表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
324/327

第319話 独占インタビュー1

 結局、皆に押し切られ、御剣さんの取材を受ける事になった。

 最近、皆に俺が押しに弱いというのがバレてしまっているようだ。

 このままだと、【命謳】の代表として問題なんじゃ……とも思うが、それを考えたところで、やれる事は限られている。

 うん、頑張ろう。

 NOと言える男になるんだ。

 ところで、川奈さんと四条さんが、さっきからチラチラとこちらを見ているような気がする。


「……えっと……何か?」


 俺が言うと、四条さんはハッとした様子で言う。


「あ、いや! 何でもないぞ! うん、いいんじゃないか、スーツってのも。悪くない悪くないぞ」


 続き、川奈さんもうんうんと頷く。


「濃紺、とても良きです! はい! 前に言ってた柄ですね!」


 そうか、今日はスーツを選んだから、それが気になっていたのか。

 悪くない評価のようで安心した。


「命謳のネクタイとカフスが良い仕事してるな。らら?」


 四条さんが隣に座る川奈さんに言う。


「はい! でも、内側のベストも良いですねぇ。伊達さん、スタイルが良いから、シュッとして決まってますっ!」


 2人してうんうん頷く姿に、俺は困惑する。

 うーむ、そんなに似合っているのだろうか。

 ベストは(みこと)のチョイスだが、間違いはなかったようで安心だが……もう一つ気になる事がある。


「どう、(よしみ)?」

「うん、私の目に狂いはなかった……! ありがとう、結莉(ゆり)。呼んでくれて。有給使った甲斐がある……!」


 水谷がいるのはわかるのだが……何故、応接スペース脇に相田さんがいるのか……?


「玖命クン、笑って笑って!」


 咄嗟の事で、俺は水谷の言葉に反応してしまった。


「え、こ、こうですかっ……?」


 ぎこちない笑みを浮かべると同時、水谷がスマホのシャッターを切る。

 がしかし、それは至る所で聴こえた。

 カシャカシャという連続音が水谷、相田、四条、川奈、たっくん、月見里……何か、たっくんと月見里さんの間に米原さんが見えるのは気のせいだろうか?


「あ、伊達さん、撮っていいですか?」

「あ、私もっ!」


 川奈さんと相田さんの事後撮影許可申請。


「い、いいですけど……」


 言うと、御剣さんが来る前だというのに、俺の目の前から凄まじいシャッター音が聞こえ始める。


「伊達、こっちに視線よこしなさい。【命謳】の【ツイスタX】公式に載せるから」


 月見里さんはクランが証拠保全用で購入している、目玉が飛び出そうな金額のカメラを構えている。


「玖命、こっちじゃ! 見下ろせ! 否、見下すんじゃ! そう、そうじゃ!」


 たっくんは這いながら、あおりの角度で写真を撮っている。

 何故だ……。


「ほっほっほ、特殊な趣向を持ったファンクラブ会員が垂涎(すいぜん)ものの写真が撮れたぞ……!」

「山井殿、そのゴミムシを見るような伊達きゅんの写真……いくらでしょうか?」


 写真を眺めながら言うたっくんに、隣の米原さんがとんでもない事を口走ったような気がする。

 ファンクラブのプレゼント配布状況って今どうなってるんだろうか……恐ろしくて聞けない。

 いや、たとえ聞いたところで、四条さんが教えてくれないだろう。以前もそんなやり取りがあった。……何故だろう。

 昨晩(みこと)が何か言ってたんだよな。


『お兄ちゃん、学校の女子に大人気だよ』


 人気だという事は嬉しいし、有難いのだが――、


『学校で【命謳研究会】って同好会も出来てた。まぁ、会長は明日香で、副会長は玲なんだけどね』


 八南高校に生徒の在り方というか、生態というか……そういうのを崩してしまっているような気がする。

 とはいえ、やはり天才が受け入れられないという風潮は未だ残っている。

 最近までは活動こそ大人しかったが、【天武会】の後から、少しずつ天才に対する圧力も変わってきたきがする。

 皆には言っていないが、やはり四条さんの下には多くの誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)が届いているようだ。

 好意的な意見だけではないというのは、今も昔も変わっていない。どこの世界でもそうなのだが、最近ではクランや天才と一般人が対立するようなニュースが増えている。

 皆も勝手知ったるといった様子だが、いつ【命謳】に危害が及ぶかわからない。俺も気を付けないといけないだろう。


「いいね! 玖命クンのその真剣に悩む表情! 【大いなる鐘(ウチ)】でポスターを作っちゃおう!」

「おいおい、きゅーめーを勝手に使われちゃ困るぞ? それは【命謳(ウチ)】で使う」


 そんな水谷と四条さんの言い合いを聞きつつ、俺は苦笑する。

 すると、俺の前に相田さんがもじもじとしながら歩み寄る。


「どうしました、相田さん……?」

「えっと……その……一緒に写真とか……どうかな?」


 そんなお誘いに、俺はくすりと笑った。


「勿論……あ、でも――」

「――え、何かまずかったっ!?」


 焦る相田さんに俺は苦笑しつつ言う。


「あぁいや……御剣さんが来ちゃったので、後ででよろしければ」


 そう言うと、相田さんはホッとした様子で「うんっ!」とだけ言って応接スペースの端へ寄って行った。

 さて…………御剣さんが来たのはいいが――、


「御剣さん、凄いアホ面っすよ。口、口閉じましょう」


 堀田さんに肘で小突かれながら、俺を凝視する御剣さんが零すように言った。


「……イイかも」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓カクヨムにて先行掲載中↓
『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。
↓なろうにて連載中です↓


『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ