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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第六部

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第350話 ◆動く闇4

 黒装束の集団に襲われている山井が苛立ちを見せる。


「くっ! 少しは老人を労わらんかっ!」

「はははは、老人扱いしたら怒るくせにー」

「飯田ァ! ちょっとこっちに来い、可愛がってやる」

「いやー怖いっすねー!」


 先程まで攻め切れずにいた山井だが、【将校】飯田(いいだ)(はじめ)による戦力増加能力により、山井が押されつつある状況。

 強気で飯田に声をかける山井だが、それが強がりだという事は、飯田にはわかっていた。


(この状況なら、ソッコーで山井の爺さんをボコして……命謳の連中を迎え撃てばいいかな~……)


 そんな飯田の考えを見透かしているのか、ここぞとばかりに山井が動く。


「ふんつ!」


 山井は自身に向かってきた投げナイフを飯田に向かって撃ち返す。


「あぶ!? あっぶ!?」


 飯田は辛うじてかわすも、次の一手をかわす事は出来なかった。


「っ!? 何だ……これ?」


 飯田の頬を掠めたのは、山井が打ち返した投げナイフではなく、闇夜を駆ける銃弾。

 頬を伝う血に触れ、その軌道を読む。


「当たった!? 今の当たったでしょっ!」


 弾む声。

 その声を聞き、驚きを見せる山井。


「あずっちっ!? 何故こっちに来たんじゃ!?」


 山井の驚きは当然と言えた。

 月見里(やまなし)が向かったのは御剣が寝泊まりしているホテルの部屋。

 しかし、月見里(やまなし)の近くに御剣はいない。


「いなかったのよ!」


 月見里(やまなし)のその言葉で、山井は全て理解した。


「何とっ!? ちぃ、敵のが一枚上手じゃったか……!」


 御剣は、山井が最初に襲われた段階で既に(さら)われていた。

 月見里(やまなし)が黒装束の男を一人怯ませた後、その男は山井によって倒された。しかし、その時既に、敵の行動は全て終わっていたのだ。


(ならば、今ここで(わし)と戦っているのは単純な遅滞戦闘! あずっちが応援として来た今、奴らの次なる行動は……!)


「初めて見る相手だけど、装備を見る限り斥候……うん、速いね。【脚力】系の天恵っすねー」


 飯田は月見里(やまなし)の動きを見ながら、即座にその天恵を見極めた。

 しかし、月見里(やまなし)が持つ武器については情報を持っていなかったのだ。


「何すか、その銃? ……これまでの銃とは威力がダンチじゃないっすかー?」

「こんのっ!」


KW-00T(レックスT)】を使い、飯田を狙う山井だが、相手は第四段階【将校】。戦力向上さえされていないものの、集中していればかわせない事はない。


「ふんふん……ランクC、Bくらいなら対処出来そうっすね。ふんふんふん……なるほど、ちょっと怖いっすね。はいじゃ、撤退って事で」


 そう言って飯田は手をポンと叩き、山井の予想通りの動きをした。

 だからこそ山井は反応出来た。

 飯田が撤退行動に移った時、周囲の動きを搔い潜り、一直線に飯田に向かえたのだ。


「っ! ちょ、狙ってたんすかっ!?」

「ほっほっほ、伊達に長く天才やっとらんわっ!」


 飯田への一撃。

 確実に捉えたその胴体。

 山井も、当の飯田でさえも致命傷だと理解した。

 そのはずだった――。


「ぬぉっ!?」


 弾かれた山井の双剣。

 離れて行く飯田の背中は追わず、山井は痺れる手を見た後、飯田への双剣(こうげき)を止めた犯人を見据えた。

 睨むような視線を受け、犯人は言う。


()ヒヒヒ(、、、)……怖いなぁ、玖命君(、、、)のお仲間は……」


 遠目に見える男の正体。

 月見里(やまなし)、山井はその存在感に、身体が動く事を拒否した。

 飯田率いる黒装束の集団が逃げようとも、身体が最優先に選択したのは――警戒。


「あずっち……」

「何よ?」

「ちと撃ってみてくれんか? 弾薬代は儂がもつ」


 50m程先にいる男に向かって指差し、山井は言った。勿論、月見里(やまなし)の懸念事項を踏まえた上で。

 そこまでする理由を、相手の存在感という答えに見出した月見里(やまなし)は、【KW-00T(レックスT)】を納め、【KW-00K(コアトルK)】を選んだ。

 最高弾速を誇る狙撃銃を選んだ月見里(やまなし)に間違いはない。

 山井はそれを止めず、ただ、その行く末を見守ったからだ。


「……っ!」


 月見里(やまなし)が【KW-00K(コアトルK)】を撃った直後、男はゆらりと揺れた。しかし、【阿修羅】に達した山井は視た。

KW-00K(コアトルK)】の弾速を一瞬で見極め、掴み、握り潰し、その残骸の粉末を投げ返す男の姿を。


「ちぃ!」


 即座に山井が動き、剣の結界を敷く。

 ショットガンにも匹敵するその威力を山井はかき消し、月見里(やまなし)を守りつつ、その男が消える姿を……最後まで見つめながら。


「ヒヒヒヒ……」


 そんな笑い声を耳にしながら。


「………………何じゃアイツ……こわっ」

「何よ山じー、知らないの? 城田よ、城田(しろた)英雄(ひでお)

「城田? はて、どこかで聞いた事が……?」

「やーがーみ! 八神(やがみ)右京(うきょう)! これならわかるでしょっ!」

「おぉ、玖命が倒した【大いなる鐘】のはぐれか。なるほどのう……いやぁ、中々ヤバい相手じゃのう……」


 山井の言葉を聞き、月見里(やまなし)が焦りを見せる。


「あやつ、かなり強い。攻撃に回られればちと危なかったのう……」

「何? 山じーより強いの?」

「むぅ……どっこいどっこいといったところかのう? 更に飯田、あの黒装束の連中まで加われば……負けとったかもしれんのう」

「うわやば。でもそれなら何で相手は逃げたのよ?」

「『かも』と言ったであろう? あの応援を八神が捌き切れるかは難しいからのう」


 言いながら、山井は駅側を指差して行った。

 山井の指先に見えたのは――二つの影。


「なるほど……ららちゃんと水谷ちゃん……来てくれたんだね」


 そう、応援に駆け付けた水谷と川奈が間に合ったからに他ならなかった。

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