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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第六部

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第300話 バリバリ財布

 八王子に戻り、頃合いと思った俺はある人に電話をかけていた。


「はい、そうなんです。どうも先程の八神の言葉が気になります。【はぐれ】が【天獄】を強襲するような事はないと思いたいですが、警戒はしておいた方がいいかと思いまして」

『ありがとう、よく知らせてくれたね。こちらも注意しておくよ』

「よろしくお願いします、荒神さん(、、、、)


 そう言って、俺は電話を切る。

 電話の相手はあの天才派遣所統括所長の荒神(あらがみ)(かおる)さん。

 一応、注意喚起はしておいたから、【天獄】が襲われたとしても大丈夫……だと思いたい。


「あれ、玖命クンじゃん」

「ん?」


 俺が振り向くと、水谷が汗だくになりながら、スロージョグをしていた。俺の歩行速度に合わせ、ゆっくり走る水谷に、俺は言った。


「あれ、水谷さん? もう岩手県(もりおか)からお帰りですか?」

「そっ、私のお帰りだよ!」

「驚きました、意外に早かったですね」


 俺が言うと、何故か水谷は北の空を見つめながら言った。


「早朝から出たからね……冷麺食べようと財布持って出かけたんだけど、見てよこれ」


 見ると、水谷が持つ革の財布が汗に濡れている。

 何て無残な姿だったんだ。


「いつものノリで出かけたらコレだよ。ホントやんなっちゃうわ」

「あ、それなら良い財布がありますよ」

「へ?」


 目を丸くする水谷を連れ、俺はとある場所へと向かう、

 目的地に着き、看板を見上げると、そこには大きく「100円」の文字。


「玖命クン、ここって……?」

「はい! 100円均一です!」

「いや、それは見ればわかるけど、何でそれが良い財布になるの?」

「これですよこれ」

「うーわ、これバリバリ財布じゃん」

「天才も肉体労働者ですからね。汗の事を考えるとこれがベストです。軽くて、意外にしっかり作られてるんです。カードも入るし、お札だって入っちゃうんですから。うん!」

「まぁ、それはそうなんだろうけどね。一応、私、女の子っていうか女子っていうか……私がそれ会計時に出す事を想像すると…………【大いなる鐘】の皆に悪いっていうか、皆の株が下がるっていうか……?」

「そうですか? お揃いで良いと思ったんですけどね……」


 俺がそう言うと、水谷はピクリと反応し、止まった。


「…………お揃い」

「え? でも、買わないんですよね?」

「いや、確かに玖命クンとの交流を深めるのも必要だね! いいね、お揃い! それなら私も買っちゃおうっ!」


 そう言って、水谷は俺のバリバリ財布と同タイプの財布を買ってきた。

 そして、意気込むように言ったのだ。


(よしみ)に自慢しちゃおうっ!」

「え、相田さんに?」

「うんうん、こうでもして発奮(はっぷん)させないとあの子、重い腰あげないだろうし!」


 鼻息荒いが、水谷は一体何に燃えているのか。

 しかし、こうも目立たれては困る……。


「あれ、水谷様と伊達じゃない?」

「ほんとだ、水谷様と伊達だ」


 (みこと)も様付けで呼ぶけど、水谷って信仰の対象か何かなのだろうか?


「水谷様が掲げてる財布……何あれ?」

「小学生とかがたまに持ってるやつだよね」


 そんな会話が耳に入ると、水谷が俺に言った。


「玖命クン、玖命クン! さっきの財布見せてよ!」

「え、これ……ですか?」


 俺がポケットから財布を取り出すと、周囲の反応が更に変わる。


「マジかよ、水谷とお揃いかよ」

「一周回ってオシャレかもしれないんじゃ?」

「いや、それはないだろ」

「伊達の財布の使い込みがヤバい。あれ、黄ばんでるというより、茶ばんでるよな?」

「この100円均一で買ったみたいだぞ」


 そんな会話もある中、水谷は俺に言った。


「玖命クン、クレジットカード出来たとかこの前言ってたよね」

「あ、そうなんですよ! 落ち着いた黒のカードです」

「その財布からブラックカードが出て来るとか。最高に面白いんだけど……」


 言いながら、水谷は腹を抱え、小刻みに震え出した。

 え、これがブラックカード? 本当に?


「でも、ブラックカードってある程度の信用とか、契約年数が長いとかの実績がないと貰えないとか聞くんですけど……?」

(むし)ろ、【命謳】の今の実績で発行出来ない訳ないでしょう? ダメ……お腹痛い……」


 そういえば、いつぞやToKW(トゥーカウ)で同じ事言ってたな、水谷。

 しかし、クレジットカードなんていつ使うんだろう。

 (みこと)は『必要なモノはこれで買って』とか言ってたけど、あの時、(みこと)の手が震えていたのはこれがとんでもないカードだったからか。

 目の端に涙さえ見せた水谷に、俺は言った。


「えーっと、とりあえず……事務所(オフィス)行きますか」

「くくく……ふふ……ふふふ……はは……あー面白い!」


 今なら、この人を小突いても許されるのだろうか。

 だが、人通りの激しいこんな場所でそんな事をしては、あらぬ疑いをかけられてしまう。

 そう思い、俺は水谷に言った。


「じゃあ俺は先に事務所(オフィス)行ってますから。後からついて来てくださいね?」

「うんうんわかったわかった! あ、ダメ、また笑っちゃう……はははは」


 そんな笑い泣きする水谷を背に、俺は呆れながら事務所(オフィス)に向かうのだった。

 そう、その後の事など、考える事もせずに……。

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