国からの助成金。

 一石何鳥にもなる天才派遣所のマッチポンプ事業。

 ゴブリンから採取出来る魔石は、一個あたり1000円~3000円。

 十体でも倒せれば、東寮の掃除任務は卒業出来る。

 ……まぁ、相田さんへの説明は必要だろうけど。


 という訳で、低ランクの天才が受ける哨戒任務とは管理区域のゴブリン退治の事である。

 報酬は0円。討伐対象のゴブリンを倒し、魔石の換金で金を稼ぐ管理区域の哨戒任務は、Eランクまで簡単に任務を受ける事が出来るのだ。

 それ以上のランカーは、ゴブリンを全滅させる恐れがある事から、特別な依頼がない限りは任務自体受けられない。


「とりあえず、Eランクまではここでしっかり堅実に稼ぐ……とはいえ、哨戒任務はランクアップに影響しないんだけどな……ん?」


 遠目に発見した……ゴブリン三体。

 ゴブリンなら、この刃引きした訓練用の剣でも対処可能。

 だが、それ以上のモンスターともなれば、当然武器が必要になってくる。

 そのためには…………やはりお金が必要なのだ。


「はぁ……世知辛い世の中だなぁ……」


 そう呟きながら、俺はゴブリンの前に立った。

 そして――、


 ――【探究】を開始します。対象の天恵を得ます。

 ――成功。最高条件につき対象の天恵を取得。

 ――ゴブリンの天恵【腕力G】を取得しました。


「…………」


 どうやら、我が天恵は世知甘いようだ。

カクヨムにて先行掲載中。

気になる方は、お手数ですがページ下部のリンクから、カクヨム版へどうぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓カクヨムにて先行掲載中↓
『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。
↓なろうにて連載中です↓


『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ