第342話 ◆睨み合う二人
日本一のクラン、【命謳】の【特攻隊長】――【鳴神翔】。
関西を牛耳る巨大クラン【インサニア】の代表【番場敦】。
両雄が睨み合ってからものの数分でギャラリーが集う。
片やハンドポケットでメンチを切る鳴神。
片やドレッドをかき上げ涼しげな顔をする番場。
ギャラリーにより、フラッシュがたかれ、ライブ撮影が始まる。
当然、その情報をいち早くキャッチし、仲間を通じてライブ映像を流し始めたのは――、
『こんにっちゃーん!』
そう、北の【ポ狩ット】代表【米原樹】が二次元キャラクターに扮し、様々なネタを提供する【KWTubu】――通称【カウツベ】の超有名チャンネル【樹子姫のGoTo天チャンネル】が始まったのである。
――こんにっちゃーん!
――さっそく始まってて草
『今日は例の【命謳】の話題で進めようと思ったけど、【命謳】の違う話題に変更しましたー!』
――ちょっと何言ってるかわからないよ……。
――【命謳】ってある意味コンテンツお化けだよな。どこ切り取っても面白い。
――多分、例の話題ってのが【命謳】ビルに軍用走行車両【KW-ZXM】が突っ込んだ件だろうな。
――じゃあ、違う方は?
『そのコメントを待ってましたー、じゃん!』
――SEが追い付いてない。ぶっつけ感満載。
樹子姫の肉声SEと共に切り替わるライブ映像。
そこには、鳴神と番場が睨み合う姿が映っている。
『既にネット上で大騒ぎになってるこの現場にいるのは、【命謳】の鳴神翔さんと、【インサニア】の番場敦さんですー!』
――もう面白い。
――何この構図wwww
――草
――どこだよこれ?既に野次馬だらけじゃん。
――どいつもこいつも二人に近寄れてないの草
――一般人の安全マージンのとり方がガチ。
――二人の間に入っただけで死ねそう。
――これ、睨み合ってるだけで投げ銭飛びそう。
――睨み合いだけで家が建つレベル。
『かれこれ30分以上睨み合ってるらしいです! この後どうなるのか、いっちゃん気になるー! …………むっ!?』
――鳴神が動いた!
――ポケットから何か取り出したぞ?
『……真っ赤な…………櫛?』
――髪を整えてるな。
――身だしなみは大事だよな。
――特定した。漢気ブランドの【情熱の櫛】69万8千円。
――たっっっっっっっっっっっか
――知らないブランドなんだけど?
――サイト覗いたら鳴神みたいな男が沢山モデルしてたわ。
――つーか、モデルの中に鳴神がいて草
『あっ……!』
――櫛を戻したな。
――69万8千円だぞ。折れたりしたら霞食うしかないだろ。
――お前はな。鳴神はSS。普通に金持ち。
――絵が動かないでござる。
――振出しに戻っただけで草
『何か……退屈だね』
――司会が絶対言っちゃいけない言葉だろww
――あ、でも今度は番場が動いたぞ?
――スマホじゃね?
――何するつもりだよ?
――翻訳アプリじゃね?鳴神のヤンキー言葉ってたまに訳わかんねーし。
『電話してる……みたい?』
――この場で電話とかどういう選択肢だよ?
――あ、鳴神の青筋一本増えた。
「よぉ」
――シャベッタァアッ!?
――誰にかけてるんだろ?
「テメーんとこの猛犬がこっちにいるんだが、どういうつもりだ?」
『え? 伊達きゅん? 伊達きゅんに電話してるの!? 何で? 何で電話番号知ってるのっ!?』
――そりゃ伊達なんだから普通に名刺交換とかするだろ。
――相手は番場だぜ?流石に軽率じゃね?
――必要があったから連絡先交換したって事だろ。それぐらいわかれ。
――というか、いっちゃん誰か止めろよ。
――残念、小林は今、北海道だ。
――まぁ、伊達の事になると、これがいっちゃんのデフォルトだからな。仕方ない。
『ふぉ……ふぉおおっ! ばんばぁ! ずるい! ずるいよっ!?』
「あぁ? GoTo天チャンネル? あぁ、あのスマホか」
――はい、番場の視線頂きましたー。
――コワイ。
――3兆人くらい殺してそうな顔してる。
――このスマホだってどうやってわかったんだよ。
――おい、司会。説明しろ
『えー? 多分番場が「GoTo天チャンネル」って言った時に一番緊張した人に目を向けただけでしょ。現に鳴神も同じタイミングでこっち見てたし』
――樹子姫情緒不安定也
――の割にはすげぇ的確なコメントで草
――既に番場も鳴神も呼び捨てなんだけど?
――オープニング時のキャラどこ行った?
『スピーカーフォンにしてくれないかにゃー……?』
――一瞬で媚びた声になったぞ、おい
――姫なんだから当然だろ。
「テメーの飼い主が電話かわれってよ」
――宙に舞うスマホ
――受け取る鳴神
――そして通話へ……
「あぁ? 何だかややこしー事になってんな? あぁ? あー。あー……んで? あぁ!? ちっ、わーった! わーったよ! 頭がそう言うならそうすらぁ!」
――伊達って鳴神に頭って呼ばれてんのか。
――じゃあ、鳴神は舎弟か。え、いらない。
「おう……おう! おらよ!」
――宙に舞うスマホ
――受け取る番場
――そして通話へ……
「あ? ……なるほどな。了解だ」
――おいおい、電話一本でこの場を鎮めたのか!?
――そりゃ、日本一の男ですから。
『話の内容が気になるにょおお! いっちゃんも伊達きゅんに電話するー!』
――樹子姫ご乱心
――伊達、姫の電話はとらなくていいぞ。
「ここじゃ人目につく。場所変えるぞ」
「はん、付いて来れるかよ?」
――あ、消えた。
――えぇ……この時間……いる?
――以上、たっぷり人目についた後でした。




