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第314話 やって来た訪問者1

 ……結局2人に押し切られてしまった。

 俺は頭を抱えながらもようやく家路につく。

 玄関前で玄関ドアを開ける前に、俺はうんうんと唸っていた。


「……(みこと)に何て言うべきか。親父は笑って送り出してくれそうだけど、こんな事初めてだから(みこと)がどんな反応をして来るのか想像出来ない……」


 そんな事を呟いていると、俺の背後から突き刺すような言葉が届いた。


「別に、普通に行ってくればいいじゃない?」

「うぉ!? み、(みこと)……い、いつの間に……?」


 そう、声を掛けて来たのは、我が妹様。

 買い物バッグを持っているところを見ると、夕飯に必要なものを買って来たようだ。

 しかし、(みこと)は今、何て?


「え、俺が【天界(てんかい)】に行く事、何で知ってるんだ……?」

「さっき、棗ちゃんと、ららちゃんと、鳴神さんと、山じーさんと、水谷様から連絡が入ったのよ」


 凄い、全員から連絡きてる。

 そもそも、名だたる天才たちの連絡先を握ってるってウチの妹は、もしかして最強なんじゃ……?


「お兄ちゃん、何? 入らないの?」

「あ、そうだな、うん……入るか」


 (みこと)が鍵を開け、俺たちは家の中に入る。

 すると、そこには何故か親父が立っていた。

 何故、親父が待ち構えているのか、俺にはわからなかった。

 がしかし、すぐにそれを理解する。

 親父がリビングを指差すより早く、俺はその気配を察知した。


「玖命……お客さん? が来てるぞ」


 そんな親父の疑問交じりの言葉が気になったのだろう。

 (みこと)は小首を傾げながらリビングに向かおうとした。

 しかし、俺はそれを身体で止めた。


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん……土足土足! って……お兄ちゃん……?」


 (みこと)に反応している暇はなかった。

 俺はただ親父と(みこと)を背に置き、リビングでふんぞり返って座っている男に視線を向けた。

 (みこと)は俺の右側から、親父は左側から顔を出し、リビングを覗く。

 そこに座っていたのは、先日の【天武会】で決勝で、俺が倒した男だった。

 関西最大クラン【インサニア】代表――【番場(ばんば)(あつし)】。


「よぉ、邪魔してるぜ」


 口の端を上げ、ニヤリと笑う番場さん。


「親父、何でこの人、入れちゃったの?」


 俺は番場さんを指差しながら、親父に聞く。


「いや、一応彼、犯罪歴はないからさ。やっぱまずかったか?」


 流石は親父である。線引きが絶妙だ。

 確かに……親父に危害を加えた訳でもない。

 親父がこの家の中に招いたのであれば、彼は客人。

 そう、客人……ふむ、段々客人に見えてきた気がする。


「お兄ちゃん」


 (みこと)が俺の脇腹をつんつんとする。


「何?」

「お茶、()れようか?」

「お湯は今沸かしてるぞ、うん」


 (みこと)と親父の連携は、最早(もはや)熟練の域にあると言っても過言じゃないかもしれない。

 俺は溜め息を吐き、(みこと)に頷く。


「とりあえず、一番安いやつ、出してあげて」


 そこまで言うと、(みこと)はくすりと笑ってリビングに入って行った。

 第5段階の【戦神】――SSS(トリプル)が目の前にいるというのに、笑顔のまま横切るとは……やはり(みこと)は大物のようだ。

 俺は仕方なしと大きく息を吸い、すんと一気に鼻息を吐く。

 そして、番場さんの前に腰掛け、言った。


「どうやって我が家を?」

「……知りたいか?」


 ニヤリと笑って言う番場さんに、俺は呆れた視線を向ける。


「勿体ぶる必要があるんですかね?」

「ない。……が、知っておいた方がいいとは思うぜ?」


 意味深な言葉に、俺は首を傾げる。


「それを聞いて、教えてくれるんですか?」

「茶の礼にしてはデカいと思うがな」

「…………伺いましょう」


 言うと、番場さんは俺にスマホを見せてくれた。

 そこには、とんでもない情報が記載されていたのだ。

 直後、俺は立ち上がっていた。


「っ! ふはははっ! すげぇ殺気だな、伊達ぇ?」


 出て当然だ。俺の目の前には――、


「……凄いな、これ、闇サイトかい?」


 親父がスマホを指差して番場に聞く。


「……お前の親父、すげーな。この殺気の中、平然と動くのかよ」

「玖命は俺に危害を加えないからな。それで、これ、闇サイト?」

「……あぁそうだよ」

「へぇ……」


 親父が呟くように零すと、(みこと)が近寄って来る。


「うーわ、これ、ウチの区画(ブロック)だよね? この中から伊達の表札探したら、すぐウチなんてバレちゃうじゃん」


 番場さんのスマホを覗き込む(みこと)

 そんな(みこと)を見て、番場さんが零す。


「お前の妹もすげーな」

「それはどーも。あ、お茶置いときますね」


 そう言って、(みこと)は番場さんの正面に湯呑を置いた。


「おい、そろそろスマホ(それ)返せ」

「あぁ、失礼」


 親父が番場さんにスマホを返す。

 俺は番場さんを見据えながら聞く。


「つまり、既に伊達家の情報が闇サイトに出回ってると……?」

「そういうこった。茶のグレードを上げてくれてもいいんだぜ?」

「いえ、それがウチで一番のお茶です」

「そうかよ」


 そう言って、番場さんは、一気にお茶を呑み干した。


「まさか、それを教えるためにわざわざ?」

「茶の礼だって言ったろ? 俺がここへ来たのは別件だ」


 別件……一体番場さんは何をしにウチにやって来たのか。

 そんな事を考えていると、(みこと)がサッとお茶菓子を番場さんの前に置いた。


「気が利くじゃねーか。伊達妹」

「お茶のお礼があの情報なら、お茶菓子だとどんなお礼を貰えるのかと思いまして」


 そんな(みこと)の一言に、俺も、親父も、番場さんも固まるしかなかった。

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