表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第六部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

308/327

第303話 強力な移動砲台

「ちょっとちょっとちょっとぉ!? 嘘、何これ? 何で?」


 慌てる月見里(やまなし)さんに俺は聞く。


「どうしました?」


 俺は【威嚇S】を発動、更に殺気を放出する事によって、群がっていたゴブリン、ホブゴブリンたちを散らせた。


「いや、天恵が……成長しちゃった……?」


 おぉ、意外に早かったな。


「お、良かったですね。これで【脚力SS】ですかね?」

「いやそうだけど、え、何で?」


 困惑するのも無理はない。

 いつか【天眼】で視た月見里(やまなし)さんは、【脚力S】の解析度が80%だった。

 しかし、二日前に視た時、その進捗はなかった。

 何故なら、月見里(やまなし)さんは、討伐リソースが足りなかったのだ。

【腕力】系ならばともかく、【脚力】系の天恵を持った天才がモンスターを倒すのは至難(しなん)(わざ)

 だからこそ、月見里さんには、【KW-00A(ラプトルA)】、【KW-00T(レックスT)】、【KW-00K(コアトルK)】が必要だった。


「【命謳(ウチ)】の活動が安定したら、月見里さんには5つのアーティファクトを装備して頂きます」

「えっ? マジ? てか、5つって……アーティファクトの最大装備可能数じゃない? 何? 私何着けるの……?」


 俺は1本ずつ指を立てながら月見里さんに説明する。


「まずは【腕力C】……これは確定です。重い銃器を持つ以上、【腕力】系の天恵は必須です。これがあるとないとでは安定性が段違いかと」

「……まぁ、そう……ね」

「次に【体力C】。【脚力】系持ちの天才には、これが必須と言っても過言じゃないでしょう。いくらでも走り回る事の出来る斥候兼、遊撃というのは、クランにとっても有難い存在ですね」

「ふんふん……確かにその通りね。疲れにくくなるなら、私自身もかなり楽になるし」

「3つ目は【頑強C】、もしもの時のために絶対必要です」

「…………う……あまり想像したくないかも」

「4つ目は【集中】、射撃の精度が確実に上がるかと」

「うん」

「最後は……【鑑定】です」


 最後の指を立てると同時、月見里さんは小首を(かし)げた。


「え? 【鑑定】? 何でそんなものが必要なの?」


 月見里さんの質問に、俺は補足を入れる。


「メインのお仕事は斥候なので、観測と同時に相手の特性、天恵も調べて欲しいんですよ。もし、見知らぬ相手、モンスターがいた場合、【鑑定】を使えば対象がどのように動くのか予想がつきやすい……というのが大きな理由です」

「へぇ~……何よ、伊達。結構考えてるじゃん」


 くすりと笑って言った月見里さんに、俺は苦笑して返す。


「頑張らないといけないですからね。一応、日本一のクランになっちゃった訳ですし……ははは」


 そう言うと、月見里さんは肩を(すく)め「確かにね」と同意してくれた。


「けど、斥候をここまで叩き上げるクランも珍しいんじゃない?」

「それはそうでしょうね。でも、俺は、全ての天才がしっかり稼げるように、食べられるように、ちゃんと義務を果たせるようになれるって信じてますから」


 そこまで言うと、月見里さんは目を逸らし、零すように言った。


「…………純命(じゅんめい)

「んな!? いや、そこでそれはおかしいでしょうっ!?」

「いやいや、今、ここで言うのがベストでしょうが! あはははっ!」

「まったく……まだ解体が残ってるんですからね。それに、まだ上を目指して頂かないと困りますから」


「まだ上を」という言葉に反応したのか、月見里さんは引き気味に俺に聞く。


「まだ上って……アンタまさか【脚力SSS】まで成長させろって言うんじゃないでしょうね!?」

「そう言ったつもりですが?」


 そう言うと、月見里さんが怯む。

 別に難しい事ではないのだが、そこまで警戒されるものなのか。


「……まだ、【脚力SS】にすら慣れてない……というか、【脚力SS】になってから走ってすらいないんだからね!?」

「大丈夫です、明日からしっかり走って頂きますから」


 その言葉に、月見里さんが慌てて俺に言う。


「ちょっとちょっと! 水谷結莉が走り込んでるってアレ、まさか私にもさせる気?」

「いやいや、水谷さんは、月見里さん程には走らないですよ」


 俺が言うと、月見里さんはポカンと口を開け、零した。


「………………は?」


 そんな月見里さんを横目に、俺はくすりと笑ってからホブゴブリンの解体を始めた。

 ホブゴブリン1匹から採れる魔石は1個5000円~9000円。月見里さんの貴重な収入源である。

 慣れてきたら月見里さん1人でも銃器の使用を許可すべきだろうか。

 いや、でも、彼女は任務中に飲酒する悪癖があるんだっけか。

 ここら辺は、川奈さん、四条さん、(みこと)……後は水谷あたりに相談してみるか。

【脚力SS】の月見里(やまなし)(あずさ)さんが【命謳】に加入した事により、【命謳】は確実に成長した。

 そして、KWN株式会社、天才派遣所の厚意で譲ってもらったこの銃器があれば、月見里さんを戦力――【強力な移動砲台】としても数えられる。

 とはいえ、一番重要なのは、彼女自身が自分を守る力を得る事なのだ。

 これから【命謳】は、どんな出来事に遭遇するかわからない。

 突発的な【モンスターパレード】、【大災害】、【人工(ポータル)】、【はぐれとの衝突】……考えればキリがない。

 月見里さんの装備、アーティファクトもそうだが、【命謳】メンバーのアーティファクトも充実させなくちゃいけない。

 しかし、それは結果的にSS(ダブル)以上のダンジョン出現を願うという事にも繋がる。

 何とも皮肉な話だが、そうする事でしか、クランメンバーの装備をアップグレードさせる事は出来ないのだ。

 あまり深く考えず、SS(ダブル)以上の魔石を手に入れた時に、結果としてそうなるというだけの話だ。

 …………でも困ったぞ?

 SS(ダブル)以上の魔石を手に入れた時、親父の会社――株式会社(テクノ)(ライク)(エンジニアリング)に納入するという契約になっている。

 こればかりは、穂積(ほづま)社長と相談するしかないかもしれない。

 そんな事を考えながら、俺はホブゴブリンの解体を続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓カクヨムにて先行掲載中↓
『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。
↓なろうにて連載中です↓


『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
[良い点] 悲報、月見里さん飲酒する暇がなくなる [一言] 月見里さんの扱いが面白い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ