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第65話 再鑑定1

「おはようございます、相田さん」

「おはようございます、伊達くん」


 何度繰り返したかわからない、相田さんとの挨拶。

 だが、今日はどこかぎこちない。

 それは俺だけではなく、相田さんも同じだった。

 今日は川奈さんも来ている。

 昨日一緒にチームを組んで討伐依頼をこなした時、事前に話しておいたのだ。

 川奈さんには俺の天恵の事を話していないが、彼女の前では戦闘スタイルを制限していないので、ある程度気付いていたみたいだ。

 俺を気遣ってなのか、「楽しみですねっ!」といつもの川奈さんでいてくれた事に感謝である。

 どうやら心配して今日も来てくれたみたいだし。

 川奈さんと目が合うと、ニコリと微笑んでくれる。

 なんとも有難い存在である。

 心が落ち着いた時、派遣所にどよめきが起きた。

 騒動の主……皆の視線を追うと、そこには越田高幸がいた。

 そして、越田の陰からひょこりと出てくる水谷結莉(ゆり)

 俺を見つけた瞬間、水谷は小さく手を振った。

 すると、水谷の陰から、ひょこりともう一人現れた。

 ……あれは、インサニアの山井拓人?

 何だこれ、マトリョーシカかな?

 しかし凄いな。

 今日この八王子支部には、(シングル)SS(ダブル)、更にはSSS(トリプル)までいるのだ。

 ここが日本の中心と言っても過言ではないかもしれない。

 時代は今、八王子かもしれない。

 山井は俺を見つけた途端、豪快に手を振った。


「玖命!」


 俺の名前に反応したのか、相田さんがこちらを見た。


「お知り合い……?」

「【インサニア】の山井拓人さんですよ」

「や、山――!?」


 咄嗟に自分で口を塞ぎ、相田さんは恥ずかしそうに顔を隠した。

 水谷が軽快な足取りでこちらまでぴょんぴょこ歩いて来る。

 友人の相田さんに会いに来た様子ではない。

 あれは、確実に、俺を見ている。


「やぁ、玖命クン」

「おはようございます、水谷さん……それと――」

「――話すのは初めてでしたね。伊達玖命殿」


 見上げる程の体躯。

 全身を最上級のミスリルクラスで固める重装備。

 日本唯一のSSS(トリプル)、【元帥】越田高幸。

 圧倒的存在感に呑まれそうになるが、彼の恐ろしさは実力だけではない。


「先日はこんな高価なものを頂き、ありがとうございました」

「何、面白いものを見せてもらった礼とでも考えてください」

「面白いもの……ですか」

「えぇ、とても興味深い一戦でした」


 眼鏡をくいと上げ、ニコリと笑う越田。

 表情こそ笑っているものの、その目は些かも笑っていない。

 俺を値踏みし、俺の全てを視ようとしてくるようなあの目。

 うーん、出来れば近寄りたくない人だ。

 まぁ、風光をもらった事は嬉しいのだが、彼に振らされていると考えると、早めに卒業しておきたい気もする。


「それにしても、まさかこんなに早く再会するとは思いませんでしたよ、山井さん」

「一昨日は助かった。おかげで越田殿とじっくり話す事が出来た。感謝しとるぞ、玖命」


 すると、越田が言った。


「私からもお礼申し上げる。早い段階で【インサニア】と繋がりが出来たのは僥倖(ぎょうこう)でした」


 この人の顔を見てると、どうも信用が出来ないのだが、気のせいだろうか。

 きっとこの人は、山井と繋がってなかっただけで、【インサニア】とのパイプは持っていたのだろう。

 (むし)ろ、繋がっていない方が不思議だ。


「い、いえ……ははは。と、ところで三人は今日は何故八王子支部に?」


 聞くと、水谷が教えてくれた。そう、キョトンとした顔で。


「玖命クンに会いに来たんだよ」

「……へ?」

「だって玖命クン、今日、再鑑定するんでしょ?」


 な、何故この人がその事を知っているのか……!?

 まさか相田さん? いや、彼女がそんな事をするはずがない。

 ならば一体誰が……!?

 その疑問に答えてくれたのは、越田だった。


「大手クランともなると、天才派遣所の上層部にも融通が利いてね。鑑定課のスケジュールを手に入れる程度の事なら朝飯前という訳ですよ」


 いつか、俺の子供が出来たらしっかり教えてやろう。

『こういう大人には、出来るだけなっちゃいけません』って。

 面倒臭そうな俺の表情を見、悪い大人たちが笑う。

 越田は勿論、水谷と山井もノリノリである。


「あの実力でFランクはおかしいと思っていたが、聞いて得心したぞ。玖命……まさかお主があの【無恵(むけい)の秀才】だったとはな」

「隠すつもりはありませんでしたが、報告する必要もないですからね」

「ほっほっほ、噛みつきよる」

「つまり今日は野次馬だと?」

「ふっ、言い得て妙じゃな。安心せい、実力者は皆通る道じゃからな」


 なんかこの前、似たような事を水谷にも言われたような気がする。


「今日の結果が楽しみだよ、玖命クン」


 ニヤリと笑う越田の視線を避け、返答を避け、ただ水谷に恨めし気な視線を送る事だけに努めた俺を誰か褒めて欲しい。

 俺が無情な世界を呪い、深い溜め息を吐いた頃、派遣所の自動ドアが開いた。

 やって来たのは白いローブを纏った……小さき少女? いや、少年だろうか?

 おどおどしながらも向かって来る少女?に、越田が笑う。


「おや、彼女が来ましたか。くくく、これは素晴らしい」


 俺は、少女の存在が気になり水谷に聞く。


「彼女、有名なんですか?」

「天才派遣所で唯一【鑑定】を成長させ、高位の天恵【魔眼】を得た鑑定課のエース――【四条(しじょう)(なつめ)】」

「へぇ……」


 驚いた。

【魔眼】なんて天恵、聞いた事がない。


「昨年、天才派遣所に入ったばかりの……元高校生だよ」

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