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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第六部

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第309話 探究・考究・討究2

「まず、【探究(たんきゅう)】系の特徴として、戦い、倒した相手の天恵を得られます。【考究(こうきゅう)】までは【固有天恵(ユニーク)】は得られませんでしたが、天恵が成長し、【討究(とうきゅう)】となった時、【固有天恵(ユニーク)】に関しても得られるようになりました」


 すると、それを疑問に思ったのか、月見里(やまなし)さんが聞く。


「でも、伊達って【固有天恵(ユニーク)】持ちの人と戦った事ないんじゃない?」

「あぁ、それは別の手段で」

「――それって、さっき言ってた『最下位の天恵であれば、集中し、視るだけで得られる』ってやつ?」

「そういう事です。ですが、どうやらそうとも言えない事例もあります。極限の集中状態であれば、最下位でなく、下位の天恵を得られたという事もあります」


 そう言うと、月見里さんは「ふーん」とだけ言って納得してくれた。


「確かに、そうじゃないと私の【鑑定】系は得られないよな。そっか、それであの時きゅーめーの天恵が覗けなかったのか」


 四条さんとの出会いの時、俺の天恵は先んじて【鑑定】を得た。まるで意思があるかのように。


「えーと、じゃあ今、伊達さんが月見里さんと組手して倒せば【脚力SS】が得られるんですかね?」


 川奈さんにそう言われ、俺は月見里さんに目を向ける。


「な、何よ? や、やらないからね……?」

「おそらく無理でしょうね」


 そう言うと、川奈さんが小首を傾げる。


「それはどうしてです?」

「ここがこの天恵のわからないところです。多分、相手が本気でないとダメなんだと思うんですけど……」

「【天武会】みたいに本気と本気の勝負じゃないと、天恵が反応しないって事ですかね?」

「その認識が一番近いと思います」


 俺の説明に、川奈さんがふんふんと頷きながら理解を示してくれた。


「しかし、得られた天恵さえも成長させ得る能力……我らが代表ながら恐ろしいのう」

「カカカカカッ、片っ端から天才ぶっ潰していきゃ、最終的にゃ(ヘッド)が最強って事か。おもしれーじゃねーか」


 たっくん、翔の反応も概ね前向きな理解である。正直、話した後の事が不安だったが、杞憂(きゆう)だったみたいだな。

 そんな事を考えていると、四条さんが俺に聞いてきた。


「これ、話すのか?」

「え……?」

「天才派遣所に」


 その質問に、俺は言葉に詰まってしまった。

 がしかし、その問いの答えを用意していなかった訳ではない。


「……はい、話します」


 そう言うと、たっくんが静かに頷く。


「うむ、それが玖命の覚悟という事なら……我らは何も言うまい」

「あ、でも、ちゃんと話す人は決めてるんで」

「ほぉ?」


 たっくんの片眉が上がる。

 しかし、たっくんにそれを答える前に四条さんが言ったのだ。


「相田か?」

「うん、それと荒神さんと山井意織さん」


 そこまで言うと、翔が得心(とくしん)した様子で言う。


「まー、荒神のばーさんとセンパイの弟ならいーんじゃねーの? 最終的にゃ言わなきゃなんねーんだしな。ま、受付のねーちゃんに言うのは納得いかねーがな」


 そう言われ、俺は目を丸くした。

 しかし、翔と同じ瞳を、俺以外の皆がしていたのだ。


「相田に言うのはやめた方がいいと思う」


 四条さん、


「私も、相田さんへの説明は控えた方がいいと思います」


 川奈さん、


「うむ、儂もそう思う」


 たっくん、


「好きにすればー? 相田ちゃんが命を狙われてもいいのならね」


 最後に月見里さんが、皆が躊躇(ためら)っていた言葉を言った。いや、言ってくれたというべきだろう。

 …………確かにそうなのだろう。

 これを押し通してしまえば、相田さんは命を狙われる危険が付き纏う。

 これは四条さんにも言える事だが、彼女は【命謳】というクラン、名前に守られている。

 しかし、相田さんはそうではない。

 ならば相田さんを【命謳】に誘うか。

 それはない。あり得ないのだ。

 相田さんは、あの仕事に信念をもって臨んでいる。

 そんな相田さんだからこそ、俺は話そうと思ったのだ。

 しかしながら、そんな相田さんだからこそ……やはり言うべきではないのだろう。


「……そうですね。そうした方がいいかもしれません」


 俺がそう言うと、四条さん、川奈さんはホッとした様子でくすりと笑ってくれた。

 すると、翔が拳を突き合わせ言った。


「そんじゃ、(ヘッド)が【天界(てんかい)】に行く時にゃ、俺様たちがしっかり【命謳】を守らなくちゃな……なぁ、センパイ!?」

「ほっほっほ……そうじゃのう。【天界】に呼ばれるのはほぼ確定みたいなもんだしのう」


 天界……天界!?

 俺が驚きを見せる中、川奈さんが聞く。


「【天界】って、【World(ワールド) Genius(ジーニアス) Congress(コングレス)】……【世界天才会議】の事ですか?」


 そう、WGCとか天界とか言われるアレである。3年おきに開催してるアレである。


「え、いや……俺まだAランクですし……」

「日本最強の伊達さんを、荒神さんが連れて行かないはずないじゃないですかー」


 川奈さんがズバリと言う。

 そういえば、越田さんも俺と一緒にどうとか言ってたような気がする。

 あんな恐ろしい場所に俺が行く?

 正直、そんな事考えてなかった。


「きゅーめーが行かなかったら、日本からは誰が行くんだよ?」


 四条さんの追い打ちに、俺は、沈黙を選ぶ事しか出来なかった。

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